木漏れ日に咲く幽玄の花

陸前高田市の本丸公園は、7年前の震災のときに多くの人が避難してきた場所だ。本丸の一角にある天照御祖神社への参道は、高台への避難路にもなっている。

急な石段を登っていくと、暗い杉木立のなかに一筋、ひかりが差し込んでいて、そこにこの花が咲いていた。

物思いに耽っているかのようなその姿にひかれた。

花の名はツルニチニチソウ(蔓日日草)という。成長するとツルになって毎日花を咲かせるという。冬にも葉が枯れないので、ヨーロッパでは不死の力を持っているとか、繁栄のシンボルとされているらしい。おそらく同じ理由から、魔女の花という別名もあるらしい。ジャン・ジャック・ルソーが恋人との楽しかった日々を懐かしんだというエピソードから「優しい思い出」とか「永遠の友情」といった花言葉もあるらしい。園芸種としては葉に白っぽい斑の入ったフクリンツルニチニチソウが好まれて育てられているのだという。

しかし、木漏れ日のなかに咲くこの花は、他は知らないが、少なくともこの一本だけに限っては、もっと凛としたものを発している。

「無事是貴人」の禅語が浮かんだ。花は花として咲き、花として散ってゆくのではあるが。人の思いや見立てなど関係ないよと、ただそこに咲いているのだが。

そこに咲いているだけで、これほどまでに気高いということなのか。