4年前の検証「チェーンメール」に隠された真・謎・怒り

コスモ石油爆発、雨とともに有害物質が降ってくる。

東北地方太平洋沖地震により、千葉県市原市のコスモ石油千葉製油所で火災・爆発事故が発生した。

震度5弱の本震と直後の震度4の余震により、倒壊したタンクが隣接のLPガスの配管を破損。LPガスが大量に漏えいし、15時47分に出火。17時04分には、隣接タンクが爆発(17時50分にかけて5回の爆発)した。火は、10日後の21日にようやく鎮火した。

出火・爆発は福島第一原発の最初の避難指示がでるよりも5時間ほど早い頃だ。

第16回総合資源エネルギー調査会高圧ガス及び火薬類保安分科会高圧ガス部会 資料2 コスモ石油㈱千葉製油所における火災・爆発事故についてより

ニュースの映像では、燃え盛る千葉製油所の様子が流されるも、津波被害、原発事故の状況に比べると、生命の危険に対する逼迫感という意味での関心は薄く、製油所という場所だけに、早く消えれば良いとの思いは強かった。震災時に大切なエネルギーの原料が燃えてしまっているのは痛いとも思った。

ところが、そんな考え方ではいられない情報が拡散する。

工場勤務の方からの情報。外出に注意して、肌を露出しないようにしてください! コスモ石油の爆発により有害物質が雲などに付着し、雨などといっしょに降るので外出の際は傘かカッパなどを持ち歩き、身体が雨に接触しないようにして下さい!! コピペとかして皆さんに知らせてください!!多くの人に回してください!!

引用元:迷惑メール相談センター|東日本大震災 チェーンメールサンプル一覧|JADAC

自分にもこのメールが届いた。送ってくれた人は、心配しているから送ってくれているのだ。真実が拡散しているのか、デマが拡散しているのか、デマのチェーンメールと簡単に割り切れない。もしかしたら本当に報道されていない「何か重大な事」があるのかもしれない。報道された情報を見落としたかもしれない。津波と原発に対する報道が優先されていて、公式な発表が間に合っていないかもしれない。とにかく日本の北半分が大パニック状態なのだ。自分は情報として一旦信頼をし、送信者に感謝した。

雨が降っていなくても、上空には「そうした有害物質」が充満し始めているのだろう。当時の東京の天気は晴れマークになっているが、実際は場所により少し雨は降った。翌日も雨が降った。デマと判断した人、情報として信頼した人、判断はさまざまだったであろう。ただ、爆発した製油所の敷地、タンクの中、こうしたところに何があるのかを知っているわけではない。爆発しても人体に有害な物質が出ないということを確信する術がないのだ。

結局、3月12日(時刻は不明)には、コスモ石油の広報室がこの内容を否定するコメントをウェブサイトで公開。これでチェーンメールの内容はデマだったとなるのだが、自分が、いつ、何からそれを知ったかまでは、当時の記憶が定かでない。

本当にデマだったのかと疑問になる

しかし、後からとんでもない事実が飛び出す。実は政府に対し、以下の報告が入っていたというのだ。

3月11日22:50
核燃料物質施設である千葉県市原市のチッソ石油化学株式会社(現在は社名変更によりJNC石油化学株式会社)五井製造所より、隣接するコスモ石油千葉製油所における火災が、同事業所内の核燃料物質・劣化ウランの保管施設に延焼する恐れがあるとの連絡がはいる。

3月12日02:16
地元消防による消火活動により、鎮火確認。劣化ウランは不燃物質であり、不燃性壁に囲まれた倉庫に保管されているが、倉庫の状況については未確認。

3月12日の報告内容に注釈をつけます。劣化ウランは「不燃物質」ではありません。劣化ウランの保管倉庫が「不燃物質であり、不燃性壁に囲まれている」という意味です。劣化ウランは爆発的に燃えます。燃えれば、人体に害を及ぼす放射性物質は、瞬く間に拡散します。原発と変わりません(放射線量に違いはあります)。

燃え盛るコスモ石油の隣、チッソ石油化学に劣化ウランが保管されていたのだ。しかも保管倉庫に延焼していた。

チッソ石油化学は、2006年5月に無届で劣化ウラン765㎏を保管していたことが判明し(長い間届出義務を怠り急遽届けた)、立ち入り調査を受けている。よって、当時の原子力安全・保安院(現在の原子力規制委員会)や文部科学省は、チッソ石油化学五井製造所に劣化ウランが保管されていることを承知している。

(1)「有害物質の雨が降る」は、デマだったのか。
(2)事実を知るチッソ石油化学の良識ある社員、関係者からの危険を知らせるメッセージだったのか。

(1)であれば、絶対に許しがたい。その時各地でおきていた状況をなんだと思っているのか。しかも津波の被害を免れた関東は、東北に一番近い支援拠点として機能していかなければならいのだ。まだ、これからどれだけの地震が襲ってくるかもわからず、皆が不安でいっぱいだった。交通機関はストップし、歩いて延々と帰宅したりしているのに。

(2)の警告メールであれば、感謝なのかというと難しい。正確な情報を情報元がわかるように発信する義務がある。会社が公表しないことを社名や所属を明らかにして、個人名で発信するには、勇気がいる。だが、黙っていて、あとで惨事となれば、劣化ウラン保管の存在を知っていた社員全員が国民を裏切ったことになる。勇気には感謝します。牛肉偽装を告発した会社は、潰れる破目になった。正義は必ず勝つことにならないこの国の悪いところだ。
 
そもそも、なぜこれだけの危機的状況を招く可能性があった事態を情報として公開されないのかが本当に不思議でならない。

文科省、原子力安全・保安院、チッソ石油化学は、なぜ国民に危険を知らせないのだ。大惨事にならなかった事が奇跡なだけで、情報を公開しなかった事が正解でも、罪がないわけでもない。劣化ウランが燃えた時点で、避難指示を出し、最初は3キロ以上外側とか、福島と同じことをやったかもね。

『熊本の水俣湾に未処理の工場排水(メチル水銀)を垂れ流し続け、環境汚染による食物連鎖により引き起こされた人類史上最初の病気であり、「公害の原点」といわれる』(2009年9月4日朝日新聞)「水俣病(水銀中毒)」の加害企業が、当時のチッソ石油化学の親会社なんだけど、グループ全体で体質って変わらないのかな。