3月6日(金曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点から、事故原発がおかれている現状を考えます。
C排水路につながる枝側溝から1900ベクレルの全ベータ
2月22日に発生したタンクエリアの雨水などを排水するC排水路から、港湾内に汚染水が流出した件の続報。東電は、ずっと原因不明としてきたが、3月3日に採取された側溝の溜まり水分析結果から、ストロンチウムなどのベータ核種の濃度が高い汚染水が貯蔵されているタンク群からの漏洩の可能性が濃厚になってきた。ただし、東京電力は側溝で比較的高い濃度が検出された原因は「今後調査を実施」としている。
3月3日に採取したH4北・H4東エリア南側を通っているC排水路へと繋がる側溝内(H4・H4北・H4東エリア全体の外周堰の内側)に溜まっていた水の分析を実施したところ、全ベータで比較的高い放射能濃度を3月5日に検出。
<C排水路枝側溝内溜まり水>(採取日:3月3日、採取地点:H4東エリア南東側)
・全ベータ : 1.9×10^3Bq/L
・セシウム134 : 検出限界値未満(検出限界値:2.1Bq/L)
・セシウム137 : 検出限界値未満(検出限界値:2.3Bq/L)
当該側溝内に溜まった水は、3月3日夜に降った雨の影響により、C排水路を通じて発電所港湾内に流れ出たものと考えられるが、構内側溝排水放射線モニタにおける「高高警報」が発生以降、構内側溝排水放射線モニタの指示値は通常の変動範囲内(約1.0×10^2Bq/L以下)であり、福島第一港湾内の海水分析結果においても、有意な変動は確認されていない。
また、H4・H4北・H4東エリア内のタンク水位に有意な変動はなく、タンクパトロールの結果でも漏えい等の異常は確認されていない。
当該側溝内で比較的高い放射能濃度の水が検出された原因については、今後調査を実施。
3月5日に採取した当該側溝内等の水の分析結果
<C排水路枝側溝内溜まり水>(採取日:3月5日、採取地点:H4東エリア南東側)
・全ベータ : 3.6×10^2Bq/L
・セシウム134 : 検出限界値未満(検出限界値:0.6Bq/L)
・セシウム137 : 検出限界値未満(検出限界値:2.5Bq/L)
<H4エリア内周堰内溜まり水>(採取日:3月5日)
・全ベータ : 2.5×10^2Bq/L
・セシウム134 : 検出限界値未満(検出限界値:5.2Bq/L)
・セシウム137 : 検出限界値未満(検出限界値:8.7Bq/L)
<H4北エリア内周堰内溜まり水>(採取日:3月5日)
・全ベータ : 2.9×10^2Bq/L
・セシウム134 : 検出限界値未満(検出限界値:4.8Bq/L)
・セシウム137 : 検出限界値未満(検出限界値:7.8Bq/L)
<H4東エリア内周堰内溜まり水>(採取日:3月5日)
・全ベータ : 1.6×10^3Bq/L
・セシウム134 : 検出限界値未満(検出限界値:5.4Bq/L)
・セシウム137 : 検出限界値未満(検出限界値:8.7Bq/L)
3月5日に採取した当該側溝内の水の全ベータ放射能濃度は、3.6×10^2Bq/Lであり、3月3日に採取した値(1.9×10^3Bq/L)から10分の1程度に低下。
また、H4東エリア内周堰内の溜まり水は、3月3日に採取した当該側溝内の水と同程度の全ベータ放射能濃度が検出されているが、昨日までのタンクパトロールにおいて、漏えい等の異常は確認されていない。
当該側溝内で比較的高い放射能濃度の水が検出された原因については、引き続き調査中。
なお、2月23日に実施したタンクパトロールにおいて、H4北エリア内周堰の外側近傍(当該側溝付近)のコンクリート床面(2箇所)で、以下の表面線量当量率が検出されたため、2月25日に床面のジェット洗浄を実施。
この際に使用した水は、パワープロベスター(バキューム車)にて全て回収していることから、当該側溝内で比較的高い放射能濃度の水が検出された原因ではないと判断。
<H4北エリア内周堰外側近傍で検出された表面線量当量率>(床面から50cmの距離)
(1)1.5mSv/h(70μm線量当量率(ガンマ+ベータ線))
(2)1.8mSv/h(70μm線量当量率(ガンマ+ベータ線))
3月3日、3月5日の2回のサンプリングを公表して説明しているが、3月3日採取の側溝の水の全ベータ値がリットル当たり1900ベクレルと高めだったことがポイント。また同じ分析結果でセシウムが検出限界値未満だったことから、この汚染水は素性からいってH4エリアなどに蓄えられている、ALPS処理待ちの高濃度汚染水に由来すると考えるのが妥当だろう。
