お正月に獅子舞が奉納された東松島市大曲浜の橋の向こうの空が、青い鯉のぼりでうめられている。春霞がかかったうす水色の空を泳ぐ500もの青い鯉のぼりが美しかった。
航空自衛隊松島基地の外周をめぐる道路のカーブあたりからも、青い鯉のぼりの群れは見えていた。玉造神社と慰霊碑に参拝した後、橋に向かって走っていると息子が訊いてきた。
「どうして青い鯉のぼりばかりなの?」
新聞で知っている程度の知識を元にぽつりぽつり説明し、「鯉のぼりの歌、思い出してみたら」と言ってから数秒後、息子は黙り込んだ。
青い空に青い鯉のぼり。あまりに美しいくみ合わせ。そしてあまりにもかなしい、
だけどやはり美しい物語。ころが音叉みたいに共鳴して音を上げる。
「今日はどちらを回って来たんですか?」
その日の午後、待ち合わせていた東北の知人に尋ねられて、「青い鯉のぼりを見てきました」と答えたら、返答に悩むような一瞬の間があった。
あまりにもかなしいこと。だからこそ、美しく空を泳ぎつづけてほしい、青いあおい鯉のぼり。
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青だけじゃないのだそうです。「青い鯉のぼり」プロジェクトのページには、活動に込められた3つの願いが紹介されています。そのひとつが「家族の絆」。
次の3つの願いが込められ活動しています。
(家族の絆)みなさんのお宅で鯉のぼりを揚げてください。
ご自宅で掲揚される場合は「青」に拘らず、いつも通り全ての鯉のぼり(家族)を揚げていただき、その時に日本で起きた大震災の話や家族間の震災時の連絡方法や集合場所など防災について等の話を通して家族の絆をとっていただいたら幸いです。そして天国にいる子供達に祈りを捧げてください。
五月の空を泳ぐ鯉のぼりを見たら、青い鯉のぼりのこと、思い出してください。
写真と文●井上良太