地下水の海への排出が秒読みか? 地下水バイパスの一時貯留タンク「グループ1-1(Gr1-1)」の詳細分析結果が公表される。
5月14日(水曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
地下水バイパスに関する資料配布が2件。海への排出が秒読みか
日報への記載はないが、報道配布資料として下記の2件の資料が公開された。
地下水バイパス揚水井戸No.12のトリチウムが1,200Bq/Lと相変わらず高め。東電の運用目標1,500Bq/Lは下回っているものの、他の井戸の過去の最高値よりも1ケタから2ケタも高い数値が続く原因は何だろう? 原因はさておき、運用目標を下回っているから結果オーライなのだろうか。
一時貯留タンクの詳細分析結果は、サンプルの採取日が4月15日だということに注意。「運用目標を満たしているか」の分析(運用目標分析)はすでに4月18日に確認されている。今回公表されたのは「詳細分析」の結果。詳細分析には1カ月近い時間が掛かることを示している。長い時間がかかるおもな原因はストロンチウム90の分析だろう。
第三者機関として分析を行っている「日本分析センター」では、ストロンチウム90やプルトニウム239+240を対象に「放射性核種自動分離測定装置」の実用化開発を行っているという。分析サービスについて紹介しているWEBページによると、ストロンチウム90を陸水で0.4mBq/Lを分析目標に1時間で測定できと記されている。
いずれにしろ、詳細分析の結果が出されたことで、グループ1のタンクに貯留された地下水の海への排出は秒読み段階に入ったと考えられる。
ちなみに日本分析センターは、『「国と特に密接な関係がある」特例民法法人に該当しない』と公表している。現在の会長・加藤康宏氏は、国家公務員としての最終官職は科学技術事務次官。理事長・上原哲氏は元内閣府原子力安全委員会事務局長、日本原子力学会元会長の横溝英明氏も理事に名を連ねている。
1号機
新規事項なし
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
2号機
1号機と同じ4項目に加え、
使用済燃料プール冷却の再起動について記載
※平成26年5月12日午前6時10分、使用済燃料プール代替冷却系について、当該系の遠隔監視装置の信頼性向上工事を行うため冷却を停止(停止時プール水温度:17.3℃)。(ここまで既出)
5月14日午後0時30分、作業が終了したことから、使用済燃料プール代替冷却系を起動。なお、運転状態について異常なし。また、使用済燃料プール水温度は冷却停止時の17.3℃から22.7℃まで上昇したが、運転上の制限値65℃に対して余裕があり、使用済燃料プール水温度の管理上問題ない。
54時間20分の冷却停止の間の水温上昇は5.4℃。冷却しない状態では、24時間あたり約2.4℃の水温上昇ということになります。単純計算すると、19日間ほど冷却が停止すれば制限温度を超え、34日半で100℃に達するということです。万一冷却できない事態に陥っても、それだけの時間の余裕があるということでもあります。
3号機~6号機
新規事項なし
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年4月24日午前10時34分~)
※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
<最新の作業実績>
5月10日午後3時13分起動(起動後の温度:21.9℃)
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
工作建屋からプロセス主建屋への滞留水の移送は5月下旬ごろまで、平日の日中に実施するとのこと。移送中は監視員を配置して常時監視を行うと記されている。
平成26年4月22日の集中廃棄物処理施設周辺の線量は、
移送配管の表面で80ミリシーベルト毎時。配管の周辺で10ミリシーベルト毎時。
建屋周辺の空間線量は0.025~0.050ミリシーベルト毎時。マイクロシーベルトに換算すると、25~50μSv/hということになる。
※単位がいずれも毎時という点に注意。
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では1.7cmの上昇。引き続き監視を継続。
5月14日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ19.3cm(4月14日移送停止後と比較し、1.7cm増)
・工作建屋:5月12日よりプロセス主建屋へ随時移送中
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
5月13日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
サンプリング実績について記載
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規事項なし
地下貯水槽の状況
サンプリング実績について記載
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年5月14日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太