瓦礫落下事故があった3号機プール水、コバルト60の濃度が高いレベルで変動しているのはなぜだろうか?
9月8日(月曜日)に公開された「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」。前日からの変化や変更点を中心に読み解きます。
操作卓が落下した3号機プール水の分析結果とプラントパラメータ ~9月7日分
なお、使用済燃料プール水の放射能分析結果が前回と比較して有意な変動がないことと、プラントパラメータに有意な変動がないことから、燃料破損等の兆候は確認されていない。
使用済燃料プール水の放射能分析の結果(採取日:9月7日)
・セシウム134:2.0×10^2 Bq/cm3
・セシウム137:5.9×10^2 Bq/cm3
・コバルト 60:検出限界値未満(検出限界値:9.0×10^-1 Bq/cm3)
プラントパラメータ(9月7日午後4時現在)
・モニタリングポスト:有意な変化なし
・原子炉建屋オペフロ雰囲気線量:有意な変化なし
・使用済燃料プール水位:有意な変化なし
・スキマーサージタンク水位:有意な変化なし
リットル当たりの線量に換算
・セシウム134:200,000 Bq/L
・セシウム137:590,000 Bq/L
・コバルト 60:検出限界値未満(検出限界値:900 Bq/L)
コバルト60の数値が大きく変動するのはどうしてだろうか?
・8月30日発表分:1,100 Bq/L
・8月30日採取分:検出限界値未満(検出限界値は、1,000 Bq/L)
・8月31日採取分:検出限界値未満(検出限界値は、1,100 Bq/L)
・9月1日採取分:検出限界値未満(検出限界値は、1,500 Bq/L)
・9月2日採取分:740 Bq/L
・9月3日採取分:検出限界値未満(検出限界値:770 Bq/L)
・9月4日採取分:150,000 Bq/L
・9月5日採取分:検出限界値未満(検出限界値:1,100 Bq/L)
・9月6日採取分:1,300 Bq/L
・9月6日採取分:検出限界値未満(検出限界値:900 Bq/L)
※ちなみに、2014年2月19日にH6タンクエリアから漏えいしたRO濃縮水のコバルト60は、堰近傍北側で2,900 Bq/L、堰近傍南側で1,500 Bq/L(いずれも1リットル当たりの数値)と発表されている。(http://www.tepco.co.jp/cc/press/2014/1234386_5851.html)
H6タンクの水はセシウム除去処理後に約2倍濃縮処理された汚染水なので、元の濃度はだいたい750~1,500 Bq/Lのレベルと考えられる。原子炉内部を循環した滞留水と同じレベルにコバルト60で汚染された水が、3号機の使用済燃料プールにあるということだ。
1号機~6号機
新規事項なし
◆1号機
・復水貯蔵タンク(CST)を水源とする淡水を原子炉へ注水中
・原子炉および原子炉格納容器へ窒素封入中
・原子炉格納容器ガス管理システム運転中
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
※滞留水移送は停止中
◆2号機
1号機と同じ4項目に加え、
・2号機タービン建屋地下→集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ高濃度滞留水を移送中(平成26年9月3日午前10時47分~)
※滞留水移送は運転中(タービン建屋の水位変動が小さくなる遠方施設への移送)
◆3号機
1号機と同じ4項目
※滞留水移送は停止中
◆4号機
・原子炉内に燃料なし(使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プールから共用プールへ燃料移動
・使用済燃料プール循環冷却系運転中
◆5号機
・冷温停止中
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
◆6号機
・冷温停止中(燃料は全て使用済燃料プールに保管中)
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
共用プール・水処理設備および貯蔵設備
新規事項なし
◆共用プール
・使用済燃料プール冷却浄化系運転中
・共用プール低電導度廃液受タンク水について、同タンクから集中廃棄物処理施設(高温焼却炉建屋)へ適宜移送を実施。
◆水処理設備および貯蔵設備の状況
・セシウム吸着装置停止中
・第二セシウム吸着装置(サリー)運転中
・淡水化装置は水バランスをみて断続運転中
・多核種除去設備(ALPS)ホット試験中
地下水バイパス ~タンクグループ3から7回目(通算では20回目)の海洋排出を開始
※1~4号機原子炉建屋等への地下水流入抑制対策として設置した地下水バイパス設備について、地下水バイパス一時貯留タンクグループ3の当社および第三者機関による分析結果[採取日8月30日]については同等の値であり、ともに運用目標値を満足していることを確認したことから、9月8日午前10時5分、海洋への排水を開始。同日午前10時30分に漏えい等の異常がないことを確認。
H4,H6エリアタンク周辺観測孔(周辺排水路含む)の状況、タンクパトロール結果
◆最新のパトロール
9月7日のパトロールにおいて、タンク間の連絡弁からの滴下の影響で堰内入域を制限したG4南タンクエリアおよび堰床部に溜まっている雨水の影響により測定を一部実施できない箇所を除き、新たな高線量当量率箇所(β線による70μm線量当量率)は確認されていない。堰床部に雨水が溜まった箇所については、雨水による遮へい効果により引き続き線量当量率は低い状態となっている。また、目視点検によりタンク全数に漏えい等がないこと(漏えい確認ができない堰内溜まり水内を除く)、汚染水タンク水位計による常時監視(警報監視)においても異常がないことを確認。
◆H4エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
◆H6エリア
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
1~4号機タービン建屋東側
新規事項なし
1~4号機サブドレン観測井
新規事項なし
地下貯水槽
<最新のサンプリング実績>
前回採取した測定結果と比較して大きな変動は確認されていない。
以上、「福島第一原子力発電所の状況について(日報)」平成26年9月8日分の変更箇所を中心にピックアップしました。
構成●井上良太