陸に生息する危険生物 Vol.7 ~エキノコックス~

出典:Shiretoko-Shari Tourist Association

commons.wikimedia.org

気温が下がり、過ごしやすくなる秋はトレッキングなどアウトドアでの活動に適した季節です。そこで、森や山など、陸上にいる危険な生物について、数回に分けてご紹介していきます。7回目の今日は「エキノコックス」です。

エキノコックスについて

冒頭の可愛らしいキタキツネの写真。もし、見かけたらついエサでもあげて触ってみたくなるかもしれませんが、注意が必要です。

北海道に住んでいらっしゃる方にとってはほぼ常識に等しいことですが、野生のキタキツネはエキノコックスを保有している可能性が高い動物です。

エキノコックスは条虫(※サナダムシ)の一種で日本には単包条虫と多包条虫の2種がおり、主にキツネや犬などに寄生しています。

キツネにとって害のないエキノコックスも人間にとっては、寄生されるとエキノコックス症を発症し、発見が遅れると主に肝障害を引き起こして、命を落とすこともあります。

エキノコックスは以前、北海道にしかいないと言われていましたが、現在は本州や九州、沖縄などでも発症が報告されています。

エキノコックスは成虫と幼虫がいます。自然界では、キツネなどに成虫が寄生しており、卵を産みます。卵は宿主のふんと一緒に排出され、木の実などに付着します。それをネズミが食べると卵はかえって幼虫となります。ネズミは中間宿主で、成虫には成長できませんが、その寄生されたネズミをキツネが食べると、幼虫はキツネの体内で成虫になります。エキノコックスはこのようにして子孫を繋いでいきます。

このサイクルのうち、キツネのふんとともに排出された卵を人が口にすると、人間の体内で幼虫がかえって肝臓などに寄生し、数年から十数年後(※子供は大人に比べると経過が早いといいます)にエキノコックス症の症状があらわれます。

ちなみに中間宿主では成虫にはなることはなく、卵を生まないために人から人への感染はありません

主な感染地である北海道では、毎年20人ほどの感染者がでているといいます。

エキノコックスの症状と予防について

エキノコックス症ははじめ、上腹部の不快感や膨れ、痛みのほか、衰弱、体重減少といった症状が現れるといいます。その後、進行すると肝臓機能不全となり、発熱や黄疸などの症状が見られて、放置すると死に至ります。

治療は外科的手術を行い、寄生している部位を切除します(※近年、単包条虫に対しては、薬物治療なども行われることもあるそうです)が、進行している場合には完全な切除が困難なこともあるといいます。そのため、感染しないようにするための予防が重要です。感染を防ぐには、

・感染源であるキツネや犬などの動物に触れないようにする。
・虫卵に汚染されている可能性のある沢といった野外の水や山菜などの野生植物を口にしない。
・動物を触った際には十分に手を洗う。

などがあります。

しかし、常に犬に触れない。沢の水を飲まない。などの予防策を実施することに対して難しさも感じます。そこで、個人的には感染報告が多い北海道や青森に行った時、特に上記の予防を気をつけるようにしています。

ただ、沢などの野外の水については登山をする時など、飲まざるを得ないケースもあります。そのような時は、エキノコックスの卵は熱に対して弱く、100度で1分、70度で5分ていど熱すると死滅するといいますので、煮沸してから飲用します。沸騰させている時間は、標高が高くなると沸点が下がることから、5分ほど行った方がいいと思います。

北海道にいる野生のキタキツネの40%はエキノコックスに感染しているという話もありますので、北海道を訪れた際には特に気をつけた方がいいと思います。

参考WEBサイト

関連WEBサイト

紹介:sKenji