「人類で、いま地上にいないのは自分たち6人だけ」若田光一さんの言葉

油井亀美也宇宙飛行士の国際宇宙ステーション(ISS)を紹介する番組は、なかなか見応えのあるものだった。とくに、ISSへの物資を送る米ソの輸送用ロケットが連続して失敗した後、日本の「こうのとり」(HTV)での輸送に成功した話や、HTVをリリースする際の話は感動モノ。機械には心がある(作った人の思いが込められているという意味で)という言葉にはしびれた。

こうのとり5号機がキャプチャーされる瞬間 NASA/Scott Kelly

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しかし番組の中で最も深いなあと思ったのは、若田光一さんがISSの船長を務めた時のエピソードだ(油井さんの話ではなくてゴメン)。日本の宇宙飛行士が果たす役割について若田さんは、宇宙大国であるアメリカでもロシアでもない国だからこそうまくいくことがあると、次のようなエピソードを紹介した。

若田さんが船長を務めていた頃、米ソの関係は緊迫しつつあった。宇宙飛行士はそれぞれの国のミッションを負ってISSで勤務しているから、ISSの中でも、それぞれの国の立場や考えが話題になる。地上の対立を宇宙空間まで持ち込んでしまうようなこともあったかもしれない。そんな状況の中で若田船長はクルーみんなと食事をしながらこう言ったのだそうだ。

「人類で、いま地上にいないのは自分たち6人だけだ」

地上の対立を宇宙に持ち込むのはやめようというだけではなく、16カ国以上の協力の元で運営されているISSだからこそ、宇宙から平和の大切さを地球に向けて発信することができる。そんな積極的な平和のメッセージに聞こえた。

宇宙技術は軍事技術と表裏一体だ。マッハ20以上の速さで飛行しているISSにHTVをぴたりと並んで飛行させながらドッキングするという、油井さんが今回果たしたミッションも、見方を変えれば「日本は米ソに並ぶほどのロケット制御技術をもっている」つまり、大陸間弾道ミサイルで精密爆撃できることを示すものだ。世界には日本に対して警戒感を強めている国もあるかもしれない。

しかし、だからこそ、若田さんの言葉はさらに輝きを増す。軍事転用が可能な技術を駆使した宇宙ステーションから地上に届けられた平和のメッセージ。

その光が多くの人々に届けられることを期待する。