4月11日(月曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている状況を考えます。
※ 情報を追加して更新します
地下水ドレンからタービン建屋への汚染地下水移送量(3月31日~4月6日)
グラフの左側は、かつては建屋への直接的な地下水流入量が多かったが、山側サブドレンを24時間稼働することで流入量を減らせたことを示している。目下の課題は「2015/10/26 海側遮水壁閉合」「2015/11/5~ 地下水ドレン汲み上げ開始」から右側、紫の折れ線で示された建屋への直接流入量を、黄色の折れ線が示す地下水ドレン等からの移送量が大きく上回ったことで、建屋への流入量の合計が必ずしも減少傾向とは判断できない点にある。
【注目点】事故原発構内海沿いの地下水ドレンで汲み上げたものの、汚染度が高い地下水は建屋地下に送られて汚染水とし処理に回される。3月31日から4月6日までの1週間で合計すると約1,415トン(改修ウェル・ウェルポイントでの汲み上げ分含む)の地下水が汚染水としてタービン建屋に移送されたことになる。
移送された量は4月4日を境に大きく増加している。4月4日には、事故原発から10kmのアメダス浪江観測点で、1日に22mmのまとまった降雨があった。移送量の増加との関連が考えられる。
降雨のなかった前週の移送量約は691トンだっわけだから、22mmの雨1回で移送量が倍増したことになる。この集計からは外れるが4月7日には30mmの降雨を記録している。次回の集計はどんな数値になるだろうか。
1~5号機
◎日報に新規事項の記載なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系停止中
・1号機ディーゼル発電機(B)室、1号機所内ボイラー室の滞留水を1号機タービン建屋地下へ断続的に移送実施中
・1号機原子炉建屋地下から集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中
◆2号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、2号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・2号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆3号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
・増設廃棄物地下貯蔵設備建屋の廃樹脂貯蔵タンクエリア、廃スラッジ貯蔵タンクエリアの滞留水を、3号機廃棄物処理建屋へ断続的に移送実施中
・FSTR建屋から3号機廃棄物処理建屋の滞留水移送については断続的に移送実施中
・3号機タービン建屋地下から集中廃棄物処理施設へ高濃度滞留水を断続的に移送実施中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・2014年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了
◆5号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
6号機 使用済み燃料プール冷却を切り替え(使用済燃料プール冷却系→残留熱除去系(A)系の非常時熱負荷モード)切替中の温度上昇は要注目
・6号機使用済燃料プール冷却系の除熱系統である6号機補機冷却海水系について、ストレーナ他点検のため、4月11日午前10時31分に、6号機使用済燃料プール冷却系を停止し、午前10時49分に残留熱除去系(A)系の非常時熱負荷モードを起動し、使用済燃料プール冷却を開始。6号機補機冷却海水系については、午前11時22分に停止。(停止予定期間4月11日から4月22日)
なお、切り替え前のプール水温度は21.8℃、切り替え後のプール水温度は22.0℃であり、運転上の制限値(65℃)以下となっている。
引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月11日
【解説】使用済み燃料プールの冷却には、本来用途の「使用済み燃料プール冷却系」の他に、緊急時に原子炉を冷却する「残留熱除去系」の能力で冷却を行う「非常時熱負荷モード」がある。使用済み燃料プール冷却系の一部である「補機冷却海水系」のストレーナ(濾過器)などの点検のため、燃料プールの冷却方法を残留熱除去系非常時熱負荷モードに切り替えた。
【疑問】プール水温度は切り替えの前後で0.2℃の上昇を記録しいているが、測定誤差なのかどうかは不明。切り替えには18分しか要していないので、仮にこのペースで温度上昇が続くと、11日間で176℃の温度上昇というとんでもない計算になる。まさにありえない話ではあるものの、事故原発では何が起きても不思議ではない。今後の温度上昇に注目したい。(東京電力の現場にはしっかり温度管理を実施してほしい)
共用プール
◎日報に新規事項の記載なし
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施
水処理設備および貯蔵設備 セシウム吸着装置を「停止中」
その他の項目に新規事項の記載なし
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・RO淡水化装置運転中
・多核種除去設備(ALPS)停止中
・増設多核種除去設備停止中
・高性能多核種除去設備停止中
・モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置停止中
【参考】4月8日に、運転停止していたため滞留水の水位が制限値を超えた第二セシウム吸着装置(サリー)があるのは「雑固体廃棄物減容処理建屋」。今回停止したセシウム吸着装置が設置されているのは、道路を隔てた「焼却工作建屋」。
サブドレン・地下水ドレン 一時貯水タンクAから海洋排水を実施。排出量は714トン
※サブドレン他水処理施設について、一時貯水タンクAの分析結果[採取日4月5日]について、運用目標値を満足していることを確認。4月10日午前10時7分より港湾内への排水を開始。なお、排水状況については、同日午前10時22分に漏えい等の異常がないことを確認。(既出)
その後、午後3時1分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。排水量は714m3。
引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月11日
地下水バイパス 海洋排出の準備進む(通算111回目)
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ2の分析結果[採取日3月30日]について、運用目標値を満足していることを確認。
引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月11日
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
4月10日のタンクエリアパトロールや汚染水タンク水位計による常時監視において、漏えい等の異常がないことを確認。
引用元:福島第一原子力発電所の状況について(日報)|福島原子力事故に関する更新|東京電力ホールディングス株式会社 2016年4月11日
◆H4エリア
◎日報に新規事項の記載なし