今年も残す所あとわずか。毎年この季節になるとその年の世相を表した漢字1文字が「今年の漢字」として選ばれています。
「今年の漢字」は、全国からの公募で一番多かった字が選ばれます。1995年から公益財団法人・日本漢字能力検定協会によって始められ、先日、2015年の漢字は「安」に決まりました。
海外の「今年の漢字」
「今年の漢字」の選定は、海外でも実施されていることをご存知ですか?
例えば中国では国内と海外において、それぞれ世相を表す漢字が選ばれており、2015年は国内漢字が「廉」、国際漢字「恐」となっています。
なんでも「廉」は、中国にはびこる役人等の汚職の浄化、政府に対しての信頼性向上の期待を反映し、「恐」は、頻発したテロなどを受けて、生命の尊重、平和へのあこがれを反映したものではないかとのことです。
台湾の今年の漢字は「換」です。選ばれた理由のひとつとして、「改革と改変が待たれる台湾社会には、古いものを新しいものに入れ換えることが必要だ」という思いがあるそうです。来月に行われる台湾の総統選を見越しての漢字であるという見方もあります。
「安」から思い浮かべることについて
今年の世相を表した漢字が決まったとき、みなさんは「安」という文字から何を思い浮かべましたか?日本漢字能力検定協会が公表した資料には、「応募者が『安』を選んだ理由の概要」として、次のように記載されていました。
「安」全保障関連法案の審議で、与野党が対立。採決に国民の関心が高まった年
・「安」倍政権の下、「安」保法案の採否をめぐり国論が二分。賛成派も反対派も国会周辺や各地でデモや集会を実施。
・戦後70 年の節目を迎え、これからの国の平「安」について皆が考えた。
世界で頻発するテロ事件や異常気象など、人々を不「安」にさせた年
・イスラム過激派組織による邦人人質事件、パリで起きた同時多発テロなど、世界中で人々の「安」全が脅かされる事態が続いた。
・地球規模の異常気象により世界各地で災害が起こるなど、人々を不「安」にさせた。
建築偽装問題やメーカーの不正が発覚し、暮らしの「安」全が揺らいだ。
“「安」心して下さい”のフレーズが流行するなど、人々が「安」心を求めた年
・マンションの杭打ちデータ流用に端を発した問題で、住環境に対する不信感や不「安」が募った。
・海外自動車メーカーの排ガス規制違反やワクチン製造にかかる不正など、暮らしに密着したものの「安」全性を揺るがす事件が続いた。
・『「安」心して下さい、穿いてますよ。』のフレーズでお笑いタレントが人気を博した。
私も最初は「応募者が『安』を選んだ理由の概要」と同様のことを考えました。しかし、その後にすぐに「安住」という言葉が思い浮かびました。
それは、今年、ニュースなどで度々シリア内戦とその影響で住み慣れた土地から逃げる人々を目にしたことにあります。
国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)のWEBサイトによると、今年7月時点でシリア内戦で国を追われた人は400万人以上、国内で避難している人は760万人いるそうです。国内外合わせて1,100万人以上という人数はシリアの全国民の約半数が難民であることを意味しています。
そして付け加えるならば、紛争や迫害から逃れて家を追われた人はシリアだけに限りません。UNHCRによると、世界中にいる難民は統計を取り始めてから最多となり、2014年末時点で5,950万人おり、今もなお急増しているそうです。シリア以外にも、アフガニスタンで259万人、ソマリアで111万人の難民が出ています。
難民とは異なりますが、日本でも東日本大震災の避難者が今年9月時点で20万人弱いるなど、災害等により、暮らし慣れた土地から余儀なく離れて生活をしている方々が多くいます。
難民問題などは今年だけに限ったことではありませんが、今年の漢字が「安」と知った時、シリア内戦のニュースなどと共に「安住」という言葉が思い浮かんだのです。
シリアにおける最新の情報を知るために検索サイトで、「シリア 難民」をキーワードに1年の期間設定で検索すると、次のWEBサイトがヒットしました。
同サイトの写真を見ていると、改めて故郷から逃れている方々が1日も早く安全な帰る家を取り戻してほしいと願わずにはいられません。迎える新しい年がいい年になりますように。