高性能多核種除去設備でRO濃縮汚染水を使った試験運転が始まる。多核種除去設備は、初代、増設、高性能の三種でホット試験が走ることになった。汚染水の処理能力向上が期待されるものの、三種とも「試験稼働」の不安
10月18日(土曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
小指を切断した協力企業作業員についての続報
※10月17日午後1時30分頃、港湾内海底土被覆工事において、協力企業作業員(男性)が作業中に右手小指の指先を切断。午後2時に入退域管理棟救急医療室に入室し医師の診察を受けたところ、緊急搬送の必要があると判断し、午後2時34分に救急車を要請した。なお、当該作業員に身体汚染はなかった。(既出)
その後、午後2時47分に急患移送車にて福島第一原子力発電所を出発し、富岡消防署(救急車待機場所)で、救急車に乗り換えていわき市立総合磐城共立病院に搬送。医師による診察の結果、「右小指切断」と診断された。今後、約1ヶ月程度の通院を要する見込み。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月11日午前10時46分~)
※滞留水移送は稼働中
◆3号機
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年10月11日午前10時5分~)
※滞留水移送は稼働中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備 ~高性能多核種除去設備で実際のRO濃縮汚染水を使ったホット試験を開始
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
※高性能多核種除去設備については、平成26年8月20日より検証試験装置を用いて、実液通水による検証試験を実施していたが、高性能多核種除去設備本体の設置が完了したことから、10月18日午前10時43分に、RO濃縮塩水を用いた系統試験(ホット試験)を開始。運転状態については、漏えい等の異常がないことを確認。なお、検証装置を用いた検証試験については、継続して実施し、検証結果を適宜高性能多核種除去設備に反映していく。
多核種除去設備が、初代、増設、高性能の三種でホット試験。汚染水の処理能力向上が期待されるものの、三種とも「試験稼働」の不安。
地下水バイパス ~海洋排出を開始。通算28回目
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ1の当社および第三者機関による分析結果[採取日10月9日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認したことから、(既出)
10月18日午前9時59分、海洋への排水を開始。同日午前10時10分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
10月17日のパトロールにおいて、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側 ~地下水観測孔No.1-16の地下水の分析値で10倍以上の変動
<最新のサンプリング実績>
10月17日に採取した地下水観測孔No.1-16の地下水の分析値について、以下の通り前回と比較し10倍以上の変動があることを確認。
<今回(10月17日)採取分>
セシウム134 15Bq/L
セシウム137 45Bq/L
<前回(10月16日)採取分>
セシウム134 1.2Bq/L
セシウム137 2.6Bq/L
今回の濃度上昇については、台風の大雨により濃度上昇したNo.1-6の影響を受けているものと考えられる。
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
※「福島第一原子力発電所周辺の放射性物質の分析結果」のページでの該当するデータ公開も行われていない。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年10月18日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
10月17日分のデータでは、地下貯水槽ドレン孔水で最高値は「iの北東側」での300Bq/L。地下貯水槽漏洩検知孔水では「iの北東側」での49,000Bq/L。(ともに全ベータの値。1立方センチ当たりで発表された数値をリットル単位に換算)