2015年3月11日 今日の東電プレスリリース

排水路は暗渠化しているので堰から流出した水は地中に浸透し、排水路に流れ込むことはないと説明。しかしすぐ近くには地下水バイパスの揚水井が!

3月11日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。

「日報」に登場する主な施設(Google Mapに加筆)

高濃度汚染水が蓄えられているタンク群(H4・H4北・H4東エリア)で消えた400トンの汚染水の続報。堰内の水が流出している箇所が発見される。汚染水は地下に浸透。地下水バイパスはどうなる?

現場確認を行ったところ、H4東エリアの東側およびH4北エリアの北側外周堰とアスファルトの継ぎ目より水が流出していること、また、H4エリアおよびH4東エリアの内周堰と外周堰の間に設置されている側溝と基礎部の継ぎ目より気泡が出ていることを確認。

また、外周堰周辺のB排水路およびC排水路は暗渠化されていること、流出した水が暗渠化されていない無線局舎付近の枝排水路への流れ込みがないこと、構内側溝排水放射線モニタの指示値に有意な上昇がないことから、外周堰内に溜まった雨水は、外周堰付近の地面に浸透したものの、排水路を通じて、海への流出はないものと判断。

外周堰内に溜まった雨水については、3月10日午前10時25分から午後2時52分にかけて、H4北エリア内周堰内に移送を実施。

外周堰内の雨水の流出量は、降雨量および外周堰に流入した雨水の総量(約915m3)から移送量(約168m3)を引いて、約747m3と推定。

なお、外周堰内に溜まった雨水の移送完了後、外周堰とアスファルトの継ぎ目からの水の流出、および内周堰と外周堰の間に設置されている側溝と基礎部の継ぎ目からの気泡が止まったことを確認。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成27年3月11日

▼前日の日報ではどこに洩れたのかは調査中だった(タンクエリアは毎日パトロールが行われている)

▼現場確認で複数の流出箇所が発見される。流出が確認されたのは「H4北エリア北の外周堰の外側」「H4東エリア東の外周堰の外側」。また気泡の発生(地下に流出していることが考えられる)箇所が「H4東エリア南の内周堰の外側」「H4エリア南の内周堰の外側」「H4東エリア内周堰とH4エリア内周堰の間」

▼近傍のB排水路、C排水路とも暗渠(トンネル)化しているので、堰から流出した汚染水が流入し、海まで流れ出ることはないと東京電力は「判断」

▼外周堰から流出した汚染水の量は昨日より増加して約747トン

「福島第一原子力発電所H4タンクエリア外周堰内雨水水位低下について 改訂版|東京電力 平成27年3月11日」より

日報は1000ベクレルオーダーのベータ核種に汚染された水(うち1カ所では1リットルあたり8,300ベクレル)を「雨水」と記す。

その上、排水路はトンネルだから「汚れた雨水」が流入することはないという。しかし暗渠を構成するコンクリート製のボックスの下には砕石や砂が敷かれていて、実質的に「もうひとつの水路」になることは工事関係者なら誰でも知っているところ。

そればかりか、地中に浸透していった「汚れた雨水」は遠からず地下水に合流する。タンクエリアからB排水路を挟んだ海側には、地下水バイパスの揚水井がずらりと12基も並んでいるのだ。日報の記載は目先を取り繕うだけのものなのか?

