3月30日(日曜日)公開の「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」を、前日からの変化や変更を中心に見ていきます。
掘削作業中の作業員の死亡事故について(続報2)
本日(3月29日)より定例業務(パトロール、水処理作業およびウェルポイントの汲み上げ作業等)を除く工事をすべて中止し、安全総点検を実施することとした。
今回の災害の発生原因について詳細に調査するとともに、再発防止に努めてまいる。(ここまで既出)
(以下、新規記載として)
その後、問題がないことを確認できた現場から、順次、作業を再開。
十分な安全管理がなされていなかったことが、死亡災害の原因であると考えれば、安全管理が機能しない理由や背景が問題になると思います。「問題がないことを確認できた現場から」ではなく、さまざまな現場に共通する問題のあぶり出しこそが急務です。
また労働災害の責任についての記載がまったくないのは理解できません。「問題がないことを確認できた現場から、順次、作業を再開」という段階ではないと思います。
ALPS、C系の共沈タンク内ポンプでトラブル
多核種除去設備(ALPS)の3系統のうち、唯一処理運転可能なC系で、共沈タンク内のpHサンプリングを行うポンプを洗浄しても流量が回復しないトラブル。
※3月29日午後11時46分、多核種除去設備(ALPS)C系において、処理運転から循環待機運転に切り替えを行い、
共沈タンク内のpHサンプリングを行うポンプの洗浄を行っていたが、
洗浄後のポンプの流量が回復しないことから、
3月30日午前2時40分に点検調査を行うこととした。
その後、当該ポンプの再洗浄を行ったところ、流量が回復したことから、同日午前10時4分にC系の処理運転を再開。処理再開後の運転状態に異常は確認されていない。
不純物を薬液との反応で沈殿させて分離する前処理設備に、ALPSでトラブルを多発させるボトルネックがあることを想像させるインシデントだと思います。
放射性物質を分離して取り除く設備ですから、当然、設備周辺の放射線量も高いことが想像されます。沈殿タンクなどの設備はさらに高濃度に汚染されていることでしょう。そのような環境の中で、通常の操作から逸脱した点検調査を行うのは、大変なことだと思います。
原因究明が行われることなく、うまく行ったから再開しますということではトラブルを減らせないのでは。
抜本的な見直し、大改造を行った方が実は近道なのではないか。素人ながらも愚考する次第です。
4号機原子炉建屋で天井クレーンが走行不能(続報2)
トラブルの原因を推定し、再発防止対策をつくり、機器の性能確認の結果異常が見つからなかったことから、4日ぶりに燃料取出作業が再開されたと報告されました。
その後、再発防止対策を行い、3月30日午後0時、天井クレーンの性能確認を行い、機器に異常が認められなかったことから燃料取り出し作業を再開。
1号機~2号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→3号機タービン建屋地下へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月27日午前9時49分~)
3号機(5階中央部から湯気)
1号機と同じ4項目に加え、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年3月12日午後3時48分~)
そして、原子炉建屋5階からの湯気について、新規に記載されました。
※平成26年3月30日午前8時20分頃、3号機原子炉建屋5階中央部近傍より湯気が発生していることをカメラにて確認。同日8時25時点のプラント状況、モニタリングポストの指示値等に異常は確認されていない(午前8時20分時点の気象データは、気温7.8℃、湿度94.7℃)。
原子炉建屋の5階はオペフロ(オペレーティングフロア)とも呼ばれます。圧力容器の蓋を開けたり、使用済み燃料をプールに移送したりといった人手を介する作業が行われるフロアです。
専門家の中には3号機では小規模な核爆発が起こったとの説をとる人もいる3号機は、このフロアから上の構造物が完全に破壊されました。現在は瓦礫などの撤去作業が進められています。
3号機5階からの湯気はこれまでにも確認されています。何らかの熱源があると考えた上で調査するのが自然な流れでしょう。
昨年7月にも3号機5階からの湯気発生は問題になり、その際には次のような原因が推定されていました。
〈湯気の発生メカニズム〉
シールドプラグの隙間から流れ落ちた雨水が原子炉格納容器ヘッドに加温されたことによるもののほか、原子炉圧力容器、原子炉格納容器への窒素封入量(16m3/h)と抽出量(約13m3/h)に差が確認されていることから、この差分(約3m3/h)の水蒸気を十分含んだ気体が原子炉格納容器ヘッド等から漏れている可能性が考えられ、これらの蒸気がシールドプラグの隙間を通して原子炉建屋5階上に放出した際、周りの空気が相対的に冷たかったため蒸気が冷やされ、湯気として可視化されたものと推定されます。
引用元:福島第一原子力発電所3号機原子炉建屋5階中央部近傍(機器貯蔵プール側)で湯気の確認について(続報14)|東京電力 平成25年7月26日
記載された推定は次の2通りのものです。
1)シートプラグは、圧力容器や格納容器の蓋の上に設置されたコンクリート製の上蓋のようなもの。3枚のシートプラグによって、5階のオペフロ床面とほぼ同じ高さに覆われています。その隙間から漏れた水が格納容器で熱せられて湯気になったもの。
2)原子炉格納容器へ常に窒素を注入し続けているが、その出入りの量に1時間当たり3立方メートルの差があり、これが格納容器から漏れ出ていると考えられる。これが冷たい外気に接した時に湯気として目に見えるようになった。
格納容器から気体が漏れ続けているのはすでに自明のこととはいえ、2)のような推定がなされるということに、改めて原発事故の底知れない恐ろしさを感じます。
※ 昨年夏に水蒸気が発生した際には、8月7日の「続報19」で湯気が確認できなくなったと報告されるまで、20件の報道関係各位一斉メールが公開されています。
4号機~6号機
新規事項なし
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
<最新のパトロール結果>
3月29日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない(一部実施できない場所を除く)。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による水位監視(トレンドによる監視または警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
新たに設置した地下水観測孔G-1において、3月28日に初めて採取した地下水のトリチウムの分析結果は、検出限界値未満(検出限界値:120Bq/L)であった。その他の分析結果については、前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。今後も監視を継続していく。
1~4号機タービン建屋東側の状況
新規事項なし
1~4号機サブドレン観測井の状況
新規事項なし
※1~4号機建屋に隣接している井戸(サブドレンピット)の浄化試験をした結果、ピット内の溜まり水から放射性物質が検出されており、その流入経路としてフォールアウトの可能性があることから、新たに1~4号機建屋周辺に観測井を設置し、フォールアウトの影響について確認することとしている。
地下貯水槽の状況
サンプリング結果について記載
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年3月30日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。