動きのなさが逆に心配になる事故原発。報道配布資料では、1号機~3号機原子炉建屋内のホットスポットを遠隔操作のガンマカメラで探索する計画について資料をリリース
5月8日(木曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
油圧ショベルから油漏れ
油圧ショベルのエンジンルーム、燃料ホースから軽油が漏れ、地面に直径約10cmのシミ。油漏れは数分に1滴程度。双葉消防本部により「危険物漏えい事故ではない」との判断を受ける。
※平成26年5月8日午前10時15分頃、構内南側の産業廃棄物管理型処分場に配備した油圧ショベル(バックホウ)の始業点検において、エンジンルームから油が漏れていることを協力会社作業員が発見。漏えいした油は、地面に直径約10 cm範囲に染みこんでおり、数分に1滴程度漏れているため、受け皿を設置。また、同日10時30分に双葉消防本部へ連絡。同日午前11時30分に、本件は「危険物漏えい事故ではない」との判断を受けた。なお漏えい箇所を確認した結果、燃料ホースから軽油が滲んでいることが判明。現在は軽油の滴下は確認されていない。
直径約10cmのシミ。油漏れは数分に1滴程度。消防本部に通報か……。
遠隔操作のガンマカメラで原子炉建屋内のホットスポットを探索する計画
5月8日付の報道配布資料として、1号機~3号機原子炉建屋1階高所部(高さ4mほど)のホットスポットの有無を確認する計画についてリリースした。
調査機はNEDOが開発したガンマカメラを搭載した「かにクレーン」「パックボット」「中継器」などから構成される。線量の高い原子炉建屋内での調査を、免震重要棟から行うリモコン装置だ。(電源は有線)
目的は以下のとおり。
分析/評価結果については、1号機および3号機除染計画策定に活用する。また、既に除染工事に着手している2号機については、必要に応じて除染計画の見直しを行う。
引用元:「原子炉建屋内の遠隔除染技術の開発」1~3号機原子炉建屋1階高所部の汚染状況調査の実施について(ガンマカメラによる調査)|東京電力 平成26年5月8日
1号機は5月9日から調査を開始し、5月下旬まで。続いて3号機、2号機の順番で調査スケジュールが組まれている。
※NEDOは、新エネルギーおよび省エネルギー技術などの開発をおこなう経済産業省所管独立行政法人「新エネルギー・産業技術総合開発機構」
※この調査は技術研究組合国際廃炉研究開発機構(IRID)の成果を活用しているとのこと。
1号機,2号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機の4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年5月1日午前10時10分~)
3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年4月24日午前10時34分~)
加えて、使用済燃料プール循環冷却系の停止について記載。
※使用済燃料プール循環冷却系については、使用済燃料プール内の燃料交換機本体撤去作業に伴い、4月23日~6月上旬の間、原則毎週月曜日午前7時~土曜日午後4時の間停止予定(停止時間は最長で129時間、毎週土曜日午後4時~月曜日午前7時の間は運転予定)。また、水温は運転上の制限値65℃に十分な余裕を持った45℃を超えることがないよう、同冷却系停止前のプール水温度を29℃以下として管理する。
<最新の作業実績>
5月8日午前6時44分停止(停止時の温度:16.9℃)
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
焼却工作建屋の水位、焼却工作建屋西側サブドレン水の分析結果
<最新の集中廃棄物処理施設各建屋水位>
各建屋内の滞留水の深さについては、常設水位計による監視において、プロセス主建屋への移送後の水位と比較し、焼却建屋では1.5cmの上昇、工作建屋では0.3cmの上昇。引き続き監視を継続。
5月8日午後2時現在の各建屋深さ
・焼却建屋:深さ19.1cm(4月14日移送停止後と比較し、1.5cm増)
・工作建屋:深さ 5.3cm(4月14日移送停止後と比較し、0.3cm増)
<最新のサブドレン水サンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
焼却建屋で前日比0.1cmの水位増加。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
5月7日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
新規事項は記載されず。連休明けから地下水バイパスが予定されているが、本日も大きな動きなし。
1~4号機サブドレン観測井の状況
同じく新規事項なし。連休明けから地下水バイパスが予定されているが、本日も日報上では大きな動きなし。
地下貯水槽の状況
サンプリング結果について記載
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年5月8日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太