本日は素敵なカレンダーのご紹介です。なんでカレンダー? って思うでしょう。でもこれ、ただのカレンダーではないんです。なんとアフリカのスーダンという国や東北の被災地を拠点に活動するロシナンテス、という認定NPO法人によるカレンダー。
途上国の人たちや、被災したけど頑張ってる人たちを応援したいって方、たくさんいらっしゃいますよね。でもスーダンとか海外は遠いし、東北を応援したいと思ってもどうすればいいのか分かりにくかったりもしますよね。でも応援したい。はい、そうです。このカレンダーをお求めしていただくと、それがそのまま現地での活動を直接サポートするのに使ってもらえるんです。
それも、NPOでがんばっているスタッフの人たちが撮影した写真がたくさん盛り込まれたカレンダーです。プロが撮影する写真も綺麗でいいですが、いつも地元の人たちと一緒にいるスタッフが撮っているから表情が違います。笑顔がいいんです。風景写真にも物語があるんです。はい、ここに写ってるこの花は「閖上桜」、シンガーのしおりちゃんも歌ってますね。震災の年の春、宮城県名取市のこどもたちと一緒に植えて、この木が大きく育ったらここで一緒に花見をしようと約束した特別な桜です。そんな写真が約150枚掲載されています。卓上カレンダーだから場所もとりません。いつでも眺めながら、今日のスーダンの天気はどうかなあとか、東北のおばあちゃんたちは健康農業の活動で今日はどんなことしたのかなとか、思いを馳せることができるのもいいですね。
と、ここまではテレビショッピングみたいに語ってきましたが、そろそろ無理があるので、ここからは気を引き締めてお届けします。そうです。ロシナンテスは認定NPOです。認定NPOというのが何かというと、「より客観的な基準において、高い公益性をもっている」と認定されているということです。実は認定制度とは、みなさんが寄付をされた時に税制上優遇されるというものなので、広く一般から支持され、適切に運営され、しっかり情報公開してるかが厳しく審査されて認められたという特別な意味が「認定」という語には込められています。
ロシナンテスの理事長である川原尚行さんは医師です。スーダンの人々のおかれた状況を目にして、医師として人間としてできることをやりたいと、外務省医務官という仕事を辞してスーダンで活動を始めました。医師ですから医療に関する仕事をするのかと思ったら、彼はそれだけではありません。もちろん医者として地元の人たちを診察したり治療したりもするのですが、並行して井戸を掘ります。地元の人たちの健康のためには生活環境を改善することが不可欠だからです。そしてこどもたちを対象としたスポーツ活動を行います。教育を行います。とくに、それぞれの村に健康指導ができる看護師を育てるため女性の教育に力を入れます。長く内戦が続き2011年には南スーダンが分離独立するなど政情が不安定な土地柄なので、こどもたちの教育、とくに女子教育がなおざりにされるケースが多かったのでしょう。いくら病気の人を治療してもそれだけではいかん、と川原さんが言ったかどうかはわかりませんが、人々の健康を守るためには、衛生、運動、食生活、そして出産、母子の健康などについての知識が必要です。知識を得るには教育が不可欠です。ロシナンテスは今年、日本中から集めた支援金を元に、スーダンを代表する歴史あるハルツーム大学に、アフリカで唯一となる和の空間「ジャパンセンター<無東西(むとうざい)>」をオープンしました。学校をつくる計画も進めています。国としてのODAとか援助ではなく民間としてやろうとしています。これは川原さん本人がしょっちゅう言うことですが「あほかと言われてもせなならんもん」。ロシナンテスとは、そういう真っ直ぐで純情で理想を信じる「あほ」の集まりです。
東北での活動にもまったく同じ真っ直ぐなものが流れています。2011年3月11日、川原さんはたまたま日本に帰国中でした。大地震と大津波のニュースに接してすぐに東北に行こうと決めました。行かないことなど考えられなかったそうです。しかし交通網は寸断されていました。一般車両の通行が無理だと判断して、知り合いの医師の病院の救急車を借りて知り合いと一緒に東北に向かいます。さっき「あほ、あほ」言いましたがすごく頭がいいんです。人生の現場に役立つほんものの頭の良さです。川原さんは宮城県の名取市というところで避難所になっている小学校に入り、たくさんの人たちが避難している体育館の中、毎日ひとりひとりに声をかけてまわったそうです。多くの避難所でそうだったように、保健室を臨時の診察スペースにして、具合の悪い人が来るのを待つということができなかったんですね。たぶん、そんな考えすらなかったのでしょう。あの震災の直後に具合が悪くない人などいなかったでしょうから。避難されている方たちとの心の距離が縮まっていくのに時間はかかりませんでした。「自分の家に戻りたいんだが、泥だらけでどうにもならない」という話を聞き、川原さんは高校時代の後輩、大嶋一馬さんに電話をします。「とにかく手伝ってくれ」。九州から駆け付けた大嶋さんを中心に、被災した町でのガテン系の仕事が始まりました。医療と体を張った活動と両輪で進めながら、桜が咲くころには花見をしました。スーダンからこどもたちを招待して、東北のこどもたちと運動会を開催しました。運動会の後半、日本のこどもたちが民謡で踊っていると、地元のおばあちゃんたち、たくさんの人たちが踊りの輪に加わっていきました。もちろんスーダンから来たみんなも一緒に踊りました。川原さんはスーダンと日本を飛び回っています。大嶋さんはロシナンテスの東北事業をあずかって、ガテン系の仕事が終了した後も、健康農業や寺子屋など地元に根差した、いや地元の人たちが同じ地元の仲間あつかいするような、そんな東北の日々を送っています。
「人にはそれぞれの持ち場でやることがある」と川原さんはいいます。全員が川原さんや大嶋さんのようなことを始めたら世の中が壊れてしまうと笑います。そうです。人にはそれぞれの使命があるのです。同じこころ、同じ志を持って、それぞれの持ち場でがんばる。
このところ「支援」という言葉が嫌いになりかけていました。(あ、ここから自分の話です)人と接するときに「支援」という考えを持つなんて失礼だし、そもそも考えられないし、もしもそんな態度の人がいたとしたらとんでもないことだと思ってました。でも、こうは言えるかなと思います。
人と人として(当たり前すぎることですが)向き合って、いっしょに生きている川原さんや大嶋さんたちのような人たちのことを、別の持ち場でそれぞれ生きてるみんなが、俺たちの分も、私たちの分も頑張って!と「支援」することは大いにありでしょ。
そのひとつがカレンダー。「ロシナンテス活動カレンダー 2015」です。
ひとりはみんなの為に みんなはひとりの為に
みなさん「後方支援」よろしくお願いします!
文●井上良太