1号機屋根パネルのカギ裂きは、ノズル引き抜き時の突風のせいと発表。1号機放水路立坑の放射線量は依然高いまま。
10月29日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
原子炉内温度計(3号機TE-16-114K♯1)の信頼性評価の続報
他の温度計とは異なる傾向の挙動はあるものの、注水温度や外気温に連動し、また計測値が正しくないと判断する温度差(他の温度計と20℃程度)以内なので、これまで通り監視用に使うとの発表。
※10月16日に実施した1号機、2号機および3号機の原子炉内温度計ならびに原子炉格納容器内温度計の信頼性評価(毎月実施)において、3号機格納容器空調機供給温度(TE-16-114K♯1)の温度傾向を評価した結果、10月20日、当該温度計の点検(直流抵抗定)を実施し、電気特性上の異常がないことを確認。
(既出)
その後、当該温度計について、温度の挙動を工学的に評価を実施。
その結果、当該温度計は、他の温度計と異なる傾向の挙動が確認されているものの、直流抵抗測定値に異常はなく、
全体的には炉注水温度や外気温度とともに低下していること、
また、他の温度計との温度差は、値が正しくないと判断する温度差(20℃程度)以内となっていることを確認。
以上により、現時点では、当該温度計が正しい値を示していないとは判断できないことから、これまで通り、実施計画に定められた格納容器温度の監視に使用していく。
疑問点はあるが、監視用として使い続けるという判断。新たな温度計に取り換えることができないもどかしさが垣間見れる。
1号機屋根パネル破損の続報。強風により作業を中断しようとしている最中に突風に煽られたと発表
※10月28日午前8時23分頃、1号機原子炉建屋カバー解体工事において、屋根パネル孔部(南2屋根パネルNo.36)より飛散防止剤を散布中に、先端ノズル部が風により動き、孔の開口が目測で約1m×約2mの三角型に拡大。(既出)
調査の結果、
飛散防止剤散布中に風が強くなってきたことから(瞬間風速18m/s)、当該作業を中断するため先端ノズルを引き抜いている最中に、飛散防止剤散布機が風にあおられ、孔の開口が拡大したことがわかった。
また、当該作業を中断して以降、その後も風が強い状態が続いたことから、当日の作業は順延とした。なお、孔の開口が拡大した状態(約1m^2)で、放出量評価に与える影響は少ないことを確認している。
10月29日午前8時45分、屋根パネル貫通孔からの飛散防止剤の散布が終了。当該作業期間中において、各ダストモニタおよびモニタリングポストの指示値に有意な変動はなかった。
作業実績(建屋カバー解体に向けた飛散防止剤散布と調査の状況について)によると、屋根パネル2枚の取り外し作業は31日にずれ込んでいる。
屋根パネル破損事故が起きたのはNo.36ということだった。48カ所の穴あけ散布作業は29日午前8時45分に終了していることから、28日の日報にあった「このため、本日の作業を中断」という記載は、終日中断ということではなく、作業が再開されていた可能性もある。
クレーン搭載トラックから燃料油漏れの続報
※10月28日午前8時30分頃、正門付近において、車両(4トンユニック車)より燃料油の漏えいが発生した旨、同日午前8時35分に緊急時対策本部に連絡があった。漏えい範囲は、約1m×約1m。その後、同日午前8時53分に富岡消防署へ一般回線にて連絡。漏れた燃料油は受け皿にて受け、同日午前9時40分頃漏えいが停止したことを当社社員が確認。(既出)
富岡消防署による現場確認の結果、同日午前10時34分に「燃料油の漏えい事象」と判断された。なお、受け皿内の漏えいした燃料油および燃料油の染み込んだ土壌の回収については、同日午後3時40分に終了。
富岡消防署は「燃料油の漏えい事象」と判断。
受け皿内の漏えいした燃料油、燃料油の染み込んだ土壌の回収終了。
1号機放水路立坑は依然として高い放射線量
※1号機放水路上流側立坑において、セシウム137の濃度が上昇した件について、1号機放水路立坑水の分析を実施。
1号機放水路上流側立坑におけるセシウム137が前回値120,000 Bq/Lから95,000Bq/L、全ベータ放射能が前回値150,000 Bq/Lから120,000 Bq/Lと低下傾向が見られることを確認。
一方、1号機放水路下流側立坑におけるセシウム137が前回値4,100 Bq/Lから5,300 Bq/L、全ベータ放射能が前回値5,400 Bq/Lから7,600 Bq/Lと若干の上昇傾向を確認した。なお、トリチウム濃度については、いずれも前回値と比較して有意な変動はなかった。
<1号機放水路立坑水(上流側)10月27日採取分>
セシウム134 31,000Bq/L
セシウム137 95,000Bq/L
全ベータ 120,000Bq/L
トリチウム 320Bq/L
<1号機放水路立坑水(下流側)10月27日採取分>
セシウム134 1,700Bq/L
セシウム137 5,300Bq/L
全ベータ 7,600Bq/L
トリチウム 810Bq/L
20%ほどの低下について「低下傾向が見られる」
40%ほどの上昇について「若干の上昇傾向」
9月26日採取分では上流側立坑のセシウム137が950Bq/Lだったのだから、今回の数値も十分過ぎるほど高い。
タンクローリーから軽油漏れ
※10月29日午前10時15分頃、Fタンクエリア南側において、タンクローリ車エンジン付近より軽油漏えいが発生した旨、同日午前10時23分に緊急時対策本部に連絡があった。
漏えいは、約1m×約1.5mの範囲で、地面に染み込んでいる状態であったが、止め弁を閉止したことにより軽油の漏えいは停止。また、漏えい箇所にビニール袋による養生も実施した。同日午前10時38分に双葉消防本部へ一般回線にて連絡。
積載した燃料が漏れたのか、ドラック側の燃料が漏れたのか。
Fタンクエリアは6号機の北側に位置する。下記の資料に地図が掲載されている。
淡水化装置(RO)の制御盤改造、プログラム変更のため、関連する汚染水処理設備の運転を停止
※汚染水処理設備のうち淡水化装置(RO)制御盤の改造およびプログラムの変更を行うため、関連する以下の設備を停止または循環待機運転とし、制御盤の改造を10月29日午前9時30分に開始。
<10月29日>
○第二セシウム吸着装置(サリー)停止時間:午前8時26分
○淡水化装置(RO)停止時間:午前7時40分
○多核種除去設備 循環待機運転状態:(A系)午前7時56分
(B系)午前8時10分
(C系)午前7時56分
○増設多核種除去設備 循環待機運転状態:(A系)午前8時30分
(C系)午前8時37分
[B系については停止中]
○高性能多核種除去設備 停止時間:午前9時2分
【停止】
・第二セシウム吸着装置(サリー)
・淡水化装置(RO)
・高性能多核種除去設備
【処理水を外部に排出しない処理設備内での循環】
・多核種除去設備(ALPS)
・増設多核種除去設備
1号機~2号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月27日午前10時43分~)
※滞留水移送は稼働中
3号機 ~タービン建屋滞留水の高温焼却炉建屋への移送を停止
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水の移送を実施(平成26年10月11日午前10時5分~10月28日午後4時1分)
※滞留水移送を停止
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
Fタンクエリアは地図の左上、6号機の敷地に隣接している。