ゴンゴン、ゴン、ゴンゴン……ここは気仙沼魚市場。市場の屋根の下に設えられた見学用の回廊を歩いていたら、聞いたことのないと不思議な音が鳴り響いた。
もう昼前で、接岸している船は1艘しかない。小走りでその船の前を目指す。
船の前には大きなステージのようなものが置かれていて、その両側には大型のカーボトラックが8台ほどもバックドアを開いて駐車中。船からクレーンのワイヤーが引き上げられると、周囲の人たちの視線がワイヤーの先に吊るされたものに集中していくのが分かる。
マグロだ!
遠くて種類まではよく分からないが、まるまると太った体型からしてメバチかあるいはクロマグロか。
船倉からクレーンで吊り上げられたマグロが、市場岸壁のステージに下ろされる。マグロ上陸(水揚げ)の瞬間だ。
マグロが上陸するや、たくさんの人たちがマグロにたかるように集まって、大きなマグロを手かぎに引っ掛けて、担当するトラックや大型の容器に放り込む。
ゴンゴン、ゴン、ゴンゴン……
信じられないような轟音は、カチカチの冷凍マグロがトラックの荷台に積み込まれる時に立てる音だった。
見学回廊の隣にはふと気づけば掃除の女性もやってきて、「いやあ、何の音かと思ったらマグロの水揚げだったのね。すごいねえ、私も地元だけど初めて見たよ」と話している。地元の人でもそんなに見ることのない景色なのか……
クレーンで引き上げられる冷凍マグロに熱い視線が注がれる静寂の時、そして水揚げ後すぐ市場に鳴り響く、とても食べ物が発する音とは思えぬマグロの轟音。迫力溢れるその音が、海と生きる気仙沼の活気の証であることは間違いない。
とても食べ物が発する音とは思えぬ、市場に響くマグロの音。迫力溢れるその音が、海と生きる気仙沼の活気の証であることは間違いない。
気仙沼観光の際には、魚市場の見学コースをお忘れなく。