奇岩、絶壁、海底遺跡・・・神秘さをまとう国境の島
いつもと違う景色、いつもと違う空気。深い自然に青い海。暖かい気候はまさに南国!!那覇、もしくは石垣島を経由してようやくたどり着く、そこは日本で一番西の島。 ・・・だけど、なんだか今まで見てきた沖縄とは少し違う。起伏の多い地形も、三線の音色も、海の青さも、肌を撫でる風も。同じ沖縄でありながら、那覇のそれとも違えば、お隣・八重山諸島のそれとも少し違う。沖縄の中でも、時折「与那国だけは他の沖縄とは違う」「外国のような神秘さがある」と聞きます。実際そんな印象を受けました。
日本最西端の与那国島。波の荒い海に囲まれ、「渡ることが難しい」という意味からドナン(渡難)とも呼ばれます。八重山諸島と隣国・台湾のほぼ中間に位置。基本的には石垣島からのアクセスとなるのですが、その石垣島よりも台湾の方が7km近い、まさに国境の島です。天気が良ければ、日本最西端の碑から台湾が見えることも。 不思議な印象とその場所からも伝わるように、島の魅力は与那国島独特の秘境感。美しいサンゴに囲まれた平坦な島、エメラルドブルーの鮮やかな海、古民家群が織り成す柔らかな空気、お隣八重山諸島ではおなじみだった要素が与那国島にはありません。荒々しい崖や奇岩が目立ち、男性的とも言われる島の外見、詳細不明の海底遺跡が沈む濃紺の海、そこで泳ぐ魚たちのサイズも八重山の海より大きかったりします。沖縄のほかの島々とは違うこの様相が、人気のひとつなのです。
そのためか、全国各地からの移住や長期滞在が見られるのも印象的。沖縄全体に言えますが、特に与那国島は顕著だと感じるのは、やはり秘境感に魅せられるからでしょうか。
与那国島の見どころ
景色を楽しむ
東崎(あがりざき)(祖納)(場所)
西端の島の東端。太陽が上がることからあがりざきというのでしょうか。西には西崎(いりざき)があります。東崎には坂を上っていくため、丘の上というイメージがぴったり。周りに茂る木々も無く、晴れた日に訪れるととても開放的。風の気持ちいい場所です。展望台には休憩所と灯台があります。
東牧場(祖納)(場所)
ヨナグニウマや牛が放牧されている牧場。海風に当たりながら草を食む様子が見られます。相手は温厚な馬と牛ですが、そんな動物たちと当たり前のように近づける場所が他にいくらあるでしょうか。これくらいの距離感が動物と人間にとっては自然なのかもと思わされます。与那国島ではまるでサファリパークのように、動物が車道を横切ることもしばしば。安全に。
ダティクチディ(祖納)(場所)
東牧場内にあり、八重山諸島を中心に18か所点在する遠見台(火番盛)のひとつ。こちらも他と同じく、鎖国時代の異国船の監視に役立てられたと言われています。ちなみに「ダティク」とはこの付近の地名・屋手久のこと、「チディ」とは頂上を意味します。
サンニヌ台(祖納)(場所)
軍艦岩、立神岩など奇岩が目立つ島の南東部。こちらはむき出しの岩々が波に浸食され、まるで波で岩に線を引いたかのよう。岩は全体的に平たく、寝転がっても痛くなさそうなほどです。しかし、柵より先は急な絶壁となっていて危険なので注意。
立神岩(祖納)(場所)
サンニヌ台から南に見える、海から真上に突き出た奇岩です。別名はトゥンガン。その形から子宝祈願に訪れる人もいるのだとか・・・。与那国島にまつわる伝説で、この岩に登った若者の話があります。鳥の卵を取るために岩に登った2人の男がいましたが、その高さゆえに降りられなくなってしまったとか。2人のうちの1人は、足を滑らせて転落死。もう一人も恐怖に襲われます。あまりの恐怖から神様に祈りをささげると、気が付いた時には陸地に戻っていた・・・という話。
比川浜(比川)(場所)
横長の島の南部、人口の少ない小さな集落・比川ですが、そこにある浜は与那国島では最大です。広がる砂浜はまるで砂漠のようで、少しだけ生えている草花や奥に見える青の海が、オアシスのように思えてしまいます。湾になっているため、波は比較的穏やか。海水浴やキャンプには最適な浜でシャワー・トイレ・売店があります。
Dr.コトー診療所ロケ地(比川)(場所)
2005年にフジテレビ系列で放映されたドラマ『Dr.コト―診療所』。その作中にて「志木那島診療所」として登場した架空の診療所が比川浜の近くにあります。島内は至る所が舞台となっていますが、一番の人気はやはりこのメインの診療所。中は見学可能で、撮影当時のままのセットがそのまま見られます。診察室や器具や薬品など、あまり注目されないところまで、ドラマの世界観を重視した気配りが行き届いていて驚かされます。
久部良割(久部良)(場所)
その美しい岩礁や海が名勝地として知られているのが久部良割(くぶらばり)です。1974年(昭和49年)の4月に沖縄県の指定名勝となりました。今では万座毛(沖縄本島)に匹敵するといわれるほどの景色を楽しむ場所となりましたが、かつてこの島でまかり通っていた悲しい伝説を今に伝える場所でもあります。 伝説によれば、かつての与那国島や八重山の島々には重い人頭税が課せられていたといいます。人頭税とは住民一人一人に課せられた平等な納税義務。しかし、この平等が問題で、体の不自由な人々や生産能力の乏しい人らにも平等に課税されました。それらは琉球王府を経て薩摩藩に納められますが、与那国島にとっては生産力に対して税(人口)が重すぎました。
そこで導入されたのが役人らによる人減らし政策。この久部良割では3m程度の幅の割れ目があり、役人らが妊婦を集めて強制的に岩と岩の間を飛び越えさせたのです。もちろん飛べるか飛べないかは人それぞれ。万一飛べたとしても母体に対する負担は計り知れません・・・。島にとっては苦肉の策と言えど、常軌を逸した政策がまかり通っていた歴史がありました。今なお堂々とそびえる岩がその悲劇を物語っています。妊婦だけを人減らしの対象にすることは不公平だということで、その後は島の男性を対象にした人舛田(とぅんぐだ)での政策も行われ、明治初期までその悲劇は続きました。
今ではそんな歴史を包むほどの美しさが際立つ久部良割ですが、近くには偲ぶ思いを込めた看板も立っています。
西崎、日本最西端の碑(久部良)(場所)
日本最西端の碑がある西崎です。晴れた日にははるか向こうに台湾が見えることもあります。普段過ごしている本土よりも外国が近いという不思議な感覚を感じてみてください。また、この場所に来たなら、他に誰か人がいないか見渡してみましょう。誰も居ないことが確認できれば、その瞬間「日本で一番西にいる人」になっちゃいます。
与那国島の情報あれこれ
【名 称】与那国島(よなぐにじま)
【所在地】
沖縄県八重山郡与那国町(地図)
【面 積】28.84㎢
【周 囲】
28.6km
遊 び
海水浴、ダイビング、シュノーケリング、遊覧船観光、釣り(トローリング、磯釣り)、乗馬体験、散策、クバの葉餅作り体験
食べる
カジキマグロ、黒糖郷土料理カジキ料理、味噌和え(グンナ=長命草、ミィンナなど)
変わりモノ
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お土産に
花酒「どなん」「与那国」「舞冨名」、黒糖、与那国織、草木染め