西表島温泉、閉鎖。

日本最西端、最南端の温泉

 西表島に温泉があったのはご存知でしょうか。 西表島・・・、沖縄県八重山郡竹富町に位置する南の島で、全国の空港から那覇、石垣島と経由し、高速船でようやくたどり着きます。お金と時間のかかる島なのです。いわゆる亜熱帯で、年間の平均気温も23度を超すまさに南国。島の90%以上がジャングルに覆われており、貴重な動植物の宝庫としても知られています。

実は賛否両論の存在

 「亜熱帯の島に温泉!?」 そう思う人もいるのではないでしょうか。僕もその一人でした。西表島と言えば、その恵まれた自然を楽しむためのジャングルトレッキングや、周辺の海を楽しむダイビングなどがさかん。そういう印象が強かったですし、事実その通りでした。どうしても常夏の島に温泉は不釣り合いにも思えます。

 そんな変わりダネの温泉は、「日本最西端」「日本最南端」の温泉としても、密かに知られていました。旅行会社のツアーで観光バスのルートに組まれていることが多かった印象ですが、それ以外の観光客にとっては賛否両論。僕は西表島に長期滞在していた時期がありましたが、だいたい観光客の意見は2通りでした。「海に浸かれば十分楽しめるのに、この暑い南の島であえて温泉に入らなくても・・・。」となるか、「せっかくこんな遠いとこまで来たんだし、ネタだと思って行ってみようよ!」となるか。基本的にこのどちらかです(笑)。うーん、どちらも一理ある。たしか入浴料も1,500円と高く、余計に観光客を悩ませる要因だったと記憶しています。 西表島はメインとなる集落がふたつ。北側の上原と南側の大原があり、西表島温泉はそのおよそ中間に位置していました。島内を走る路線バスで、集落(上原、大原)から30~40分。「西表島温泉(現・パイヌマヤリゾート)」という、名前そのままの停留所へ訪れた覚えがあります。

南国情緒があふれていた西表島温泉

「暑い」「熱い」

 僕の覚えている当時は2008年。入ってみると、建物自体はわりとどこにでもある温泉施設でした。規模で言うなら、街中の銭湯よりは大きく、大型の温泉リゾート施設よりは小さい、そんな印象です。内風呂からも外の景色が見え、西表島のジャングルが広がっていました。まずは身体を洗います。

 しかし、なんと言っても見どころは露天風呂です!温泉と言えば露天風呂。ちなみに、西表島温泉は露天風呂は水着着用の混浴のため、露天風呂に出る際は水着を着ます。だいたい、みんな海で遊んだままの水着を持っているのですが、たまに持っていない人もいて涙目・・・なんてもことも。注意が必要でした。 ちなみに露天風呂の名前は「やまねこの湯」。いいねぇ、さすが西表島。なんとも“ご当地感”のある名前じゃあないですか!それでは、その「やまねこの湯」へ―――

 「・・・暑い。」 そうです。なんか、暑かったです。でも、景色はなかなか面白かった!本州ではまず見かけないようなグネグネした木々。屋根も沖縄ならではの赤瓦で情緒たっぷりです。耳を澄ませば、聞こえてくる音も本州の温泉のそれとは違う、南国の生き物の鳴き声が。いやいや、沖縄では風呂に湯を溜めない家や民宿も多く、当時の僕もシャワーで身体を洗うだけ。風呂には久しくは言っていませんでした。だからこそ、この久しぶりの湯船を、南国の情緒を楽しんで、ゆったりとした、いや、湯ったりとした時間を・・・

 「・・・熱い。」 そうです。お湯も、なんか、熱かったです。見渡せば、みんな湯船に身体を浸けず、足湯状態でのんびりしています。ただ、上半身裸の状態でもやはり暑いと言えば暑い。結局長居できずに温泉からでた覚えがあります。

 とは言え、沖縄県内を見渡しても数えるほどしかないという温泉。日本最南端、日本最西端のこんな温泉があっても良いじゃないか。結果的には楽しめた温泉だったのですが・・・。

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 2012年10月31日。西表島温泉は閉鎖となりました。「源泉水の確保が困難になった」というのが理由だそうです。ただ、厳密には直前の10月19日にも臨時休業しており、その際は「レジオネラ属菌の数値が基準値を超えて検出されたため臨時休業。目途が立てば再開します。」と発表がなされていました。「源泉水の確保が困難」と言っていますが、どうも色々問題があったようです。渋い存在だったんですけど、いざ閉鎖となると寂しいもんですね・・・。 そう言えば、たしか100円で買った「西表島温泉」プリント入り温泉タオル、持ってたのですがいつの間にか消えちゃったなぁ。きちんと取っておけば良かった・・・。残念。