この書籍はハーバード白熱教室『これからの「正義」の話をしよう』でお馴染みのマイケル・サンデル教授の講義録本です。
サンデル教授が世界の人たちと、その国固有の問題について議論し合います。サンデル教授は、その国の問題の身近な例に対しての問いを投げかけ、徐々に聴衆の大半が躊躇しそうな事例へと導いていきます。
〇中国
市場主義はどこまで認められるべきか?
〇インド
性的暴行は他の暴力行為より罪深いか?
〇ブラジル
サッカー・チケットの高値転売はOK?
政府への大規模デモはどれだけ効果があるか?
〇韓国
芸能人やスポーツ選手は徴兵を免除されてもよいのか?
〇東北大学
放射性廃棄物の仮置き場はどうやって決めるべきか?
復興に必要なのはスピードか、コンセンサスか?
市場主義の結果生じる様々な問題点
経済発展が始まったばかりの国では、経済成長や生活水準の向上が多くの人の満足度の向上につながります。しかし経済がある程度発展した段階で、経済成長が必ずしも人々の満足度の向上の目安にならないときがいずれやってきます。
現代はどんなものでもお金で買える世の中になりつつあります。長蛇の列に並ばなくても高値を出せばチケットコンサートが買えたり、臓器もお金で取引されるような時代です。市場主義の世界では、たとえば災害時の飲料水の値上げが許されたり、病院の診察予約券の売買が許されることになります。必ずしも正当とは言えない問題が出てきてしまいます。
「道徳」と「市場」はどこまで折り合えるか、あらゆるものはカネで買えるのか、議論の中で意見が分かれます。結論は出ませんが、議論すること自体が民主主義にとって重要だと感じました。
またインドでの性的暴行は他の暴力行為より罪深いか?という問いに対して、聴衆の1人の女性が罪深いと認めることが、その実女性を弱い立場にあることを認め、女性軽視、女性差別を助長するのだ、と主張していました。女性の立場を守るためと単純には答えの出せない難しい問題であるように感じました。