愛すべきクラスメイト「エムレ君」

20代前半の時、ワーキングホリデーでロンドンに滞在した時の話です。

アルバイトをしながらパブと英語学校に通っていたのですが、英語学校には実に様々な国の人がいました。

・中国人
・韓国人
・タイ人
・ミャンマー人
・インド人
・モーリシャス人(インド洋に浮かぶ島国です)
・ドイツ人
・ポーランド人
・フランス人
・スペイン人
・イタリア人
・スロベニア人
・チェコ人
・トルコ人




今思い返してみても実に多くの国の人達と授業を受けたものだと思います。

よく言われることですが、彼らの中に入ると実に日本人の「奥ゆかしさ」が見えてきます。

日本人はとにかく「正解であることを確信しているときのみ答える」「あまりでしゃばるのも悪いので回答は控えめに」「この英単語の発音が下手だから恥ずかしい」などの理由(だと思う)で、皆おおむね控えめです(例外もいるけど)。

それに引き換え海外の愛すべき友人たちときたら。

自分の英語が正しいかどうかは二の次です。発言したかったらむっちゃくちゃな文法、発音でも先生が言いたいことを理解してくれるまでは身振り手振りでひたすら話し続けます。
(下手くそな英語のヒアリング能力もやはり先生が圧倒的に高いので、ターゲットは先生になります)

その発言に対して先生が丁寧に直していくわけで、そうなるとやはりより多く発言してバックをもらった方が伸びも早いのです。(そして金銭的にもお得)

個人差はあると思いますが、私が一緒に勉強したクラスメイトに限って言えば、フランス人やスペイン人、中国人の友人たちは特に強烈で、ひたすらしゃべり続けていた印象です。

よくこんなにしゃべり続けられるなあと感心したものです。


そんな多国籍のクラスでしたが、ヨーロッパがホリデーの時期になると短期で入学してくる学生さんもちらほらいました。

見ていると多くは高校生などの学生さん。家族で長期滞在し、そのついでに通ってみた、というようなケースが多かったと記憶しています。

そしてある日、クラスにやってきたのがトルコから来た「エムレ君」。

エムレ君の衝撃

彼は恐らく中学生くらい。その時入ってきたクラスは「Upper Intermediate(中上級)」だったでそこそこは話せる、というレベルでした。

初日からすごかった。

「今日からエムレがクラスメイトに加わりました。自己紹介をしてくれる?」と先生が振った後、授業時間の70%ほどの時間をひたすらしゃべり続けました。どこからきて学校でどんなことをしていて、家族構成はどうで毎日どんな過ごし方をして・・・・。ただそれはほんのあいさつ代わり。

次の授業からはさらにエンジン全開。エムレばかり指すわけにはいかないと先生がかわしても指されるまで決してあきらめません。そして自分の考えをしゃべり続けます。

クラスの中でもエムレが最年少でしたからあまり強く言うわけにも言わず(そのあたりは国籍問わずみな意識するようです)、ただだだ見守りました。滞在期間が短いことも知っていましたから。

その時のクラスメイトは仲が良くて夜パブで飲んだりもしていましたが、もっぱらエムレの昼間の活躍の話題で持ちきりでした。あれ、どうにかならないかねえと。

彼が最後の授業を終えたとき、先生や他のクラスメイトの間に流れる空気はかつて感じたことがないほど一体感があり、そして穏やかでした。
(今だから言えますがパブでパーティーしました。ごめんね。)

エムレ君から学ぶこと

とまあ、嵐のようにやってきては去っていったエムレ君台風ですが(失礼)、あの「自分の言いたいことをはっきり言い切る」という姿勢は驚愕を通り越して称賛に値します。

あそこまで強烈な存在感を見せつける必要はありませんが、あれを続けていれば確実に伸びていくはずです。

日本の中学校や高校で英語を学んでいる学生さんたちもぜひエムレ君を見習ってほしいです。彼を見ると「間違ってしまったらどうしよう」「ちゃんと通じるかしら」などと考えること自体が実にばかばかしく思います。
(実際ばかばかしいのです)

またいつかどこかでエムレ君と会えるといいなと思います。多分、ひたすら話を聞くことになると思うけど。

J.K.ローリングさんが「ハリーポッター」執筆の際に通っていたと言われるカフェの写真。エムレ君の写真がないのでその代りにご紹介。場所もロンドンではありません。(スミマセン)