4月9日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
建屋内の高濃度滞留水の水位と地下水位の逆転で「運転上の制限」を充足していないと認める。東京電力は「外部への流出はないと考える」とするが根拠は薄弱
1号機タービン建屋近傍サブドレン水位が所内ボイラー室水位より低い状態になったことを4月7日午後6時14分に確認し、水位を注視していたが、その時点では所内ボイラー室は、他のエリアとの連通性がないことから、特定原子力施設に係る実施計画 III特定原子力施設の保安(以下、「実施計画」という)第1編第26条「建屋に貯留する滞留水」に該当する建屋には含まれないと考えていた。
その後、総括的に検討を重ねた結果、連通性がない所内ボイラー室についてもタービン建屋の一部であることから実施計画第1編第26条「建屋に貯留する滞留水」に該当する建屋に含まれるものと判断した。
このため、4月9日午前1時10分、実施計画第1編第26条「建屋に貯留する滞留水」の表26-2で定める1号炉タービン建屋の滞留水水位の運転上の制限*「各建屋近傍のサブドレン水の水位を超えないこと」を満足できていないと判断した。
判断時の水位は以下の通り。
・近傍サブドレン水位:OP 4,885mm(4月9日午前0時35分)
・所内ボイラー室水位:OP 4,900mm(4月8日午後1時40分)
所内ボイラー室水位については、3月17日に測定した値(OP 4,900mm)から変化がないため、所内ボイラー室内水の外部への流出はないものと考える。
1号機タービン建屋所内ボイラー室の滞留水については、4月9日午後1時2分より1号機タービン建屋へ移送を開始。
今後、所内ボイラー室内の滞留水の移送を継続し、所内ボイラー室水位が近傍サブドレン水位を超えない状態に復旧する。また、近傍サブドレン(N1)水の放射能濃度を測定する。
特定原子力施設に係る実施計画 III特定原子力施設の保安第1編第26条に基づき、塩分濃度による比重を考慮した補正値を用いた、滞留水の水位は以下の通り
・1号機所内ボイラー室水位
実測値:OP 4,900mm(4月9日午前11時00分)
補正値:OP 4,980mm
・1号機ディーゼル発電機(B)室水位
実測値:OP 4,650mm(4月9日午前11時00分)
補正値:OP 4,774mm
1号機ディーゼル発電機(B)室近傍のサブドレン(No.1)の水位については、同日午後1時30分時点においてOP4,714mmとなっており、上記ディーゼル発電機(B)室の補正水位を下回っていることを同時刻に確認したが、他のエリア(建屋内)から流入がないこと(連通性がない)、およびディーゼル発電機(B)室水位に変動がないことから、外部への流出はないと考える。
なお、実施計画第1編第26条に定める運転上の制限「各建屋近傍のサブドレン水の水位を超えないこと」を満足できていないことの判断については、先に1号機タービン建屋の水位が近傍のサブドレン水位を超えていると判断している。
今後、ディーゼル発電機(B)室内の滞留水の移送を行うとともに、近傍のサブドレン(No.1)水の放射能濃度を測定する。
*:運転上の制限
実施計画では、原子炉の運転に関する多重の安全機能の確保及び原子力発電所の安定状態の維持のために必要な動作可能機器等の台数や遵守すべき温度・圧力などの制限が定められており、これを運転上の制限という。実施計画に定められている機器等に不具合が生じ、一時的に運転上の制限を満足しない状態が発生した場合は、要求される措置に基づき対応する。
メルトダウンした核燃料に接触した高濃度滞留水が、建屋周辺の地下水に流出する恐れが生じているという重大な事態にも関わらず、説明は「日報」にとどまっている。
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
2号機 ~タービン建屋の高濃度滞留水の移送停止
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送実施(2015年3月26日午前10時14分~4月9日午前10時2分)
※滞留水移送は停止中
3号機~6号機
新規事項なし
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(2015年4月8日午前10時8分~)
※滞留水移送は稼働中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール
新規事項なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
水処理設備および貯蔵設備 ~第二セシウム吸着装置(サリー)「停止中」
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
その他の項目に新規事項なし
・セシウム吸着装置運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
地下水バイパス
新規事項なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
4月8日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<E-1の全ベータ値>
3月20日採取 16,000Bq/L ※漸減傾向から再上昇
3月21日採取 11,000Bq/L ※再び減少に転ず
(中略)
3月29日採取 7,400Bq/L ※漸減傾向から再び上昇
3月30日採取 7,000Bq/L
3月31日採取 7,800Bq/L
4月1日採取 8,100Bq/L
4月2日採取 7,300Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 5,600Bq/L
4月5日採取 6,300Bq/L
4月6日採取 5,600Bq/L
4月7日採取 4,100Bq/L
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
<G-1のトリチウム値>
3月25日採取 2,400Bq/L
3月26日採取 600Bq/L ※大幅に減少
(中略)
4月2日採取 330Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 210Bq/L
4月5日採取 160Bq/L
4月6日採取 200Bq/L
4月7日採取 120Bq/L
※ 3月10日以前の最高値:480 Bq/L(平成26年6月18日)
<G-2のトリチウム値>
3月29日採取 290Bq/L ※漸減傾向から再び上昇
3月30日採取 220Bq/L
3月31日採取 270Bq/L
4月1日採取 300Bq/L
4月2日採取 290Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 290Bq/L
4月5日採取 260Bq/L
4月6日採取 320Bq/L
4月7日採取 310Bq/L
<G-3のトリチウム値>漏洩タンクから最も遠いG-3もトリチウム値が上昇
3月30日採取 310Bq/L
3月31日採取 390Bq/L
4月1日採取 360Bq/L
4月2日採取 480Bq/L
4月3日採取 <欠測>
4月4日採取 290Bq/L
4月5日採取 420Bq/L
4月6日採取 470Bq/L
4月7日採取 460Bq/L
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
※4月8日に採取した地下水観測孔No.3の汲み上げ水について、全ベータの値が390 Bq/Lと前回値(4月1日採取分:検出限界値21 Bq/L未満)と比較し高い値が検出された。
地下水観測孔No.3の海側にはウェルポイントがあり、汲み上げを行っている。さらに海側には、地盤改良壁が設置されており海への影響はないものと考えている。
その他の地下水観測孔の測定結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。