映画「種子」上映会と種子法廃止の講演会に行ってきました!

先日、浜松市でドキュメンタリー映画「種子-みんなのもの?それとも企業の所有物?」を見てきました。

昨年、知人のフェイスブック投稿で「種子法」撤廃を知りました。

「そもそも種子法って何?」
「種子法が無くなると何が問題なの?」
「多国籍企業が入ってきたら日本の農業はどう変わるの?」
「食の安全は?」

調べてみても情報が出てこず、ずっと気になっていていました。そしてこの度、浜松でも映画「種子」の上映があると知り家族で行ってきました!

映画「種子」

この映画はラテンアメリカの8つの国で種子が多国籍企業に独占されようとする状況と、それに対して自分たちの種子を守ろうとする農民の姿を描いたものです。

ごく少数の多国籍企業が種子を独占するため、代々守り続けられてきた種子を農民が保存したり、共有したりすると犯罪者にされるという法案(モンサント法案)がラテンアメリカで制定されてきました。

ラテンアメリカでは多国籍企業から種子を守るため、大規模な反対運動が起こっていますが、日本ではこうした運動がメディアで取り上げられることはほとんどありません。いま日本にもラテンアメリカで起こったことが迫ってきています。

映画上映のあと、いま日本の種子に迫る危機について、日本の種子を守る会事務局アドバイザーの印鑰智哉(いんやくともや)さんの講演会が開催されました。

『種子 みんなのもの? それとも企業の所有物?』予告編

種子法とは

種子法(主要農産物種子法)とは国内で戦後まもなくできた法律で、米・麦・大豆といった主要な農産物の種を、政府と都道府県が農家に責任をもって提供する義務を定めたもので、戦後の日本の食料生産を支えてきた重要な法律です。

各都道府県はその地域にあった種を長い年月をかけて作っており、現在米に関しては300品種が開発されています。農家が個々に保存している種子を合わせると1000種類を超えるそうです。米の種もみは100%国内生産ですが、野菜の種は90%が輸入です。

種子法があることによって、国内の多様な品種の主要農産物の種子が保たれています。

種子法廃止の問題点

戦後の食料生産を支えてきた種子法は、今年の3月31日で廃止されてしまいました。このような重要な法律は、全国で説明会を開いて、国会でも十分に議論して長い年月をかけて廃止を決定するものですが、今回は全くそれがありませんでした。

種子法廃止を取り上げたのは、農業新聞一社だけだったそうです。ほとんどの国民が知らないまま秘密裏に廃止が決まってしまいました。

では種子法が廃止されたことの何が問題なのでしょうか。

種子法があったことで主要農産物について国が予算を使って都道府県単位で種子の開発・普及を行うこととなっています。種子法が廃止されたことで、国の予算を使用する法的根拠が無くなれば都道府県による事業継続が困難となり、また農家は優良な品質の種を安価に入手することができなくなる可能性があります。

種子法廃止と同時に農業競争力支援強化法が制定されました。この法律は公共品種の種と試験研究機関及び都道府県が有する種苗の生産に関する知見を民間業者に開放しなさいというものです。今後、税金で気づいた富がどんどん多国籍企業へ移ってしまうという問題があります。

TPPは農家の種の権利の制約を義務付けられたUPOV条約(ユポフ条約)の批准を義務化しています。農家は多国籍企業とライセンス契約を結び、種を毎年買って決められた方法で農業を行わなくてはならなくなります。農家通しで種を売買したり、保存すると契約違反となり犯罪者となってしまいます。出来上がった農作物も企業の所有物となり、食のすべてが独占されてしまいます。

食の根幹である種が少数の多国籍企業に独占されてしまうことで、種子の多様性が失われてしまうことが懸念されています。種子の多様性が失われることで、1つの危機が深刻な食料不足を招き、生命の危機に繋がる恐れもあります。

種や農作物を独占された状態で、本当に安定した価格で私たち消費者に食料が提供されるのでしょうか。利益を優先する民間企業に我々の生命を預けて大丈夫なのか、疑問を持たざるをえません。

今後、ラテンアメリカで起こったことと同じことが起こり、巨大資本をもった海外のグローバル企業が、我が国の農業を破壊してしまうかもしれません。

今回の種子法廃止に伴い、遺伝子組み換え作物の問題、農薬や化学肥料の問題など、様々な懸念が指摘されています。こちらは次回取り上げたいと思います。

私たちにできること

国による種子法廃止決定は農家や私たち消費者の目線からでなく、民間企業のために行われました。条約の批准・法律撤廃・法改正により、私たちの共有財産である種は多国籍企業に独占される危険が迫っていますが、私たちには何もできないのでしょうか。

印鑰氏によると、種を守るためには都道府県に公的な種子事業を継続すると宣言をさせていく必要があるとのことです。新潟県、兵庫県、埼玉県は条例を作り以前と同じように種を作ることを決めたそうです。ここ、静岡県でも条例を作ってもらいたいとおっしゃっていました。

県レベルでの動きが難しければ、市町村レベルで請願・陳述することによって都道府県への意見書を作ることができるようです。市町村でそういった声明を上げると、都道府県はそれを無視できなくなるとのことです。

今、国会で種子法に代わる新たな法律を作るよう署名を集めており、署名は20万を超えたそうです。また野党6党共同で種子法復活法案を衆院に提出したようです。審議が始まれば今の情勢では難しいかもしれませんが、種子法復活の見込みも出てきたとのことです。

種子法廃止に関する情報はメディアでは問題として扱われることは少ないようですが、公共財産である種子に迫っている危険性を多くの方に知っていただきたいと思います。そして自分にできることを考え、1人1人が行動を起こすことが大切だと思います。