日本原子力研究開発機構(JAEA)が楢葉町に建設していたモックアップ試験施設で、10月19日開所式が行われた。地元の福島民報1面には、バーチャルリアリティによる作業訓練施設の写真が大きく取り上げられた。
開所式には安倍晋三首相、高木毅復興相、馳浩文部科学相、内堀雅雄知事、松本幸英楢葉町長らも出席。
出席した安倍晋三首相が「各国から楢葉に先端技術を求めて人が集まる。世界のイノベーションをけん引する町に生まれ変わる」と復興の起爆剤としての施設の意識を強調した。
さらに、東京電力福島第一原発の廃炉作業が世界にも前例がない挑戦であるとして、「数年後には、この施設から世界をリードする新技術が生み出される」と語った。
引用元:福島民報 2015年10月20日(2面)
原発事故が起きなければ、このような施設は必要なかったのだが、イノベーションだ、挑戦だとは恐れ入るばかりだ。しかし非常に線量が高い場所があるため、格納容器の底で行われる燃料デブリ(融け落ちた燃料と圧力容器の部品などが混ざったもの)取り出しは、リモート操作によるロボットに頼らざるをえない。これまで誰も経験したことのない困難な作業となるため、取り出し方法もロボットもゼロから開発することになる。またロボットのコントロールなどを行う作業員の訓練も欠かせない。その意味では総理の言うように、新技術が生み出されてもらわなければ話にならない。
夏に訪れた時には建物そのものが建設中で、今年度中の完成を目指すとされていたことを考えると、工事がそうとう急がれたことが分かる。前倒しでの完成は、廃炉に向けて不可欠な施設という期待や使命が反映されたものと見ることも出来るだろう。
完成他施設は4階建ての研究管理棟と1階建ての試験棟で構成され、試験棟は1階建てとはいえ60m×80m×40mと巨大なもの。
試験棟の中には、原子炉格納容器下部の破損した箇所の補修や止水の実証試験、建屋内部の調査や除染に必要な遠隔操作装置の実証試験を行うための原寸大模型、ロボットの動きを確認するための障壁や水槽なども設置される。
また原子炉内部から取り出した放射能に汚染されたデブリやガレキ等の処理を行うための施設が大熊町の事故原発に隣接した場所に建設されることになっているという。
こんな施設を作らなければならない事態がなければよかったのは言うまでもないが、起きてしまった原発事故を安全に廃炉していくため、しっかりと成果をあげてくれることを祈りたい。