【書籍】 長崎の鐘_永井 隆

この書籍は原子爆弾で被ばくした放射線科医の永井博士の長崎医科大学での被爆の記録です。長崎医科大学は爆心地からわずか0.5~0.7kmの距離にあり、原子爆弾の炸裂により壊滅しました。

永井博士は原子爆弾で最愛の妻を失いました。自身も被ばくして重症を負いながらも、医療器具や衛生材料が消失している中、医師として生存者の救護活動を懸命に行われました。また放射線の専門家として原子爆弾の威力、原子病、原子病療法等を的確に分析し、後日大学の学長宛てに詳細な報告書を提出しています。医師であるとともに研究者である著者の使命感にはとても感服しました。

本書タイトルの長崎の鐘は、原爆によって破壊された浦上天主堂のがれきの中から掘り出された鐘です。この鐘は新しく建て直された天主堂で原爆投下以前と変わらぬ音を響かせています。その響きには、この浦上が世界最後の被爆地であるようにとの祈りが込められています。

永井博士は、人類は原子力を手に入れ、これを善用すれば文明の飛躍的進歩となり、悪用すれば地球を破滅させる諸刃の剣であると最後に書かれています。どちらをとるかは人類の自由意志に任せられています。原子力を扱う人類は自らの存滅の運命の鍵を握っています。

この書籍を読んで、あらためて原子爆弾の恐ろしさ、悲惨さを感じました。核兵器の恐ろしさを再認識するためまた長崎に訪れ、長崎の鐘の響きを聴きながら、世界の平和を祈りたいと思います。