昔々あるところに、おじいさんとおばあさんが住んでいました。 おじいさんは山へ芝刈りに、おばあさんは川へ洗濯に行きました。
おばあさんが川で洗濯していると、ドンブラコと大きな桃が流れてきました。
おばあさんは桃を拾い上げて家に持ち帰りました。
おじいさんとおばあさんが桃を食べようと桃を切ってみると、 中から元気のいい男の赤ちゃんが飛び出してきました。
桃から生まれた桃太郎はスクスク育ってやがて強い男になりました。
そしてある日、桃太郎がいいました。
桃太郎「ぼく、鬼ヶ島に行って悪い鬼を退治します」
桃太郎はおばあさんにキビ団子を作ってもらうと、鬼ヶ島に出かけました。 そして、旅の途中でイヌに出会いました。
イヌ「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
桃太郎「鬼ヶ島へ、鬼退治に行くのです」イヌ「えっ・・・?」
イヌは背筋が凍りつきました・・・
このままでは殺人事件に巻き込まれてしまうと思ったからです。 犬はなんとかこの場を切り抜けようと考えたすえ、桃太郎に媚びていきました。
イヌ「お腰につけたキビ団子・・・、1つ私にくださいな。くれたらお供しますよ」
桃太郎「いいですよ、さしあげましょう!」イヌ「えっ・・・?いいんですか・・・貴重な食料じゃないですか」
桃太郎「1つくらいなら構いませんよ、あげましょう!」イヌ「でも・・・鬼ヶ島への道のりは長いですよ、ここから何日もかかっちゃいますよ!」
桃太郎「そのときはそのときで・・・また考えますよ」
イヌは桃太郎の腰にキラリと光る日本刀を発見します。 お供になれば旅の道中で確実に食糧にされる・・・そう感じました。
しかし、ここで逃げれば今すぐ切られてしまう・・・とも考えました。
イヌは迷ったすえにお供になる道を選びました。 桃太郎はしばらく歩くと今度はサルに出会いました。
サル「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
桃太郎「鬼ヶ島へ、鬼を退治しに行くのです」サル「お、鬼退治に・・・!?」
サルは桃太郎に連れられているイヌの青い顔をみて、戦慄が走りました。
あのイヌは無理やり勧誘されて仲間になっている・・・
あの日本刀で脅されて運命共同体にされている・・・
鬼ヶ島についた途端、鬼に殺される。 それをわかっていて桃太郎は道ずれを探しているのだ。
桃太郎「キビ団子を1つあげましょう。私についてきなされ」
サル「そ、そんな・・・、私にそんな資格はありませんよ!」桃太郎「ほら、遠慮しないで!」
サルはイヌの顔をチラリとチェックしました。イヌは決して目を合わせようとしません。
この誘いを断れば命はない…サルはそう悟りました。
桃太郎はサルをお供につけました。 そして、しばらく歩くと今度はキジに出会いました。
キジ「桃太郎さん、どこへ行くのですか?」
桃太郎「鬼ヶ島へ鬼を退治にいくのです」キジ「そうですか、お気をつけて~~」
キジは何ごともなかったように飛び去って行きました。
その光景を見て、イヌとサルはキジを恨みました。
桃太郎を自分達の元へ誘導した犯人はあのキジかもしれない。 そう勘ぐったのです・・・
こうして桃太郎はイヌとサルを連れて鬼ヶ島へ行きました。
鬼ヶ島では鬼たちがごちそうを並べて酒盛りの真っ最中です。
桃太郎「みんな、ぬかるなよ。それ、かかれ!」
イヌは鬼のおしりにかみつき、サルは鬼の背中をひっかき、 桃太郎は刀を振り回して大暴れです。
鬼の親分「まいったぁ、まいったぁ、降参だ、助けてくれぇ」
と手をついて謝りました。
桃太郎たちは鬼から取り上げた宝物を荷車に積んで、元気よく家に帰りました。
しかし、家に着くとおじいさんとおばあさんが警察に捕まっていました。 桃太郎たちもその場で警察に取り押さえられました。
桃太郎にかせられた罪状は、銃刀法違反及び殺人容疑です。
警察に通報したのはキジでした。 おしまい