12月19日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
Jタンクエリアで未接続の配管に処理水を流し、堰の外に漏らした事故の【続報】原因は深刻
JタンクエリアでALPS処理水を堰の外に漏らしてしまった事故の続報。調査による事故原因が発表された。その内容は、「接続されていない配管に流した」という事故の内容以上に深刻なものだった。
当該処理水をタンクに移送する担当箇所は、J6タンクエリアに移送するための手順書を作成するにあたり、タンク工事実施箇所と施工図面を用いて確認を行った結果を反映していたが、施工図面を確認した際に配管の接続状況について誤認してしまい、結果として間違った手順書が作成された。
この手順書を元に弁の開閉操作を実施した結果、施工中の配管へ当該処理水が流入し、漏えいに至った。
また、現場において、実際の配管のライン確認は実施していなかった。
今後は、新設ラインの弁操作を実施するにあたっては、移送前にライン構成の確認を確実に実施することとする。
手順書作成の際に移送ラインを誤認した原因については、調査を継続し、必要に応じて対策を検討する。
なお、漏えい水が染み込んだ土砂については、12月18日午後1時30分に回収が完了。回収範囲は12月17日実施した範囲を含め、約2.4m×約15m、総回収量は約5.7m3。
手順書を作成する人間が現場に出ていない。その理由は書かれていない。しかし、これはあまりにも深刻だ。たとえば先日、3号機プールでの操作卓落下の原因についての報告があった。あの場所は極めて放射線量が高く、遠隔操作でしか作業が出来ない環境だったとされる。しかし、この場所は条件が違う。
通常の工事でとられる当たり前の手順が踏まれていると多くの人が想像していたであろう場所で、工事計画を立てる責任者が現地確認を行わずに手順書を作成し、それに沿って作業した結果、「接続していない配管に汚染水を流して漏らしてしまった」(発表では処理水とされるが、ただの水ではない)。
事故原発の現状の厳しさを、改めて痛感させられる事件だ。
※ 関連記事を作成しリンクを追加します。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年12月5日午前10時47分~)
※滞留水移送は実施中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中。(平成26年12月14日午前9時34分~)
※滞留水移送は実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)停止中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス
新規事項なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
12月18日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1号機放水路
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年12月19日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
12月18日分のデータでは、地下貯水槽ドレン孔水で最高値は「iの北東側」での230Bq/L。「iiiの北東側」で530Bq/L。地下貯水槽漏洩検知孔水では「iの北東側」での84,000Bq/L。(ともに全ベータの値。1立方センチ当たりで発表された数値をリットル単位に換算)