先日、森林の破壊について調べていると、植物油脂の一種であるパーム油を作るために熱帯雨林が伐採されていることを知った。帰宅して、自宅にあるお菓子や加工食品などの原材料を調べてみると「パーム油」や「植物油脂」と書かれたものがかなりあった。パーム油は世界でも最も生産されている植物油脂であり、お菓子やインスタントラーメンなどの食品のほかにも、 化粧品、石けん、工業用潤滑油、塗料など様々なものに使われている油脂である。
パーム油はアブラヤシから作られる
パーム油の原料はアブラヤシである。アブラヤシはヤシ科の植物でウズラの卵ほどの大きさの果実を一房あたり数百~数千つける。果実の果肉の部分から作られる油脂がパーム油で、種子から作られるものはパーム核油と呼ばれている。
パーム油は単位面積あたりの生産性が高いために安価な植物油脂であり、インドネシアとマレーシアの2カ国で世界の生産量のおよそ85%前後のパーム油が作られている。
アブラヤシは西アフリカ原産と中南米原産の2種類あり、パーム油に使われるのは、主に西アフリカ原産のギニアアブラヤシである。ちなみにアブラヤシは南国の海辺などに生えているココナッツの木とは別の種類である。
アブラヤシの栽培と熱帯雨林について
東南アジアにはもともとアブラヤシは自生しておらず、19世紀後半に持ち込まれたという。最初は観賞用だったそうだが、その後農作物として大規模なプランテーションで作られるようになった。1960年代あたりから急激に生産量が増え、現在、インドネシア、マレーシアの2カ国で4000万トン以上を生産している。
アブラヤシのプランテーションの問題は、広大な熱帯雨林を伐採して作られていることである。日本の面積の約1.25倍もあるインドネシアのスマトラ島には、島全体を覆うほど豊かな熱帯雨林があったが、そのうち約7割が伐採されている。またマレーシアでも、日本の面積の約2倍ほどの大きさのボルネオ島において、かつてあった熱帯雨林の約8割が伐採されている。今のペースで森の破壊が進むといずれ熱帯雨林が消失してしまうことが指摘されている。
熱帯雨林には全生物種のうち50~80%が生息しており、地球上の植物の半分があると言われている。熱帯雨林の喪失は多くの動植物の絶滅の危機を意味している。スマトラ島とボルネオ島では、両島にしか生息していないと言われるオランウータンがかつての1割にまで減っているほか、両島固有のゾウやトラなど、多くの動物が絶滅危惧種に指定されている。
熱帯雨林の伐採は光合成による二酸化炭素の吸収量が減るだけではなく、熱帯雨林にある二酸化炭素を含んだ泥炭層の破壊にもつながり、大量の温室効果ガスが放出されるといわれている。特にインドネシアにはこの泥炭層が多く、同国だけで年間約20億トンの温室効果ガスが放出されているそうである。
持続可能な地球環境を維持するために
紙パルプの原料を得るために熱帯雨林が伐採されていることは知っていたものの、パーム油の原料であるアブラヤシを栽培するために熱帯雨林が破壊されていることは全く知らなかった。
ただ、パーム油の生産のために熱帯雨林が破壊されているとはいえ、パーム油自体は環境に悪いというものではない。パーム油は酸化がしにくく、コレステロールも少ないと言われており、有用な植物油脂のひとつである。問題はパーム油を生産するために過度に森が伐採されてきたことにある。
熱帯雨林の伐採については、現在、国際機関や企業などでも様々な取組をしている。そのうちのひとつに「RSPO」という非営利組織がある。この組織は新たな森林や保護価値の高い地域にアブラヤシ農園の開発をしないなど、「持続可能なパーム油」の生産を目指しており、その基準を満たしているパーム油やパーム核油の製品に対してRSPOのロゴマークの使用を認めるなどの活動を行っている。
パーム油は近年、食用以外にもバイオ燃料としても注目されており、さらなる需要が見込まれている。持続可能な地球環境を維持するためにもパーム油と熱帯雨林の問題について知っておきたいと思う。
参考WEBサイト
Text:sKenji