直径8.1m、高さ15.6mの巨大な円筒が福島第一原発の敷地内をスーパーキャリアと呼ばれる特殊輸送車両に載せられて移動していきます。容量700m3というこのタンク、兵庫県の三菱重工の工場で製作され、はるばる海を渡って運ばれてきたもの。タンクからの汚染水漏洩の影響から、漏れないタンクへのリプレースが進められています。
どうしてこんな大きなタンクを海上輸送してまで設置しなければならないか。それは、フランジタイプと呼ばれるボルトで締めて作成するタンクからの漏水が相次いでいるから。そして、増え続ける汚染水対策は待ったなし。汚染水を溜めるタンクの増設と、不具合が多いフランジタイプから溶接タイプのタンクへのリプレースを進めるためにも、汚染水の増加分を上回るペースで、信頼性の高いタンクを増設し続けて行かなければならないのです。
増え続ける汚染水。待ったなしのタンク劣化
昨年この写真が公開された時にはかなりショックでした。ALPSで処理する前の濃縮された汚染水が多く保管されているフランジ型タンクからの漏洩写真です。
多核種除去設備(ALPS)で処理されるのは、放射性物質と海水の塩分などが混ざった水を約2倍の濃度に濃縮した液体です。高い塩分による金属の腐食や、放射能によるシール材の劣化が予想以上のスピードで進んでいると言われます。
早くタンクを置き換えないと、たいへんなことになるかもしれないのです。
だからこそ、完成型タンクの設置が始まったことは朗報です。現地で進められている溶接型のタンク増設とあわせて、一日も早く「汚染水拡散を防ぐタンクシステム」が実現してくれることを切に祈ります。
文●井上良太