3月16日(月曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
第19回廃炉・汚染水対策現地調整会議の資料の一部を公開
経済産業副大臣が議長を務める廃炉・汚染水対策現地調整会議の19回に関する資料の一部が抜粋として公開された。経産省のホームページには資料の全文はまだアップされていない。(3月17日午前9時時点)
○タンクに起因する敷地境界実効線量(タンクに溜めた汚染水のせいで原発敷地との境界部分で高まっている放射線量)は、3月末までに目標の「1mSv/年未満」を達成できる見込み
⇒しかし、グラフを見ると、本年度の後半からグラフの勾配が急激に増していて、かなり無理をしている感もある。
○RO濃縮塩水(セシウム吸着装置・第二セシウム吸着装置でセシウムをかなり取り除いた後、2倍程度に濃縮した汚染水。ストロンチウムなどのベータ核種の濃度が猛烈に高い非常に危険な汚染水)の処理は3月末で8割。5月末までに、処理が困難な海水成分の多い汚染水約2万トンを除き処理できる見込み
⇒棒グラフの数値との整合がとれていない。当初は多核種除去設備で処理するはずだったものが間に合わないので、それ以外の設備(セシウム吸着装置のストロンチウム除去機能に着目したり、モバイル型ストロンチウム除去装置などを追加したりしてきた。しかし、追加された装置のストロンチウム除去能力は多核種除去設備に劣る)で下駄をはかせた格好だ。
○多核種除去設備以外で処理した水が「ストロンチウム処理水」という言葉で呼ばれている。3月末時点で14%、5月末で31%と勘定されているこの水は、多核種除去設備で再処理するという
⇒ストロンチウム処理水は「汚染が残る水」ということ
○建屋に流入し続けている地下水(1日合計400トン汲み上げ)の処理は継続
○H4エリア、H6エリアなど、RO濃縮塩水と呼ばれる猛烈な汚染水を溜めているタンクは、構造上タンクの底部に汚染水が残る。残水の合計は約2万トンで、タンク解体のタイミングで継続して処理を行う
平成26年度中に汚染水処理を行うとしてきた方針が、達成困難になったという現状を示す資料と考えればよさそうだ。処理の期間を2カ月延長してもなお、海水成分の多い極めて危険な汚染水(海水成分が多いということは、津波被災の影響が大きい初期の汚染水と考えられる。当然、放射能も高いはず)が2万トン、タンクの残水が2万トンの合計4万トンの処理は終わらない。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目の記載。加えて、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成27年3月2日午前10時25分~)
※滞留水移送は稼働
◆3号機
1号機と同じ4項目の記載
※滞留水移送は停止中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・平成26年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
地下水バイパス
新規事項なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
3月15日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、一部実施できない箇所を除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
RO縮水処理設備に関する資料と写真が公開される。汚染水の線量低減を目的とした多角的かつブリコラージュな対応は評価したい