例えるならこういうことか。新しく買ってきたガスコンロのつまみが微妙に開いているのを確認せずにガス管につないで、元栓を開いてしまった……!
9月9日(火曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
操作卓が落下した3号機プール水の分析結果とプラントパラメータ ~9月8日分 セシウム濃度がほぼ半減。しかし日報の記載は「有意な変動ない」
なお、使用済燃料プール水の放射能分析結果が前回と比較して有意な変動がないことと、プラントパラメータに有意な変動がないことから、燃料破損等の兆候は確認されていない。
使用済燃料プール水の放射能分析の結果(採取日:9月8日)
・セシウム134:1.0×10^2 Bq/cm3
・セシウム137:3.1×10^2 Bq/cm3
・コバルト 60:8.1×10^-1 Bq/cm3
プラントパラメータ(9月8日午後4時現在)
・モニタリングポスト:有意な変化なし
・原子炉建屋オペフロ雰囲気線量:有意な変化なし
・使用済燃料プール水位:有意な変化なし
・スキマーサージタンク水位:有意な変化なし
リットル当たりの線量に換算
・セシウム134:100,000 Bq/L
・セシウム137:310,000 Bq/L
・コバルト 60:810 Bq/L
ちなみに前日のデータは以下のとおり
・セシウム134:200,000 Bq/L
・セシウム137:590,000 Bq/L
・コバルト 60:検出限界値未満(検出限界値:900 Bq/L)
ほぼ半減ともいえる変動があるのに「有意な変動がない」とは! セシウム濃度が極端に低下した原因は何なのか?
津波から約3年半後に着手した重油タンクからの残油抜き取り作業が一段落
※9月2日に開始した5・6号機No.3重油タンクの残油約135キロリットルの回収について、9月8日、その大部分をポンプによりタンクドレンラインから積載式移動コンテナタンクに移送を終了。タンクドレンラインから移送できなかったタンク底部の残油については、引き続き回収作業を実施する。
Dエリア内D5タンクの止め弁から水漏れ。止め弁の増し締めで滴下は停止するも原因は不明
※9月9日午前10時32分頃、Dエリア内D5タンクに設置されている止め弁の閉止フランジから1秒に3滴程度、水が滴下していることを当社社員が発見。
滴下した水については仮堰内に留まっている。また、滴下している箇所については、ビニール袋で受けている。その後、止め弁の増し締めを行い、同日午前11時5分に滴下が停止したことを確認。
なお、滴下した水は淡水化装置処理後の濃縮塩水。現在、滴下の原因や滴下した量などについて調査中。
Dエリアの場所がわからない。7月公開された管理表からは新規に設置されたタンクのように読み取れる。汚染水漏れが多発したタイプのフランジタンクなのか、新設された溶接タンクなのかは判らないが、設置したタンクに通水したところ止め弁から水漏れという状況かもしれない。
判明した状況は以下のとおり。
報道関係各位一斉メールの「続報」
本日(9月9日)お知らせしております、Dエリア内のD5タンクに設置されている止め弁の閉止フランジからの滴下についての続報です。
当該閉止フランジからD5タンク堰内に滴下した量を評価した結果、D4タンクとD5タンクの連絡弁を開けてD5タンクに通水を開始した時間から、滴下発見後に当該止め弁を増し締めするまでの時間より算出(滴下は3滴/秒として計算)して、約0.7Lと推定しました(実際は、水が当該止め弁の高さ位置まで到達する時間を考慮すると、滴下した量は推定量約0.7Lよりも少ないと判断しております)。
滴下箇所から採取した水の分析結果は以下の通りです。
【滴下箇所から採取した水の分析結果】
・セシウム134:1.7×10^3 Bq/L
・セシウム137:4.2×10^3 Bq/L
・全ベータ :4.5×10^7 Bq/L
【堰内溜まり水(滴下箇所近傍)の分析結果】
・セシウム134:検出限界値未満(検出限界値:3.1×10^1 Bq/L)
・セシウム137:1.1×10^2 Bq/L
・全ベータ :1.2×10^6 Bq/L
原因については、D5タンクへの通水前に当該止め弁の閉止状態を目視にて確認したものの、完全に閉まっていなかったことにより当該止め弁の閉止フランジ側に水が流入したためであることが分かりました。
なお、滴下した当該タンク堰内床面については洗浄を終えております。
※お知らせした滴下の発見時間および停止時間に誤りがありましたので、以下の通り訂正いたします。
発見時間 (誤)10時32分頃 → (正)10時30分頃
停止時間 (誤)11時5分頃 → (正)10時31分頃
以 上
引用元:福島第一原子力発電所Dエリア内D5タンク止水弁の閉止フランジからの水の滴下について(続報)|東京電力 平成26年9月9日
セシウム濃度が比較的低く、全ベータが4千500万ベクレルと極めて高いことから、漏出したのはRO濃縮塩水と見られる。
続いて報道配布資料ではより詳細な情報が公開された。
・滴下したのがはRO濃縮水であること。
・接続する予定のD-D6タンクが設置前のため仮閉止されていたこと。
事故発生の時系列は以下のとおり
時系列:9月9日
10:15 D5タンク移送開始
10:30頃D5タンク止め弁の閉止フランジから漏えい発見
10:31頃D5タンク止め弁増し締め実施、漏えい停止を確認
10:32 D5タンク隔離実施(D5-D4間弁”閉”)
10:36 閉止フランジ開放実施し残水ブロー
11:05 閉止フランジ残水処理終了
11:35 閉止フランジへパッキン取り付け終了
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年9月3日午前10時47分~)
※滞留水移送は運転中(凍結止水工事が続くトレンチとの接続部分の水位変動を抑えるため、遠方施設への移送か)
◆3号機
1号機と同じ4項目
※滞留水移送は停止中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス ~通算20回目の海洋排出は1,749トン
同日午後5時11分に排水を停止。排水停止状態に異常がないことを確認。なお、排水量は1,749m3。
注:同日とは9月8日
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
9月8日のパトロールにおいて、タンク間の連絡弁からの滴下の影響で堰内入域を制限したG4南タンクエリアを除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機サブドレン観測井 ~3号機原子炉建屋近くのサブドレンの分析結果
<最新のサンプリング実績>
今回新たに採取(9月5日採取)した3号機サブドレン(N11)の分析結果は、セシウム134が11 Bq/L、セシウム137が34 Bq/L、全ベータ放射能濃度は55 Bq/L、トリチウムは200 Bq/Lであった。
滞留水などに比べれば低い数値だが、一般的な地下水よりははるかに高いベクレルの汚染水だ。
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年9月9日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太