いわき市北部の四倉港。夏になると海水浴客で賑わってきたこの場所は、日の出の名所でもある。まだ風は冷たいが、夜明けの空の色があたたかく染みてくる。
いわきの空はなぜかとても美しい。いつ行っても見事な日の出を見せてくれる。ピンク色の雲がかかる姿もいいけれど、雲ひとつない茜色の朝焼けもいい。
震災後から整備が進められてきた四倉港には、大きなクレーン船も係留されている。震災で被害を受けた消波ブロックを引き揚げたり、新しいテトラポッド(商品名らしいけど)と積み重ねたり忙しいのだろう。朝日がのぼる前から、クレーン船からはエンジン音が聞こえていた。
クレーン船のまわりには古い消波ブロックが置かれている。痛々しいほど傷つき削れているのは、太平洋の荒波に削られたせいなのか、あるいは津波に翻弄されたからなのか。
震災の津波の後、四倉の浜辺にはテトラポッドが砂浜に埋もれていた。2012年には海辺の陸地はテトラポッドの製造場所になっていて、型から抜かれたばかりの新品のブロックが大量にストックされていたのを思い出す。
海中に埋もれた消波ブロックなどの撤去や、新たなブロックの設置作業はいまも続いているようだ。震災から5年。なかなかだ。なかなかに大変なことなのだ。
振り返ると陸地では防潮堤の建設も始まっている。
県漁連では四倉港の施設を震災前よりも充実したものにする考えだと聞いた。ほんの少し前まで津波で流された漁船が積み上げられていた場所が、今では復旧工事の最前線だ。
風が吹けば砂が舞う。浜辺の砂なのか工事現場の土埃なのか。
風がやんで日がのぼった。港に停泊している漁船も、新しく建てられた家も茜色に輝く。
漁船が停泊する港に朝の光が満ちていく光景は、とてものどかなものだ。のどかな景色の中で大きな変化が進んでいく。日の出の回数を積み重ねるのとともに、港は大きく変わっていく。
(つづく)