気温が下がり、過ごしやすくなる秋はトレッキングなどアウトドアでの活動に適した季節です。そこで、森や山など、陸上にいる危険な生物について、数回に分けてご紹介していきます。6回目の今日は「ツツガムシ」です。
ツツガムシについて
ツツガムシという虫をご存知でしょうか?野外で活動されることが多い方はすでに知っているかもしれませんが、注意が必要な生き物のひとつです。強力な毒を持っているわけではないのですが、リケッチアという病原体を保持している個体がおり、吸着されて感染すると最悪に死に至ることもあります。
ツツガムシは、ダニ目ツツガムシ科の総称であり、日本には120種以上います。このうち、リケッチアが感染して発症するツツガムシ病の危険性があるのは、主に「アカツツガムシ」、「フトゲツツガムシ」、「タテツツガムシ」などの種です。ただし、この3種でもリケッチアを保有しているのは約0.1~3%だけで、この限られた個体の幼虫に吸着された時にのみ感染の可能性があります。(※成虫は吸着しないために感染の心配はないとされています)
ツツガムシの体長は、成虫で4mm以下、幼虫でおよそ0.2~0.5mmで、ほぼ全国に生息しています。以前は山形や秋田、新潟県などの夏の河川敷で感染すると言われていましたが、戦後に新型のツツガムシ病が見つかり、今は北海道や沖縄などの一部の地域を除いて日本中にいるとされています。特に河川流域や山林、藪、草地などを好んで棲んでおり、春から初冬にかけて年間約500件ほどの被害が報告されています。
ツツガムシ病の症状について
ツツガムシの幼虫に吸着されて感染すると、5~14日間の潜伏期間を経て発症します。初期症状はまず最初に食欲不振、倦怠感があらわれます。次いで頭痛と寒気に襲われて39~40度の高熱がでるなど、風邪の症状と似ています。
発熱から2~5日経つと、直径2~3mm程度の赤い発疹がほぼ全身に現れ、刺された部位の近くのリンパ説がはれてきます。
刺し口には、まずはじめに紅色で隆起した小さな発疹ができます。その後、水疱となり、次いでその中に膿がたまります。発熱から6日目頃になると、中央部は黒いかさぶた状になり、その周囲は赤くなります。刺し口の跡は2週間ほど残ると言われています。
ワクチンがないため、予防が重要です。
ツツガムシ病にはワクチンがないため、予防が重要になります。感染を防ぐためには、「肌を露出しない服装の着用(※手袋や帽子も忘れずに)」、「草むらなど、ツツガムシが生息している場所への立ち入りを極力避ける」、「ダニ忌避剤、防虫剤の使用」などがあります。
また、帰宅後、すぐに入浴してツツガムシを洗い流すことも有効です。ツツガムシは身体に取り付いてもすぐに吸着するわけではありません。まず最初に柔らかく湿った部位(※下腹部、脇の下や内股など)を探し回り、気に入った場所を見つけると口ばしを皮膚に差し込みます。そして、数時間かけて管を作り、その管を使って人間の体液を吸い出します。
ツツガムシに取り付かれて病原体が体内に入るまでには、約6~10時間ほどの時間がかかるといわれています。そのため、病原体に感染する前に洗い流してしまうことが有効なのです。ちなみにツツガムシは1~2日ほど体に吸着しているそうです。
万が一、刺されて感染してしまった場合は、症状が現れたらすぐに病院へ行くことがとても重要です。ツツガムシ病は治療が遅れると最悪に死に至ることもありますが、早期に治療を受ければ、ほぼ治ると言われています。
できれば、刺された時に気付くことに越したことはないのですが、幼虫はとても小さい上にほとんど痛みや痒みを伴わないので、気付かないことが多いといいます。ツツガムシがいそうな場所に立ち入り、潜伏期間である5~14日後にツツガムシ病の症状がでた時は、一刻も早く病院へ行って診てもらった方がいいと思います。
ツツガムシの被害のピークは「春先」と「秋から初冬」です。10~12月は、関東から九州地方を中心に多くの発生が報告されています。特に、富士山麓、伊豆七島、千葉、神奈川、群馬、宮崎、鹿児島などで、タテツツガムシによる被害が増えているというので注意が必要です。
参考WEBサイト
関連WEBサイト
紹介:sKenji