礼文島と11段ソフト【島と○○】

 「イレブンソフト」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。なんだか、TVゲームのメーカーみたいな言葉ですが、そうではありません。なんでも北海道・礼文島の名物らしいのです。

「せっかく礼文に行くんだったら食べておいで。」

 この言葉を聞くだけだと、「イレブン」と「礼文」が掛かっているのがわかります。それはわかるのですが、果たしていったい何なのか。僕は礼文島に行くと決まったとき、島に詳しい知人に聞きましたが、教えてもらえませんでした。ただ一言「せっかく礼文に行くんだったら食べておいで。」とのこと。いったいなんなのでしょうか。

 訪れた礼文島では名物宿である桃岩荘に泊まりました。さっそく僕は周りの人に聞きましたが、返ってくる答えは「知らない」「わからない」。もちろん観光パンフレットにも載っていませんでした。結局わからずじまいで、謎だけが積もったまま、島を後にしました。 そして帰りの船のなか、島で知り合った常連の方と話しているとき、ようやく手がかりを掴みます。

 「あぁ!それってもしかして11段ソフトのことじゃないかな!」 11段ソフト?

 「うん、でかい11段のソフトクリーム。」 えぇー!!

 なんと11段という高さに巻かれたソフトクリームのことだったようです。帰りの船で知ってしまった「イレブンソフト」の正体。離れゆく礼文島を眺めながら、「食べたかった・・・」と落胆したものです。またいつか訪れることを願って、このソフトクリームについてもう少し調べたいと思います。

礼文島・香深港を離れるフェリー。「11段のソフトクリーム」食べたかった・・・。

11段も巻けるの?

 雑誌や口コミを調べたところ、これは礼文島の食堂・喫茶「さざ波」にて提供されているそうです。どうやら「11段ソフト」「イレブンソフト」という呼ばれ方が一般的で、知る人ぞ知る名物となっているようです。 しかし、ここで疑問がわきます。僕は飲食店でのアルバイトのなかでソフトクリームを巻いたことがありますが、11段なんてなかなかできる芸当ではないのです。巻いているうちに下部が重みでひしゃげてしまい、安定感を失ってしまうはずです。あれではいかに上手く巻けたところで7~8段が精いっぱい。そこから11段までいけるならば達人級ですが、今度は間違いなくお客さんが上手に食べられないはずです。

 が、これについても答えがありました。口コミをまとめると、こういうことだそうです。 ・まず「ソフトクリームが少しかため。いわゆるアイスクリンに近い」らしい。 

 ・そして「コーンが一般的なものよりもでかい。」らしい。  ・さらには「スタンド付きで出されるため、それで安定感を保っている」そうな。

こうすることで、驚異の11段巻きを実現し、訪れる観光客を楽しませているようです。なるほど、理屈だけ聞けば納得してしまいそう。ぜひ実物を見てみたいところです。

11段を上回る13段もあるらしい

 さて、この「イレブンソフト」を提供している食堂・喫茶「さざ波」ですが、1961年(昭和36年)に誕生した、礼文島初の喫茶店だそう。同時に民宿も経営しているようです。「イレブンソフト」がいつ登場したのかはわかりませんが、「1990年頃に食べた!」という口コミもあったので、おそらく、その頃にはこの遊び心に溢れたソフトクリームが誕生していたと見て良いでしょう。

 さらに気になったのは、11段を上回る13段があるらしいとのこと。たしかに、11段ができるなら、もういっそ何段巻けるか気になるところですが。。 しかし、このインパクトが良いですね。店主はけっこう茶目っ気のある人なのでしょうか。ここまでくると、高さはどれほどなのでしょうか。それはわかりませんが、食べられる季節はやはり夏。猛スピードで食べなきゃ追いつかないのでは?と、つい心配になります。

 ソフトクリーム自体はどこでも食べられるものですが、こうした遊び心がなんだか楽しいですね。そしてそれが、少なくとも20年近く続いているわけですから、知る人ぞ知る商品として、それだけ親しまれているということでしょう。素敵です。

 礼文島の隠れた名物「11段ソフト」(と、その仲間たち)。また礼文島を訪れたときは、話のネタに食べたいところです。