日本の国土の6~7割は森林であり、そのうち4割が人工林だそうです。人によって作られたは森は、間伐などを行って管理していく必要があると言われています。では「なぜ、間伐をする必要があるのか?。自然のままに放置しておいてもいいのではないか?」。人工林の間伐作業について調べてみたいと思います。
そもそも間伐とは?
間伐の必要性の前に、まず間伐について調べてみます。北海道の公式WEBサイトには、次のように書かれています。
木々の生長により混み合った森林の木の一部を伐って本数密度を調整する作業です。間伐を行うことにより、残った木々の成長を促すだけでなく森林の多面的な機能の維持・増進に役立ちます。これら間伐等の森林施業は、健全な森林づくりには欠かすことのできない作業です。
日本で最も多く植林されている木は「杉」だそうです。一般的に植林された杉の木は、植えられておよそ10~15年後に最初の間伐が行われるそうです。間伐は一度のみでいいというものではなく、その後も5~10年毎に1~3割ほどの木を伐採していきます。通常、杉の木は1ヘクタールあたり3,000本ほど植えられますが、間伐の結果、最終的にはおよそ500~600本になるそうです。
どうせ切るならば、初めから500~600本だけ植えればいいのではないかと思ってしまいます。しかし、杉の木などの針葉樹はまばらに植えると、まっすぐ育たない上に木の下の方が太く、先端に行くに従って細くなってしまい建築用木材としては適さなくなるとのことです。
間伐方法については大きく分けて「普通間伐」と「列状間伐」があるそうです。「普通間伐」とは、成長の遅い木などを選んで伐採していく間伐方法で、従来からおこなれてきたものです。
一方、「列状間伐」は、成長の良し悪しを考えずに一定の列の木を直線上に伐採する間伐です。普通間伐に比べて「伐採」、伐採した木を集める「集材」、伐採した木の枝を取り除いたりする「造材」、そして「搬出」などの作業を効率的にできるメリットがある反面、成長の遅い木が残ってしまう可能性があるなどのデメリットもあります。現在、林業に携わる人手が減ってきています。そのため高性能な大型機械を持ちいた林業が求められています。列柱間伐は、このような高性能林業機械を用いるのに適した間伐方法と言われています。
間伐の必要性について
間伐実施の有無による違いについて、よくわかる写真が林野庁のWEBサイトにあります。次の2枚の写真のうち、1枚は間伐を行った森。そしてもう一枚は間伐がされていない森です。
写真を見れば一目瞭然ですが、地表の様子が全く違います。間伐を行わないと、木々密集しているために太陽の光が地表に差し込まなくなります。そのため、植物がほとんど生えずに地面がむき出しになるそうです。このような地表は雨が降ると土が流れやすくなります。
間伐を行う理由は、太く真っ直ぐな価値の高い木材を生産する目的もありますが、それ以外にも土砂崩れの危険性、保水力の低下、生物の多様性に乏しい森になるのを防ぐ目的もあるそうです。森林の保水力と価値について、全国森林組合連合会のWEBサイトには次のように書かれています。
森林がいかに水分を吸収するかは、裸地の約3倍、草地の約2倍といわれている。さらに、森(日本中の森林)の持つ機能を貨幣価値に換算(つまり、自然物が果たしている役割を人間が人工的なダムや浄水場で代用するとしたらいったいいくらかかるのか、という試算)してみると、洪水の緩和だけでも年間6.5兆円、水資源貯留だけで、8.7兆円、表層崩壊防止で8.4兆円、水質浄化で14.6兆円もの評価額になる。つまり、山林が行ってくれていることを人力で実現するのはほぼ不可能ということである。これに表面浸食防止の28.3兆円を足すと66.5兆円にも達する。単純に計算すると、もしも日本の人工林の内10%が間伐が行われないことで森林としての機能を失ったら、年間に6.6兆円の損失ということになるのである
以前、沖縄県の石垣島で大雨が降った際に、赤土が海に流れ出してサンゴが死滅したことがありました。赤土流出の一因は森林の伐採によるそうです。「森林伐採」と「間伐」との違いはあるものの、保水力が低下し、地面がむき出しになって、土が流出しやすい土地という点については共通するものがあるかと思います。
「森の力再生事業」について
人工林の手入れについては、間伐以外にも「下刈り」や「除伐」など、様々な作業があります。しかし今、木材価格の下落などの理由により、十分に手入れされていない「荒れている森」が増えており問題になっています。そこで、静岡県では平成18年から「森林(もり)づくり県民税」を導入して、森の手入れをする「森の力再生事業」を行っているそうです。
県が森林(もり)づくり県民税を財源に進める「森の力再生事業」により間伐した森林の98%で、下草や広葉樹の下層植生が回復していることが分かった。回復が十分ではない整備箇所でも樹木自体の生育は順調で、県は「事業の効果で森林の機能が戻ってきた」とみている。
人口林が4割を占めるにも関わらず、十分な手入れがされていない森が多いといわれる今、同様な取り組みが必要になっているのかもしれません。
参考WEBサイト
紹介:sKenji