タクヤ代表はホスト界のプレイングマネージャー 【噂のホストNo.1】その10

 ホストクラブとは男性従業員が女性客の隣に座って接待をする飲食店。主役はあくまでもお客様である女性です。ホストは女性を良い気分にさせて喜ばせるのがお仕事です。「イケメン!色恋トーク!枕営業!自分の持つ武器を駆使して女性を満足させてみろ!」という成果主義の特殊な世界。そんなファンタジーワールドに迷い込んだ僕のホスト体験記を告白します。

タクヤ代表はホストクラブの王子様

ホストクラブにも会社組織と同じように全体を取りまとめる管理者がいます。会社では課長とか部長という名前が付けられていますが、僕がいたホストクラブにはタクヤ代表と呼ばれるリーダーが店を統括していました。売上がナンバー1だから代表という訳ではなく、社長と一緒にクラブを創立した取締役の1人なのです。

年齢は40歳でホストのキャリアとしては最長老の部類に入るものの、ルックスは『TM NETWORK』の宇都宮隆(例えは古いけど)似の超イケメンで長髪にロックの系の服を身にまとうスーパーカリスマホストでした。幹部ホストからは『タクヤ代表』または『王子』と呼ばれて皆に尊敬される存在でした。

代表は太客をどこから連れてくるのか?

タクヤ代表の凄いところは絶対に女性客を切らさないことです。来店する度に新しい指名客を連れてくるので売上が落ちることがありません。常連客は金持ちの太客ばかりで、月に何百万もの金をタクヤ代表に落としていくのだから信じられません。指名客は資産家のお嬢さんとか、社長令嬢とかVIPクラスの人脈だと思われます。そうでなければホストに通い詰める金なんて出てこないでしょうからね!

ホストクラブに来る女性客はキャバクラ嬢だったり、風俗嬢だったり、派手なギャル系の女の子がほとんどですが、タクヤ代表が連れてくる女性客は夜の世界とは縁の無さそうな人達ばかりです。パーカーにジーンズというラフな服装でくる女の子や、タイトスカートにカーディガンを羽織った清楚で主婦のような女性など、おおよそホストクラブには似つかわしくないスタイルの女性なのです。

俺は誰ともやっていない!S○Xやっていない持論

「あんな人達どこから連れ来るんだろう?」「どんな方法で同伴まで持ち込むのかな?」新人ホストの間では様々な憶測が飛び交いました。しかし、真実は謎に包まれています。タクヤ代表は指名客と同伴で入店してくるので、女性客とプラベートでの付き合いもあるはずです。となれば枕営業もする可能性が高いので肉体関係を持っているはず???

「俺はやってない!」「やっててもやってないって言えば済むんだから!」

「やらない、してないを突き通す!それで無問題!」

というのが代表の口癖でした。タクヤ代表が多くの指名客を抱えていることは、同伴してる女性客も知っているはずです。それでも女性がタクヤ代表を好きでいられるのは「俺はやっていない!君だけを愛している!」という大嘘を死ぬまで突き通せるテクニックと度胸の賜物だと思います。

新人ホストにマナーを教えるスーパーバイザー

ヘルプの仕事は客のお酒を作ったり、タバコの火をつけたり、グラスの水滴を拭いたりする黒子役に徹するのが普通です。しかし、タクヤ代表のヘルプに付いたときは少し違います。最初に「今月から新人として入ってくれた○○くん」とお客に丁寧に紹介してくれます。僕が入ったときは「B'zの歌マネが得意なイナバくん」と紹介され、「お前は歌も上手いし、頑張れはモテるよ!」と有り難いアドバイスをいただきました。「でも、君は下ネタが多い。そういうの嫌いな子もいるから気をつけて」とダメ出しもしてくれます。

普通のホストは指名客を相手にするだけでも精一杯なのに、タクヤ代表は客と話す時間よりもヘルプと話す方が長いという特殊な人でした。ヘルプにツッコミを入れながら笑いを取って場を盛り上げ、尚且つテーブルマナーの指導までしてしまう偉大な人です。プレイヤーでありながら、新人の教育までこなすタクヤ代表に僕は惚れました!