2月19日深夜発見された、H6エリアのタンクから漏えいした水の分析結果が報告されています。堰近傍における漏えい水(北側)からは、240,000,000 Bq/Lの全ベータが検出されました。
1リットルあたり「2億4000万ベクレル」です。
この漏えい事故の続報も含め、2月21日に公表された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」をチェックします。
冒頭特記事項:H6エリアでの汚染水漏えい
状況や原因についての新規事項はなく、漏えい水および堰内水の分析結果を報告。
H6エリアタンク漏えい水および堰内水の分析結果は以下のとおり。
H6エリアタンク雨樋水(2月20日採取)
・セシウム134:3,800 Bq/L
・セシウム137:9,300 Bq/L
・コバルト 60:1,800 Bq/L
・マンガン 54:1,300 Bq/L
・アンチモン125:41,000 Bq/L
・全ベータ:230,000,000 Bq/L
H6エリア堰内水(2月20日採取)
・セシウム134:42 Bq/L
・セシウム137:130 Bq/L
・コバルト 60:35 Bq/L
・マンガン 54:22 Bq/L
・アンチモン125:620 Bq/L
・全ベータ:3,000,000 Bq/L
H6エリアタンクの堰外へ流れた漏えい水の分析結果は以下のとおり。
H6タンクエリア堰近傍における漏えい水(北側)(2月20日採取)
・セシウム134:4,200 Bq/L
・セシウム137:7,300 Bq/L
・コバルト 60:2,900 Bq/L
・マンガン 54:検出限界値未満
・アンチモン125:41,000 Bq/L
・全ベータ:240,000,000 Bq/L
H6タンクエリア堰近傍における漏えい水(南側)(2月20日採取)
・セシウム134:検出限界値未満
・セシウム137:3,200 Bq/L
・コバルト 60:1,500 Bq/L
・マンガン 54:検出限界値未満
・アンチモン125:34,000 Bq/L
・全ベータ:140,000,000 Bq/L
淡水化装置(蒸発濃縮)エリアにおける漏えい水(2月20日採取)
・セシウム134:検出限界値未満
・セシウム137:1,200 Bq/L
・コバルト 60:700 Bq/L
・マンガン 54:検出限界値未満
・アンチモン125:22,000 Bq/L
・全ベータ: 65,000,000 Bq/L
(参考)淡水化処理装置濃縮水(1月14日採取)
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:1,000 Bq/L)
・セシウム137:2,600 Bq/L
・コバルト 60:3,400 Bq/L
・マンガン 54:検出限界値未満(検出限界値:450 Bq/L)
・アンチモン125:18,000 Bq/L
・全ベータ:55,000,000 Bq/L
★ 参考として掲載されている「淡水化処理装置」の「濃縮水」は、ろ過式の装置で淡水と汚染水を分けた後、さらに濃縮された液体です。放射性物質がきわめて高い濃度にまで濃縮されたものの数値よりもはるかに高いベクレルが検出されたのは驚きです。
サンプルをとった場所によって、濃度に大きな差がみられるのは、どう説明すればよいのでしょう。
それぞれの場所にすでに雨水などの水、もしくは何らかの理由ですでに漏えいしていた汚染水があり、そこに新たに高濃度汚染水が入ったため、もともとそこにあった液体とのブレンド加減でこのようなばらつきが生じたということなのでしょうか。
◆前日分の報道配布資料(下記のリンク)には、タンク配置の地図やタンク構造のイラストも掲載されています。
◆21日分の報道配布資料では考えられる原因、タンク内の水位変化、タンクの配置、弁の写真、今後の予定について比較的詳しく記載されています。
配布資料は、漏れたとされる約100トンのうち約36トンを回収したと伝えています。
1号機~6号機
新規事項の記載なし。
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆2号機
1号機と同じ4項目のみ。
タービン建屋の高濃度滞留水を2号機タービン建屋から3号機タービン建屋へバケツリレー的に移送する作業は停止中のようです。
◆3号機
1号機と同じ4項目に加えて、
・3号機タービン建屋→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年1月24日午後2時37分~)
バケツリレーの後半部分は動き続けています。
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
★ 昨日インシデントが報告された「2号機原子炉圧力容器温度計」が機能しない件、5号機タービン建屋地下1階にある漏えい検知器で警報が発せられた件についても続報はありません。
共用プール・水処理設備および貯蔵設備の状況
新規事項なし。
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
H4エリアタンクおよび周辺排水路の状況
引き続きタンクの監視と、タンク周辺のサンプリングを実施していると記載。新規事項としてパトロール結果とサンプリング実績が示された。
<最新のパトロール結果>
平成26年2月20日のパトロールにおいて新たな高線量当量率箇所(β+γ線(70μm線量当量率))は確認されていない。また、堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
※H4エリアIグループNo.5タンクからの漏えいを受け、福島第一南放水口付近、福島第一構内排水路、H4エリアタンク周辺および地下水バイパス揚水井No.5~12のサンプリングを継続実施中。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側の状況
原子力発電所で海に面したエリアの状況です。地下水のくみ上げとサンプリングによる監視が行われており、新規事項としては最新のサンプリングについて記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
地下貯水槽の状況
新規事項としてサンプリング実績を記載。
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年2月21日分の変更箇所についてピックアップしました。
構成●井上良太
「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」の一覧ページ。過去の「日報」との比較に役立ちます。