石巻・川開き祭りのパレード会場を、金華山神社の幟とともに龍が行く。
明治時代の神仏分離令で途絶えていたものが、昭和58年に海中から「八大龍王神」の石碑が発見されたことから復興されたありがたい龍(蛇)踊りだ。
ドン、ゴーン、ドン、ゴーン、ピョ~…
太鼓や銅鑼の音に交じって、時折聞きなれない音が聞こえてくるのは、龍声笛と呼ばれるラッパとか。演舞の舞台となる木造タイル張り3階建ての旧・観慶丸本店前交差点の雰囲気と相まって、ここがどこなのか、一瞬気が遠くなりそうなエキゾチックな雰囲気だ。
20人の蛇衆に捧げられた全長20m、重さ100㎏の巨大な龍が演舞会場の入っていく。
神前に礼を行った後、俄かに躍り出す龍。爆竹が鳴り響く。
金の玉を追い、輪を描いて走りまわる龍。上空へあるいは地面すれすれに踊り、自らの胴体の下をくぐり抜けていく。エキゾチックな音、爆竹、そして大きくて鋭い龍の瞳。人垣をなした人々は不思議な世界に吸い込まれた。
龍の踊りは2幕で舞われた。金の玉を追いに追い、会場をぐるぐる回りに回った末、お神酒に酔ってとぐろを巻いて寝入るまでが1幕目。続いて、爆竹の音に目覚めた龍が最後には金の玉を奪い取るまでが2幕目。
龍を支える棒を担ぎ、走り回る蛇衆の汗が飛び散るころ、激しい龍の舞いが終了した。と、その時、踊りに合わせ爆竹を鳴らしてきた男性が、両手を大きく振りまわて、人垣に向かってアンコールを呼びかける。興奮冷めやらぬ観衆がいっせいに拍手する。すると、人垣の外にあった龍が再び観衆の前に姿を現すのだ。
アンコールは2回まで催された。2回のアンコール公演を終えた龍は、蛇衆とともに観衆に取り囲まれた。
巳年に例大祭が行われる金華山に奉納されてきた龍(蛇)の舞いだ。ご利益がないはずがない。龍の頭や体をさわる人たちに混ざって、もちろん自分も龍の鼻先に触らせてもらったのだった。
そうそう、金華山について地元ではこんな言い伝えが信じられている。
大晦日の深夜から船に乗り、二年参りを三年続けて行えば大金持ちになれる。
ただし、海も荒れる時期なので、そう簡単には三年連続は成し遂げられないとか。
たしかに「三年連続やったよ」って人にはまだ会ったことはないなぁ。
金華山の「龍(蛇)踊り」は毎年7月の最終土・日曜日に奉納されるとか。
今年は7月27日・28日に金華山の特設会場で舞われたらしい。八大龍王に奉納した直後に海を渡って石巻にやってきた「龍(蛇)踊り」。
12年に一度の例大祭が行われた今年だから、きっとご利益も大きかったかな?
(井上良太)