本州で最も透明度の高い湖、本栖湖で遊ぼう!

本栖湖

富士山山麓に本州で最も透明度の高い湖(※)がある。本栖湖である。

本栖湖は山梨県の富士河口湖町と身延町にまたがる湖で、静岡県との県境近くにある。個人的によく行く湖であり、ここ6、7年は毎年のように訪れている。同湖が持つ魅力をご紹介したい。


※「理科年表. 丸善株式会社 2007年」による。測定時の状況によっては、異なる場合もあります。

本栖湖について

本栖湖は富士五湖のひとつである。同湖の特長としてまずあげたいことは、透明度11.2mという高い水質である。状況が良いと20mを超えることもあるという。

湖の周囲は約12km。水深は日本で9番目に深い67.9m。この数値は平均水深であり、最大では121.6mに達する。湖面は海抜約900mの高さにあり、真夏でも比較的涼しく、日が落ちると肌寒さを感じることもある。

富士五湖のうち、本栖湖、精進湖、西湖の水位は常に同じである。これは湖ができた歴史と関係しているとのことである。3つの湖はもともと「せの海」と呼ばれる1つの湖であった。ところが864年の「貞観の噴火」など、富士山の火山活動によって発生した溶岩が流れ込んで分断されてしまった。「せの海」は3つに隔たれてしまったものの、地下ではつながっているために、水位が同じだと考えられている。

本栖湖は富士五湖のうち一番西の奥まった場所にあるせいか、最も自然が残されており、富士五湖の秘境と呼ぶ人もいる。1000円札の裏側に富士山とともに描かれている湖は本栖湖であり、同湖の北西湖岸からの景色である。

本栖湖の楽しみ方

本栖湖での楽しみ方はいろいろある。湖畔を一周する道路をサイクリングしたり、湖岸にある竜ヶ岳など、近くの山に登るのもいい。湖上ではウインドサーフィン、釣り、カヌーなどをすることもできる。その他にもダイビングショップがあり、日本では珍しい湖でのダイビングも楽しむことができる。

ゆっくりしたい人は、美しい湖面を眺めながらぼぉーとしているだけでも癒される。ほかには「もぐらん」と呼ばれる潜水艦型遊覧船がある。同船は潜航はしないものの、船底に窓が2ヶ所あり本栖湖に棲む鯉、ヒメマス、ニジマス、ウグイなどを見ることができる。ちなみに「もぐらない」から「もぐらん」というのだそうだ。

写真でみる本栖湖

次の写真は、本栖湖東岸の浜で撮影したものである。この浜は夏になると多くのウインドサーファーやカヌーイストで賑わう。

湖岸から7~62mの沖合、水深10m前後の湖底には、本栖湖湖底遺跡と呼ばれる水中遺跡があり、縄文時代中期の土器、石器や古墳時代初頭の甕(かめ)、高杯が見つかっている。なぜ、湖の底に遺跡があるのかというと、一説には富士山の噴火活動による溶岩が湖に流入した際に、湖面の水位が上がって水没したとも言われている。

本栖湖にはキャンプ場が5か所ある。いずれのキャンプ場も湖のすぐ近くにあり、昼は湖で遊び、夜は満点の星空を楽しむことができる。夏になると家族連れや仲間同士のキャンパーで賑わっている。

本栖湖はウインドサーフィンのメッカでもある。ウインドサーフィンは、ヨットと同じように風を利用して走るスポーツであり、風がないと走らない。

同湖では夏のよく晴れた夕方に、サーマルウインドと呼ばれる風がかなりの確率で吹く。サーマルウインドとは海と陸地の気温差によって海から陸へと吹く風のことで、夏、甲府盆地の気温が上がると、駿河湾から同盆地に向けてサーマルウインドが吹く。本栖湖はその風の通り道にあるために、多くのウインドサーファーが集まるのである。

次の写真に写っている山は本栖湖の南側にある竜ヶ岳である。標高は1,485m。多くのウインドサーファーが固唾を飲んで観察する山である。

なぜ、この山が注目されるかというと、サーマルウインドの訪れを告げるのがこの竜ヶ岳だからである。同岳の山頂に雲がかかり始めるとサーマルウインドが吹き始めることが多く、雲ができるとウインドサーファーは湖へと繰り出す。

ウインドサーファーが待ち望む風は、カヌーイストにとってはやっかいで危険なものである。同湖でカヌーを楽しむ方は、竜ヶ岳に雲ができ始めたらすぐに岸に上がったほうがいいかもしれない。

個人的に本栖湖で一番好きな時間帯は夕方である。夕暮れ時、本栖湖の湖面には太陽の光を反射して一本の黄金色の道ができる。同湖が一番輝きを増す時で、趣味のウインドサーフィンでこの道を疾走する爽快感を一度味わってしまうと、同湖にやみつきになってしまう。

私が訪れた先月の26日。本栖湖は幻想的な光景を見せてくれた。

その日、私は湖でウインドサーフィンをしていた。日中は晴れていたものの、夕方になると湖の一部で降雨を感じさせないほどの霧雨がぱらついた。気にせずに続けていると、太陽の光が差し込み虹の橋があらわれた。橋は湖岸から湖の真ん中にかかる鮮やかなもので、180度の綺麗な半円を描いていた。虹は度々見かけることがあるものの、そのたもとまで見えることは少ない。橋の下をウインドサーファーが駆け抜けていく。夢のなかのような光景であった。

自然は時々、想像できないほどの幻想的な光景をみせてくれる。だからこそ、自然の中でのアクティビティに惹きつけられるのかもしれない。自然豊かな本栖湖は、何度も訪れたくなる湖である。

本栖湖

虹のピークは過ぎてしまったものの、ウインドサーファー仲間に防水カメラを借りて、湖上から撮影

参考WEBサイト

Text & Photo:sKenji