栃木県の奥日光。限られたエリアに素晴らしい湖、湿原、滝、山などのスポットが凝縮されている本州屈指のおすすめエリアである。同エリアは個人的にお気に入りの場所のひとつで、昨年静岡県に引っ越してくるまでは学生時代からほぼ毎年のように訪れていた。年にはよっては2回、3回遊びに行った年もある。そんな奥日光が持っている魅力をご紹介したいと思う。
紅葉の中禅寺湖
日光市街を抜けて「いろは坂」をのぼりきると、奥日光の玄関口に広がるように中禅寺湖がある。
それまでは、緑美しい中禅寺湖が好きでもっぱら夏に行くことが多かったのだが、一昨年の秋、インフレータブルカヌーを持って初めて紅葉の季節に訪れてみた。黄色や赤色に彩られた中禅寺湖は夏とはまた違った魅力を持っていた。
中禅寺湖北岸の中央あたりに菖蒲ヶ浜キャンプ場がある。ロケーションが素晴らしいキャンプ場で、現在、中禅寺湖畔で唯一キャンプができる場所である。
キャンプ場の入口には小さい浜があり、そこから持って来たインフレータブルカヌーで湖へ出艇した。
キャンプ場から湖に出ると、とりあえず北側の湖岸に沿って西岸にある千手ヶ浜を目指すことにした。
紅葉は最盛期を少し過ぎた感があるものの、それでも見ごたえがあるものであった。
カヌーの良さのひとつは、歩いては行けない湖岸の紅葉を、通常は見ることができないアングルから見ることができることかもしれない。気になるポイントを見つけると岸に近づいて見てみる。
中禅寺湖は本州屈指の透明度を誇る湖であるが、その水質は場所によって大きく異なる。人が住んでいる湖の東側は特筆すべきほどではないものの、西側に行くにつれて大変美しくなる。
岸辺のほとんどは岩場であるものの、所々に美しい白砂のビーチもある。
途中の浜で休憩するなど、のんびりと1~2時間ほど漕ぐと千手ヶ浜にたどりついた。
到着後、千手ヶ浜に上陸してしばらく休憩すると、さらに岸にそって南岸へと移動した。南岸にも砂浜のビーチが数か所あり、そのうち1つに上陸してパスタをゆでて食べた。
中禅寺湖の南岸は、道路が全くないために野生味あふれる森が広がっている。私が訪れた時、美しく紅葉している木もあれば、葉を落としているものもあった。湖面に落ちた葉は岸の一画に集まり、さながら落ち葉のパッチワークのようであった。
湖の南側に中禅寺湖唯一の島、上野島がある。この島まで来ると、太陽がかなり傾いていたので、出発した菖蒲ヶ浜キャンプ場入口の浜に戻ることにした。
清々しい気分で浜に戻るとカヌーを片付けた。夕日で湖面が黄金色に輝いており美しい。
片付け終わって1日を振り返ってみた。この日カヌーをやっている人間は自分以外には誰も見かけなかった。平日だったこともあるかもしれないが、前年に発生した福島第一原発の事故の影響も少なからずあるのかもしれないと思った。
震災発生の年、お盆にウインドサーフィンをしに中禅寺湖に行ったものの、やはり例年より訪れている人が少なかった。
自然は昔と変わらず美しいのに、原発事故の見えない影響を受けているのかと思うと、やり場のない悲しさと恨めしさを感じた。
片付けたカヌーを持って駐車場に向かおうと湖畔の道路にでてみると、落日の光を受けた鮮やかな黄葉が目に飛び込んできた。
中禅寺湖。菖蒲ヶ浜キャンプ場入口の浜
参考WEBサイト
Text & Photo:sKenji