3月5日採取分のデータで濃度が1ケタ下がっているのは、溜まり水に別の水の流入あるいは流出の「流れ」があり濃度が変化した可能性も考えられる。
近隣の気象庁の観測ポイント「浪江」の降雨量合計データは、3月1日36.5ミリ、3月2日0.5ミリ、3月3日3.0ミリ、3月4日10.5ミリ、3月5日0.0ミリとなっている。
C排水路付近のH4エリア東で内堰から外堰内への漏洩が見つかる。溜まり水は全ベータが1600ベクレル
報道配布資料として、「福島第一原子力発電所H4東エリア内堰内から外堰内への雨水漏えいについて」が発表される。3月3日に側溝内溜まり水から全ベータがリットル当たり1900ベクレル検出された近傍のH4東タンクエリアのタンク堰内で漏洩が発見される。漏れた水は近くの溜め升に溜まっていること、流れた形跡がないこと、C排水路につながる弁が閉じられていたことから、この汚染水が側溝経由でC排水路に流れたことはないと資料は主張している。
ということは、今回発見された漏洩の外にも、もっと数多くの漏洩が発生していて、ただ東京電力に把握されていないだけという事態も考えられよう。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目の記載。加えて、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成27年3月2日午前10時25分~)
※滞留水移送は稼働
◆3号機
1号機と同じ4項目の記載。加えて、
・3号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(プロセス主建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成27年3月3日午前9時58分~)
※滞留水移送は稼働
◆4号機
・原子炉内に燃料なし
・平成26年12月22日、使用済燃料プールに保管されていた全ての燃料の移動作業が終了。
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置運転中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置 水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
・増設多核種除去設備ホット試験中
・高性能多核種除去設備ホット試験中
・モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・第二モバイル型ストロンチウム除去装置運転中
・RO濃縮水処理設備運転中
(セシウム吸着装置については前日に続き「運転中」を新規事項として表記)
地下水バイパス ~通算52回目となる海洋排出を開始
※地下水バイパス一時貯留タンクグループ1の当社および第三者機関による分析結果[採取日2月24日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認。(既出)
3月6日午前10時12分、海洋への排水を開始。同日午前10時16分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
3月5日のパトロールにおいて、タンクからの漏えいの兆候を早期に発見する目的で70μm線量当量率の測定を行っているが、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されなかった。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
E-1の全ベータ値
2月27日採取 14,000Bq/L ※前日までの動きとは桁違いに上昇
2月28日採取 4,100Bq/L ※一昨日のトレンドに戻る
3月1日採取 4,300Bq/L
3月2日採取 44,000Bq/L ※前日から10倍規模の上昇
3月3日採取 16,000Bq/L
3月4日採取 21,000Bq/L
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
G-2のトリチウム値
2月25日採取 200Bq/L
2月26日採取 170Bq/L
2月27日採取 1,200Bq/L ※前日までとは桁違いに上昇
2月28日採取 610Bq/L ※前日から約半減
3月1日採取 220Bq/L ※急上昇以前の状態に近づく
3月2日採取 2,000Bq/L ※地下水バイパスの運票目標値をはるかに上回る
3月3日採取 1,600Bq/L
3月4日採取 1,700Bq/L
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。