魅力ある日本の地域 Vol.1 ~沖縄県・波照間島~

沖縄本島から南西へ約450km。人が住む島としては日本最南端の波照間島がある。島の周囲は約15km。こじんまりとした島である。サトウキビ畑で覆われている島内に道路はあるものの、信号機はない。波照間は時間がゆっくり流れている場所である。

島一番のお祭りと日本最南端の地

波照間島を訪れたのは2007年8月下旬のことだった。

石垣島の港から高速船に乗ること約1時間。美しいコバルトブルーの海にぽっかりと浮かんだ波照間島が見えてくる。

島の主な産業はサトウキビ栽培と製糖。人口は約540人ほどで、港と空港があるものの、現在航空便は飛んでいない。

波照間島には民宿形態の宿が数件ある。船で島に到着すると、港近くにあるそのうちの1軒を訪れてみた。予約は取っていなかったのだが、空きがあったので泊まることにする。

宿の主人と話をしていると、ちょうど訪れた日その日、島で一番のお祭り「ムシャーマ」が行われているというので行ってみることにした。ムシャーマは毎年、旧暦の7月14日に行われる。先祖を供養し、豊作と安全を祈願するお祭りで、太鼓や狂言、舞踊などの芸能が奉納されるとのことであった。

荷物を宿に置くと、祭りのメイン会場である役場や民家などが固まっている島の中心部を目指す。

のどかな道を歩くこと15分程度。会場では沖縄の伝統的な衣装に身を包んだ人たちが、かわるがわるに歌や踊りなどを披露していた。島一番のお祭りというだけあって大変な賑わいであった。後で同じ宿に泊まっていた旅行者に聞いた話では、なんでも祭りの日に歩いていたら、現地の人に声をかけられて一緒に昼間から「泡波」を飲んでいたそうだ。「泡波」とは波照間島で造られる泡盛で、入手が大変困難なことから「幻の泡盛」とも言われている名酒である。

しばらく祭りの雰囲気を楽しむと、「日本最南端の碑」へ行ってみることにした。

向かっている途中、なんと空地に一匹のヤギがヒモでつながれて寝そべっていた。離島独特のゆったりとした時間の流れにヤギも染まっているのか、実にのんびりとした感を漂わせていた。

最南端の碑は、島の南側の海岸際にあった。どこまでも広がる大海原をバックに立つ石碑を目にすると、日本最南端に来たという感慨深いものがある。

波照間島の人気スポット、「ニシ浜」

翌日、水着に着替えて島内一周の散策にでる。

波照間島を訪れる旅行者の多くは自転車を借りて見て回る人が多い。しかし、ゆっくりと島を見てみたかったので、自分の足で歩くことにした。

波照間の道は歩くと気持ちが軽やかになる道であった。サトウキビ畑を貫く道。ハイビスカスなどの色とりどりの花が道端に咲いている道。本州ではなかなかお目にかかれない光景がそこにはあった。

島の観光スポットとしては「日本最南端の碑」や「星空観測タワー」、「展望台」などいくつかある。少し変わったところでは「日本最南端の道路標識」があり、一部の旅行者にはちょっとした人気があった。ちなみに日本で最も南にある道路の標識は「止まれ」である。

日本最南端の道路標識

いつくつかある観光ポイントの中で、旅行者に一番人気があるのは「ニシ浜」であろう。波照間港の西側に位置しており、港から歩いて10分ほどで行けるビーチである。白い砂浜とハテルマブルーとも称される、鮮やかな海の青が訪れる者を惹きつける。

水着に着替えて島内一周へ出た理由はこのビーチで泳ぐためだった。岩陰に財布などを置くと、ハテルマブルーへ「ザブン」と飛び込んだ。水中メガネをかけて、目が覚めるような透明感ある海の中をのぞいてみると、波打ち際に数匹の魚が泳いでいた。

ニシ浜

波照間島と地域の魅力

波照間島の一番の魅力は、のどかな光景とそこに流れるゆったりとした時間。

そんな波照間に魅かれて旅行者はやってくる。そして、島を訪れた時は疲れていた旅人も、島を出るときにはその魅力に癒されて元気になって去ってゆく。

人間は他の動物とは異なり、考え、悩みストレスも抱える。その解消方法は様々あるのだろうけれど、地域が持っている魅力はそれらを解決する大きな力となる。旅行者にとっての波照間島は、そのような地域の魅力が特に詰まっている島なのではないだろうかと思う。

波照間島

参考WEBサイト

Text & Photo:sKenji