高さ10m以上の盛土工事への不安

高く積み上げれた盛土。大槌町にて。

先々月の末、八戸から釜石市まで車で南下しながら、途中いくつかの東北の沿岸地域を見てきた。復興という言葉には程遠いものの、各地では復興の礎となる土地造成が行われていた。

ダンプトラックなどの工事車両がひっきりなしに行きかう被災地で目についたのは高く積まれた土。津波対策として土地をかさ上げするために盛土が行われていた。
遅々として進まないと言われる復興事業を少しでも感じることができるものだった。しかし、同時に目の前に小山のように高くなった土地を見て、一抹の不安も感じた。「これだけ高く積んで、崩れてはこないのだろうか」と。

盛土はしばらく寝かせることが必要

以前、千葉に住んでいたことがあった。そのころは週末になるとよく東京湾にウインドサーフィンに行っていた。乗っていたゲレンデは港の中にあり、その一角の空き地には大量の土が高く積まれていた。この地域一帯には建物が立ち並び、土地の価値が高いことには疑いようもなかった。土が積まれた空地の周りでもマンションなどの開発が進んでいた。放置されていることが不思議だった。

ある時、ウインドサーフィン仲間に「なぜ、あの土地は活用されずに、放置されたままなんですかね」と尋ねてみると、土木に詳しいひとりが「埋立地など造成した土地はしばらくの間放置しないと駄目なんだよ。ああやって、大量の土を載せて地盤が固まるのを待っているんだよ」と教えてくれた。

建設・土木関連の企業のWEBサイトを見ると「盛土を行った土地は、しばらく寝かせておいた方がよい」との記述もある。

盛土を行う場所の地盤、盛土で使用する土の種類等にもよるが、盛土を行った後は、しばらくそのまま放置して土地が安定するのを待った方がいいとのことである。放置期間については一概には言えないようだが、少なくとも1年以上は寝かした方がいいと書かれている。なかには10年は必要と記載しているサイトもあった。

復興事業の盛土に対して警鐘の声もある

復興事業の盛土に対しての警鐘の声は他でも聞かれる。次の記事は、先月25日付の岩手日報の記事である。

東日本大震災の津波で被災した陸前高田市の市街地を再生する土地区画整理事業で、最大高さ12メートルという盛り土による宅地造成に対し、住民から安全性に不安の声が上がっている。事業主体となる市は従来の安全基準に沿って対策を講じる方針だが、今回は国内でも過去に例がないような大規模な盛り土造成。県内の他の被災地でも同様の工事が行われる見通しで、十分な対策と住民説明が求められる。

 陸前高田市では区画整理を行う高田、今泉両地区の約120ヘクタールで盛り土によるかさ上げ工事を2018年度完成をめどに実施。平均7・4メートル、最大12メートルの盛り土の上に、住宅地や商業地を整備する。約1100万立方メートル(東京ドーム九つ分)という膨大な盛り土量で、8月から本格的な造成工事に入る方針だ。

 計画を受けて市は昨年度までに地区内で地盤調査を実施。砂質や粘土質が多く、盛り土重量によってのり面部分で地滑りが生じる危険性があることから、セメントなどで固める地盤改良や、砂のくいを打ち込むなどの対策で、安全を確保することを決めた。

 それでも、高田町中田地区高台移転協議会代表の菅野明宏(としひろ)さん(62)は「住民の中には危険な盛り土の宅地には住みたくないという人もいる。あらゆる可能性を考えて対策を検討すべきだ」と訴える。

引用元:巨大盛り土大丈夫? 陸前高田、宅地造成に住民不安

少なくない盛土の崩壊事故

盛土が崩壊する事故は少なくない。調べてみると、造成された年代問わず日本各地で多くの事故が報告されている。そして今日もまた大雨の影響で福島県の線路の盛土が崩れたニュースが報じられていた。

先日の東北旅行で見た各地の造成工事は、復興の足音が聞こえ頼もしく感じた。
その復興事業に水を差すつもりは毛頭ないし、震災で大きな被害を受けた地域に住む方々が1日も早い復興を願っている話も聞いている。けれど、もし本当に盛土に危険性があるならば、時間をかけてでも検証、造成、補強工事を行ってほしいと願わずにはいられない。津波で住宅や仕事場を一度失った方たちが、人為的要因により再び生活の拠り所を失うことだけは避けてほしい。

Text & Photo:sKenji