豪華絢爛!遊覧飛行
「東京 遊覧飛行」で検索してみた。辿り着いたホームページは見るからに豪華絢爛だ。なんとなく、なんとなくだが、商社や外資金融に勤める高給取り一家が「家族サービスに」と利用したり、気合入りまくりのカップルがようやくプロポーズでもしようかという時に利用するような、そんなイメージ(どんなだ?)があった。実際に見てみると、やはりそう安くはない。高級ホテルとの食事を組み合わせたり、記念日の家族、カップルには記念写真や夜景ビデオなど至れり尽くせりのサービスを組み合わせている。こうなると1人当たり安くても3万円台、高ければ5~7万円が相場だ。 つまるところ、「とにかく豪華」の一言である。そして同時に特別な日にお金をかけて乗るもの、そんなイメージが出来上がった。
ヘリコプターは怖い?
さて、なぜそんなことを調べたのかというと、筆者は先日参加した「島じまん2012」というイベントのお楽しみ抽選会において、偶然クイズに正解し、【東京遊覧飛行】が当選してしまったのだ。 伊豆諸島の島々を移動するとき、船のほか、就航の確実性がより高いヘリコプターがある。これは、東邦航空が運航する東京あいらんどシャトルというもので、船で移動する何倍もの速さで島々を結んでくれるのだ。そんな島のインフラに欠かせない存在の東邦航空の特別企画、それが【東京遊覧飛行】だったのだ。
さて、20数年と生きてきて、ヘリコプターに乗ったことが無いのはもちろん、飛行機も両手の指に納まる程度にしか乗った経験のない筆者。旅行好きを自称するにしてはあまりに少ないと言えよう。 だって怖いんやもん。
例えば高層ビルや崖の上などは平気だ。なぜなら足場がしっかりしているからだ。だが、文系脳の筆者には、飛行機が飛ぶメカニズムなど理解できないのだ。そのため、もっぱら旅行の移動手段は電車、バス、船である。「実は飛行機のほうが事故の可能性は低い」なんてよく言われることも知っているし、頭では理解できる。ただ、それでも飛行機は苦手なのだ。 ただ今回はおそらく、またとあるかもわからない貴重な機会である。友人を道連れにし、意を決して東邦航空のある東京ヘリポートへと向かった。
1時間のフライトで87万円になります。余談ですけど。
東京ヘリポートへは、JR新木場駅からバスで5~7分程度。島にあるような、”使わないときは空き地同然”のヘリポートなら何度も出入りしたことがあるが、ヘリコプターが何台と並ぶ、いかにも都会的なヘリポートはもちろん初めてだった。「こちらですよ」と案内され、待機室へ。待機室からはヘリコプターの整備が見えた。
案内を受けると、そのまま機体のあるヘリポートへと向かった。当然と言えば当然だが、飛行機のように改札があり、荷物チェックを行い、搭乗ゲートから云々・・・ではない。記念撮影を済ませたあと、扉の開いたヘリコプターにそのまま乗り込み、シートベルトを締めるだけでOK。飛行機が苦手な筆者にとって、ここまでは淡々としすぎていて、飛行機のような「これから飛ぶぞ」という、じわじわくる感覚はなかった。
「あ、余談ですけど、これ1機1時間フライトさせると87万かかるんです。」
案内役の社員さんがぼボソッとそんなことを仰った。へぇ!今回のフライトは15分。・・・ってことは、今回のフライトは、
単純計算で15分あたり・・・【87万0000円÷4=21万7500円】!!
乗客8人だから・・・【21万7500円÷8=2万7187円50銭】!!!
つまり・・・
A.ひとりあたり 2万7187円50銭 のフライト!!
結論 : ひぇー (文系だがこういう計算は早い)
ゆっくりとプロペラが回り始めた。
ゴーーーーーーーーーーーーーーーォンォンォンォンォンォン
グゥーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン フィィィィィーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
ヒューーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーン
何種類かに分けて音がだんだんと高くなり、車輪に従って機体が前へ進む。ここまでは飛行機と一緒だ。だが、そこでピタと止まる。そうしてプロペラが回り始めて4分ほどしたとき、年配のじいさんが椅子からゆっくりと立ち上がるような感じで、ふと機体が浮き上がった。それまで穏やかに揺れていた周囲の雑草が、急に激しく騒ぎだす。かと思えば、機体はそのまま勢いよく飛び始めた。
「おおおおおおおおおおおおおおおお」乗客8人。その全員が言葉にならない声をあげた。
飛びます。飛びます。
東京湾でボート遊びをしているカップルが何組かいる。そこまで確認できたが、機体はあっという間に東京のビル群の上空まで浮き上がり、人がみえないのはもちろん、建物もまるでフィギュアのように小さくなった。
たぶんあれは新宿駅。じゃあ、その横に見える緑の一帯は新宿御苑・・・。(?)あ、あれは東京ドーム。うーん、空から見ると東京駅と新宿駅ってわりと近い・・・。(!)不変のものさえ、角度が違えば新鮮で、いちいち驚いてしまう。東京ドーム。巨人の試合を見てると狭い球場の印象があるけど(ホームランが多いので)、やはりさすがの存在感。「東京ドーム○個分」と言われたらこの日のことを思い出そう。