先日、ミカンを栽培している農家の方と話をする機会があった。その方は兼業で農家をされている。働きながら畑を維持、管理するのは大変なようで、近所の方にミカン畑の一部を貸しているそうである。畑は手をかけないとあっという間に荒れてしまうために、使ってもらえると本当に助かると言っていた。
同じような話は千葉の実家でもあった。両親は趣味で家庭菜園をしており、以前、近所の農家の方から畑を借りていたことがあった。使用料などはなく、とにかく畑が荒れないように使ってもらえればいいとのことであった。
紹介した2つは高齢化や労働力不足に直面しながらも、現時点では農地として維持できているケースである。しかし、その一方では全国的に「耕作放棄地」が増加しているという。
増加する耕作放棄地
農林水産省の公式WEBサイトによると「耕作放棄地」とは、
「以前耕地であったもので、過去1年以上作物を栽培せず、しかもこの数年の間に再び耕作する考えのない土地」
と定義されている。
日本の農地は工場用地や道路、宅地等への転用等が行われて減少している上に、さらに25年ほど前からは「耕作放棄地」の面積が増え続けている。
昭和36年に全国で609万ヘクタールあった農地面積は、平成22年には459万ヘクタールに減っている。約25%もの減少である。一方、耕作放棄地は昭和60年まではおよそ13万ヘクタールで横ばいであったものの、それ以降は増加が続き、平成22年には約40万ヘクタールとなっている。ちなみに40万ヘクタールとは、埼玉県よりも広い面積にあたる。
耕作放棄地の増加による問題と懸念点について
耕作放棄地が増えることによる問題として主に次のようなことが指摘されている。
・病害虫・鳥獣被害の発生
・洪水や浸水の防止・軽減機能の低下
・土砂やゴミの無断投棄の誘発
さらに懸念されるのが、耕作放棄地が増えることにより農業が衰退することである。一度放棄された農地は数年で荒れてしまい、時間が経てば経つほど再生するのに大変な労力が必要になると言われている。日本の食糧自給率はカロリーベースで73%(昭和40年度)だったものが、39%(平成25年度)にまで落ちている。将来懸念されている世界的な人口増加や、世界情勢、為替などの不透明性を考えると、これ以上の農業の衰退には不安を感じてしまう。
耕作放棄地について調べて感じたこと
耕作放棄地の増加など農業衰退の主な要因は、農家の高齢化や担い手不足、農作物価格の下落などと言われている。しかしその他にも、かつては農業を守っていた制度が、現在及び将来においては、かえって衰退を招くものとなるという指摘もある。今回、耕作放棄地についていろいろ調べてみると、自分が日本の農業制度の問題点について全く知らないことを痛感した。
日本の農業の衰退を食い止めるためには、高齢化や担い手不足などの農家が抱える問題解消や国が行う農業制度改革のほかにも、一人でも多くの人が農業に関心を持ち、農業が抱えている問題の根っこを知って、変えなければいけないという流れを作ることではないだろうか。耕作放棄地について調べたことがきっかけで、今はそのように感じている。
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji