11月20日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発の現状を読み進めます。
工事中のタンクから重量物が落下し、隣のエリアの作業員が大けがをした事故の続報。あまりにもお粗末な工事のあり方が明らかに。受傷者の現在の容体については触れられず
11月7日、J2タンクエリアの工事現場で発生した、タンク頂部からの重量物(旋回梯子レール)の落下事故について、現場状況、事故原因の調査、対策が発表された。原因はレールを仮置きした時点で落下の危険がないと判断してクレーンからのフックを外したこと、作業手順が不明確だったこと(手順の伝達が徹底されていなかったのではなく、明確な手順そのものが存在しなかった)、汎用的な万力を用いた安全上効果的ではない仮止めが行われていたことなど。
極めて杜撰というほかない原因によって発生した事故だったと言える。
対策として挙げられている項目はどれも特記する以前の極めて初歩的な手順を再確認するものになっている。対策のひとつとして構内企業全社を対象として事故原因と対策を周知するとしているが、このような重大事故が多発するような状況が続けば、工事の経験がある人ほど「恐ろしくてこの現場では働けない」と感じるかもしれない。
※クレーン作業、高所作業を行う上での専任監視員を配置していたが、タンクの裏側にいたとされ、監視業務がどのように行われていたのか明確でない。
◆事故発生直後、意識障害があり頚椎損傷のおそれがあるとされた作業員と足首骨折の疑いとされた2名の重傷者の現在の容体については触れられていない。また労災関係についての記載もない。
1号機 ~タービン建屋地下からの高濃度滞留水移送を停止
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
加えて、
・1号機タービン建屋地下→1号機廃棄物処理建屋へ高濃度滞留水を移送実施(平成26年11月19日午前10時19分~11月19日午後5時52分)
※滞留水移送を停止
2号機~6号機
新規事項なし
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月13日午後3時7分~)
※滞留水移送は実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中。
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年11月5日午後4時14分~)
※滞留水移送は実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
地下水バイパス
新規事項なし
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
11月19日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
新規事項なし
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
関連データ(東京電力以外のサイト)
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年11月20日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
11月19日分のデータでは、地下貯水槽ドレン孔水で最高値は「iの北東側」での200Bq/L。地下貯水槽漏洩検知孔水では「iの北東側」での91,000Bq/L。(ともに全ベータの値。1立方センチ当たりで発表された数値をリットル単位に換算)