国道を走っている時にはまったく気づかなかった。対岸の狭い道路を走りながら、カーブの向こうに何だか大きな人工物が倒れているのに気がついて、よく見てみるとそれはひっくり返った橋だった。
よくよく見てみると、国道の側に橋が掛かっていた土台の部分があった。ぱっと見には川岸に下りていく通路かなにかのようにも見えたが、たしかに橋の土台だった。
近づいて見ると、落ちた橋桁はかなりデカく見える。橋桁の幅からすると、それほど大規模な橋ではなかったようだが、それでも、通常あるべき姿ではなくひくり帰っている橋桁は大きく感じられた。
目を凝らすようにして見てようやく、対岸に橋の片われが落ちているのが分かった。橋は濁流に耐えられずにいくつかの部分に破壊されるようにして落ちたのだろう。橋の高さに達するほどの濁流、大量の木や土砂や岩が一緒になった濁流によって。
橋が掛かっていた場所には無造作に、ただ砂が盛り上げられているだけ。もともと通行量が少ない場所にあった橋だったからなのか、橋が落ちたことはみんなが知っているから危険はないということなのか。
落ちてひっくり返った橋桁の付け根には「日陰橋」と、橋の名を示す銘板が残っていた。
代わりに通れる道が確保できて生活や復旧工事に支障がなくなれば、その他の被害への対応は後回し。それが8カ月後の現状なのかもしれない。