いよいよ年末年始、今年も残すところあとわずかです。この時期になると、地元でゆっくり羽を伸ばそうと考える人もいれば、どこか遠出をして越年なんて人もいますね。
全国の島々でも、年末年始は帰省や観光客で活気が増します。中には島特有の行事が催される島もあり、ひと味違った越年が楽しめたりするのです。今回はそんな“島ならでは”のイベントや行事を紹介します。
番外編:佐渡島「田遊び神事」
新潟県佐渡市・佐渡島には、古くから数多くの伝統芸能・行事が受け継がれています。その昔、都の著名人が配流された歴史もあり、必然的に各地から都の文化が多く伝えられました。それらの文化は広い佐渡島の島内で地域に根差して発展し、現在に至っています。中でも年末年始は特に忙しくなります。
その全てが模擬的に行われる
旧畑野町大久保にある白山神社では、毎年1月3日に田遊び神事が行われます。これはその年の豊作を祈って田起こし~種まき~田植え~刈取りまでを演じるもの。旧畑野町は合併前の2000年時点で、総人口中の農家人口が55.3%と農業がさかんでした。とりわけ稲作農家が多かったためか、田遊び神事は今もなお、地域にとって重要な行事となっています。 裃姿の8人の氏子によって行われます。8人はそれぞれ大家1名、隠居1名、田人6名(とうろ)の構成。大家と隠居は家柄によって決まっており、田人はその年に厄年を迎える人なら元旦の参拝時に申し込みが可能。2日の準備を経て3日に臨みます。
その全てが模擬的に行われるので、実際に田んぼいじりをするわけではありません。まず、クワの刃に象った四角い餅を焚火で焼いて清めます。これは農作業の前にクワの先を鍛える意味があるとか。 続いて拝殿へと移動し、水田に見立てた板の間で田起こし、種まき、田植えと演じられます。裃姿で田植えという光景も一風変わっていて面白いですね。苗に見立てたユズリハを拝殿の床に放射線状に並べていくと、田植えが完了(厳密にはかなり細かい手順があります)。最後に謡曲を歌います。謡曲は、この田遊び神事でしか歌われない神聖なものだそう。
伝統芸能や行事と言っても色々ありますが、島の中でも特定の地域に限って行われている点が興味深いところ。田遊び神事と名のつくお祭りは他にもあり、同じ佐渡島の小比叡神社では毎年2月6日に行われます。こちらはカラス、モグラの2役に分かれ、小競り合いを演じるものだとか。こちらも負けず劣らずユーモアに富んでいます。「その様子を演じる」という点が面白いですね。紹介した白山神社のものは新潟県の、小比叡神社のは佐渡市の無形民俗文化財に指定されています。 この田遊び神事に関して、その始まりはよくわかっていません。800~1000年近い歴史があるのではないかとされています。いわゆる予祝儀式(よしゅくぎしき)と呼ばれるもので、文字通り「予め祝ってしまう儀式」というもの。1月は稲作から遠い時期ではあります。が、旧畑野町の住民にとっては生活そのものですから、新年を機に予め祝うというのも面白いですね。