日報には続けて「汚れた雨水」が流出した付近での溜まり水の分析結果をずらりと公開している。各採取場所ごとに全ベータ、セシウム-134、セシウム-137の3核種についての測定値だが、セシウム-137が検出限界を超えているのは一カ所のみだ。そもそも、セシウムをある程度除去し、その他成分を濃縮した汚染水を溜めているタンク近傍からの漏水なので、セシウムの値が低いのは当然かもしれない。ここでは全ベータの値にこそ注目すべきだろう。

H4・H4北・H4東エリア外周堰内に溜まった雨水の放射能の分析を行った結果は以下のとおり。

<H4外周堰内(1) 雨水>(3月10日午前9時10分採取) 
全ベータ  :1.9×10^3Bq/L
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.1×10^1Bq/L) 
セシウム137:1.8×10^1Bq/L

<H4外周堰内(2) 雨水>(3月10日午前9時15分採取)
全ベータ  :1.5×10^3Bq/L
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.0×10^1Bq/L) 
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:1.7×10^1Bq/L)

<H4外周堰内(3) 雨水>(3月10日午前9時20分採取) 
全ベータ  :8.3×10^3Bq/L
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.2×10^1Bq/L) 
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:1.6×10^1Bq/L)

<H4外周堰内(4) 雨水>(3月10日午前9時25分採取) 
全ベータ  :1.5×10^2Bq/L
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.0×10^1Bq/L) 
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:1.6×10^1Bq/L)

<H4外周堰内(5) 雨水>(3月10日午前9時30分採取) 
全ベータ  :3.7×10^2Bq/L
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.1×10^1Bq/L) 
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:1.7×10^1Bq/L)

<H4内周堰内雨水>(3月10日午前10時10分採取) 
全ベータ :4.0×10^2Bq/L
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.2×10^1Bq/L)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:1.7×10^1Bq/L)

<H4北内周堰内雨水>(3月10日午前10時15分採取) 
全ベータ :7.3×10^2Bq/L
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.1×10^1Bq/L)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:1.7×10^1Bq/L)

<H4東内周堰内雨水>(3月10日午前10時20分採取) 
全ベータ :4.5×10^2Bq/L
セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1.1×10^1Bq/L)
セシウム137:検出限界値未満(検出限界値:1.7×10^1Bq/L)

引き続き、当該外周堰からの流出について調査を実施する。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成27年3月11日

5号機の原子炉を冷やす残留熱除去系の電気で動く弁が過負荷のため遮断

※3月11日午前0時14分頃、5号機残留熱除去系(以下、「RHR」という)(A)系において、電動弁開閉試験前のラインナップを行っていたところ、RHRポンプ(A)の圧力抑制室側吸込弁(MO-10-13C)(以下、「当該弁」という)の「開」操作をした際に

「RHR A 電動弁過負荷」の警報が発生し、当該弁が過負荷トリップした。

その後、同日午前0時24分に当該弁は、外観上異常がないことを確認。なお、炉心冷却およびプール冷却は、RHR(B)系にて行っており、影響はない。今後、当該弁の点検等を行う。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成27年3月11日

残留熱除去系は原子炉が停止している時に、炉心等を冷却するシステム。電気で駆動する電磁弁でラインを切り替えることで、格納容器の冷却やプール冷却にも利用できるようになっている。そのシステムを構成する弁のひとつが、過負荷によって電源遮断したというニュース。

5号機には、原子炉に548体、燃料プールに994体、合計1,542体(容量の70%近く)の燃料がある(福島県のHPより)

1号機~2号機

新規事項なし

◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中

※滞留水移送は停止中

◆2号機
1号機と同じ4項目の記載。加えて、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成27年3月2日午前10時25分~)

※滞留水移送は稼働中

3号機 ~タービン建屋地下の高濃度滞留水の移送を再開。移送先はプロセス主建屋

1号機と同じ4項目の記載。加えて、

・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成27年3月11日午前10時48分~)

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成27年3月11日

※滞留水移送は稼働中

4号機~6号機

◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・平成26年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。

◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中

共用プール

新規事項なし

・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。

水処理設備および貯蔵設備 ~セシウム吸着装置「運転中」

その他の項目については新規事項なし

・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中

地下水バイパス ~通算53回目となる海洋排出の準備が進む

※地下水バイパス一時貯留タンクグループ3の当社および第三者機関による分析結果[採取日3月1日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。

引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|東京電力 平成27年3月11日