二刀流レーダーで雲の内部構造をスキャン!
上の画像、梅雨前線の雨雲の中で雨がどのように降っているかを可視化したもの。赤に近いほどヘビーな降雨、青い所は降りが弱いことを示している。観測日時は2014年6月17日20時頃。夜間にもかかわらず、まるで雨雲をスライスしたような映像を捉えたのは、今年2月に種子島宇宙センターから打ち上げられた雨観測衛星「GPM主衛星」。搭載された新アイテム、二周波降水レーダによる観測画像だ。
地球上の降雨の状況を宇宙空間から観測する衛星はこれまでにもあった。しかし、それらはどれくらいの雨が降っているかを平面的に捉えるだけのものだった。
高さが数千メートルにも及ぶ雨雲の中では、水の姿は高度によって変化する。上空高いところでは氷や雪の粒として、高度が低い所では主に雨の形で水の粒が垂直方向に移動している。数千メートルの高度で雨や雪として降っても途中で再び蒸発したり、あるいは上昇気流で舞い上げられたりするので、宇宙から雨雲を平面的に見ただけでは、地表でどれだけの雨が降っているのかは、なかなか分かりにくかった。
ブレイクスルーの鍵となったのは、周波数の違う2つのレーダーを組み合わせたDPR。雲の中の水の粒子を、氷から雨粒までまんべんなく捉えるレーダーと、氷は捉えないが雨の強さを反映するレーダーが同時観測したデータを解析することで、雨雲の内部構造の可視化を実現したのだ。
地球の水が暴れている。人類に、打つ手はあるか?
この優れもの新衛星、そのミッションは何なのだろう。
GPM計画とは
地球の水が、暴れている。
人類に、打つ手はあるか?
台風や、竜巻、集中豪雨、洪水・・・
今、日本だけでなく、世界中で水による被害が深刻化しています。
温暖化で大気中の水蒸気が増え続け、
深刻化する豪雨や暴風の原因になっていると考えられます。
世界中に降る雨を、宇宙から徹底的に調べることは、
台風などの水被害を減らすために欠かせない第一歩です。
NASAとJAXAが中心になり、世界中のパートナーが力を合わせて
世界中に降る雨を、宇宙から見極めます。
あなたの身体は、
世界の水でできている。
たとえばこの前あなたがランチで食べた美味しいハンバーガー。
お肉はオーストラリアで、バンズはアメリカで、
ケチャップはオランダで、チーズはイギリスでつくられています。
あなたの口に入るまで、それぞれの国で、たくさんの水が使われています。
つまり、あなたが日本で暮らしていても
あなたの身体には、世界各国の水が流れている。
世界中に降る雨を、宇宙から徹底的に調べることは、
台風などの水被害を減らすだけでなく、
あなたの身体をつくる水を、もっと知ることでもあるのです。
NASAとJAXAが中心になり、世界中のパートナーが力を合わせて
世界中に降る雨を、宇宙から見極めます。
地球規模で多発する台風や集中豪雨による洪水。災害による被害をできるだけ軽減すること、そして人類共通の資産・水資源を宇宙から見つめること。GPM衛星はそのミッションを掲げて高度407キロの宇宙空間を飛び続ける。
動画も続々公開! JAXAの本気が伝わってくる
[JAXA]【9分でわかる!】雨雲を、味方にせよ。~GPM計画とその利用~
2014/03/24 に公開
平成26年2月28日に打ち上げられたGPM主衛星搭載の二周波降水レーダによる初観測画像です。平成26年3月10日22時39分頃(日本時間)に、日本の東海上(北緯40度、東経167度付近)にある発達した温帯低気圧による降水の強さの分布を観測したものです。
http://www.satnavi.jaxa.jp/gpmdpr_spe...
Copyright:JAXA, BGM協力:HURT RECORD
GPM主衛星/H-IIAロケット23号機打ち上げ/GPM/H-IIA F23 Quick Review
2014/03/03 に公開
2014年2月28日、種子島宇宙センターから全球降水観測計画主衛星(GPM主衛星)を搭載したH-IIAロケット23号機を打ち上げました。
クイックレビュー版:9分25秒
The H-IIA Launch Vehicle No.23 with GPM Core Observatory onboard was launched on February 28 (JST) from the Tanegashima Space Center.
Ver.Quick Review:9:25
(C)JAXA/NASA
アニメも登場! [JAXA]DPRスペシャルムービー[EN sub(Closed Captioning)] Anime for JAXA & NASA Space Mission
2013/10/17 に公開
2014年2月28日に打ち上げられたGPM主衛星/二周波降水レーダ「DPR」のPVです。日常生活、そして、人生の大切な一場面。はるか上空407kmの宇宙から正確な雨の情報を届けます。
http://www.satnavi.jaxa.jp/gpmdpr_spe... にて動画の解説等を公開しています。Copyright:JAXA
少し地味だけど重要なこと。主衛星の校正機能
GPM(全球降水観測計画)は米国のNASA、日本のJAXA、欧州の国際機関、インドの宇宙研究機関による共同ミッション。本格運用スタート間近の主衛星が、すでに打ち上げられている各国の気象衛星などと協同で観測を行う。
GPM全球降水マップによる梅雨前線の動き / Activities of Bai-u front shown by the GPM Global Rainfall Map
2014/06/29 に公開
GPM全球降水マップ(GPM-GSMaP)による、2014年6月1日~13日の期間の日本付近の梅雨前線の様子のアニメーションです。主衛星搭載のGMIのほかに、コンステ レーション衛星群として参加している、日本の「しずく」(GCOM-W)衛星や、米国のDMSP衛星、欧州のMetOp衛星などに搭載された、マイクロ波イメージャやサウンダと、静止気象衛星の雲の情報を複合して、1時間毎の全球の降水マップを得ることができます。
(C)JAXA
その上で重要な役割を果たすことになるのが、GPM主衛星に搭載されたもうひとつのメインアイテムであるGMI。従来の観測衛星にも搭載されてきたマイクロ波放射計をグレードアップしたもので、既存の衛星群の測定精度を校正し、GPMの観測システム全体としての精度を高めることになる。
最新アイテムを開発・投入するばかりでなく、従来の衛星まで含めてグレードアップしようという考え方は「いいね!」ボタンを10回くらい押したいほど。
DPRの三次元測定と同時運用することで、従来機による観測データからの推定の精度もアップすることが期待できそうだ。