以前勤めていた会社を辞める時、とても優秀な同僚が私にそっと近づいてきて、こうささやきました。
「ラーメン屋やるんでしょ?」
確かに私はラーメン好きですがラーメン屋さんをやりたいなんて一度も思ったことはありません。なのになぜあのキレ者の彼が自信たっぷりにこう思ったのか。いまだに謎です(笑)。
でもきょうは、仮に私が彼の言う通りラーメン屋さんを始めたとして1日にどれぐらいお客さんが来れば合格なのか、それを大ざっぱに調べてみました。
近隣のお店を参考に値段を「1杯=600円」とします。まず考えたいのは「1杯の原価」です。純粋な材料費だけを原価とすると、ラーメンの原価率はだいたい「30%~40%前後」が多いようです。
つまり600円のラーメンをつくるためのスープや麺、チャーシュー、メンマ、ネギなど原材料費を全部足すと、原価率が「30%なら180円」「40%なら240円」ということになります。そうなると1杯あたりの利益はそれぞれ「420円」と「360円」。だいぶ違ってきますね。
安くてウマい!は可能なのか
原価率が高い方がいいのか、低い方がいいのか。これは単純に決められることではありません。
「材料をケチっているので1杯の利益は大きいが、まずい=客が来ない」のも困りますし「良い材料を使っていて美味いが、高い=客が来ない」のも儲かりません。その「加減」が肝心なわけです。
仮にその間をとって「原価率35%」のラーメンを作るとします。1杯の原価が210円なので利益は「1杯で390円」になります。これを1日に何杯売ればいいのでしょうか。
原価以外のコスト
関東近郊の中規模な都市だと、飲食店用の店舗家賃相場は「1坪=1万円」を少し超える程度だそうです。もしも「10坪・12席の店舗」を借りたとすれば、家賃が月に10万円です。
さらにこの規模の店舗にかかる他の必要経費の平均的な月額をこれまた大ざっぱに挙げていくと
・家賃…10万円
・ガス代…6万円(とんこつスープだと、もっと高いそうです)
・水道代…7,500円
・電気代…4万5,000円
・電話・ネット代…7,500円
・廃棄物処理代…2万円
・消耗品代…1万5,000円(割りばし、洗剤、調味料、ティッシュ、足ふきマットレンタルなど)
ぐらいだそうです。合計で25万5,000円になります。
そして生活費
この25万5,000円に「生活に必要な金額」を上乗せしたものを、1杯の利益390円の積み重ねでペイできれば合格と言うことになりますね。
仮に30万円の生活費が欲しいとすると、欲しい利益は55万5,000円。1ヶ月に25日営業するとして、1日あたり何杯のラーメンを売らないといけないのか。
55万5,000円÷25日÷390円=約57。つまり「1日に57杯」ということになります。
仮にランチが満席になったとして12席×2回転ぐらいでしょうか?さらに夕方から夜にかけて満席で3回転したとしても、やっと合計60杯です。それって「けっこう繁盛してる状態」だと思いませんか?
しかもこれは「人件費はゼロ」、つまり店主ひとりで切り盛りした場合です。人を雇えば人件費が発生します。さらに開店のための創業費用もまったく計算に入れていませんから、実際にはもっともっとラーメンを売らないといけません。
プロってすごい
そもそも自分が「これだ!」と思えるラーメンが作れる保証なんてありません。仮に作れたとしても、朝からスープの仕込みをして、営業して、その後も片づけや掃除。売り上げの集計もある。しかも、病気で休んだりしたら収入はゼロ。大変です。
私が住んでいるのは田舎の小都市ですが、小さな店から始まって立派な一軒家の店を構えたり、多店舗展開するほど成長したラーメン屋さんが近隣にいくつもあります。みんなすごいなあと尊敬してしまいます。
私なんか自分が作ったサッポロ一番みそラーメンを娘が喜んで食べているぐらいでじゅうぶん満足なんです。美味しいラーメンはありがたく、プロの店でいただきます(*^^*)