品種改良の末に誕生した人気者
安納芋(あんのういも)という野菜をご存知でしょうか。芋なので野菜と述べましたが、おやつとして見た方が適切なほど、非常に甘くておいしい、とろっとした食感のサツマイモの仲間です。 安納芋の生まれは鹿児島県の離島・種子島。元禄時代、食糧難に陥っていた島の飢餓対策として、琉球王国(当時)よりさつまいもを輸入し、日本ではじめてさつまいもの栽培に成功した場所です。日本国内にさつまいもが広まるきっかけとなりました。
広まったのはさつまいもですが、その後も島では色々な品種が試され、改良が重ねられました。その中でも安納地区の農家の間で絶賛されていた芋の噂が広まり、その苗が注目されます。鹿児島県農業試験場において、色・味・形の優れたものを選別し続け、それを次の種芋へ。こうして数年がかりで、味の優れた芋が誕生しました。それが「安納紅」「安納こがね」という品種です。1998年(平成10年)には、それらが総じて「安納芋」と命名され、今日に至るまでそのブランド価値を高め続けています。 インターネット等の発達で情報が早くなるにつれ、その存在が有名になったものの、それまでは農家の間で細々と作られていた贅沢品。近年ではその人気の高さに乗じて種子島以外でも安納芋が作られるようになりました。しかし、ミネラル豊富な海風にあたって育つ種子島産の安納芋こそが、やはり格別と言われています。
2つのポイント
1.甘さの秘訣!高い糖度
熱すると甘い蜜が溢れだします。食べ方としては単純明快な焼き芋が人気。その甘さは一口食べた瞬間、従来のさつまいものそれとは違うことが分かります!! その秘密は糖度※にあり。安納芋の糖度は、生の状態でおよそ16度前後と言われています。たとえば、みかんなどかんきつ類で10度前後、りんごやメロンで13~15度とされ、ぶどうがだいたい同じ糖度の16度前後と言われています。従って生の安納芋は、一般的な果物よりもやや高いというところでしょうか。
ところが、それを焼き芋として加熱すると、その糖度が急上昇。およそ40度前後にまで達する結果が出ています。単純に考えても他の果物の倍以上!!・・・ですから、その甘さに注目が集まるのも頷けます。実際に口にしてみると・・・。
※ 糖度とは
青果物やその加工品に含まれる砂糖分の含有の割合を示したもの。人間が感じる甘さは糖度だけで決定されるものでは無いので、万人が納得するような正確な結果が出るわけではありませんが、一般的には高ければ高いほど甘いという目安になり、甘さの指標として認知されています。
2.クリーミィな食感
さらに面白いのがそのクリーミィな食感です。普通、じゃがいもやさつまいもなど焼いた芋と言えば、割った瞬間に湯気が立ちこめ、ホクホクという擬音がぴったりハマる、口に入れるとホロホロ崩れていく・・・と、言ったところでしょう。
しかし安納芋は、割ってしっとり、食べてとろり・・・なんともクリーミィなのです。非常に柔らかいのでデザートにも使いやすく、一度焼いてしまえば、冷やしてもクリーミィ。プリンやケーキに加工するもよし、そのままバニラアイスを添えて食べるも良し、このしっとり具合は楽しみたいところです。
※ 甘さの割にはカロリーが低い点も人気なようです。また、満腹中枢を刺激するポテトプロテインという成分が含まれるようですが、それでも食べ過ぎには注意。
かんたんレシピ
焼き芋
湿らせたキッチンペーパーで安納芋を包み、さらにその上からアルミホイルで包み、オーブントースターで焼きます。約60~80分程度。長くなりますが、気長にじっくり焼くのがコツです。
スイートポテト
ふかして潰した状態の安納芋にバター、塩(少量)を加え、成型してオーブントースターへ。冷やしても美味しいおやつになります。
ケーキ
ホットケーキミックスをつくる手順に、「焼く、ふかす等で加熱した安納芋(皮は取る)」と砂糖(好みに応じて適量)を追加。そのまま焼けば、安納芋のほのかな香りと甘みを楽しめるケーキに変わります。